日本人の英語学習者がたどる道

勉強

皆さんが英語を学んでいくと、将来様々な悩みに遭遇するでしょう。そして何について悩むのか事前に分かっていると、心の準備が出来ます。ここでは、それらの悩みと対策を、一般に上級者と言われるところまで、3つに分けて説明します。ここではその3つを、初心者の森、中級者の丘、上級者の谷と呼びます。

初心者の森

殆どの日本人がこの森を抜け出せません。富士の樹海のようです。

英語を学ぶ意志はあるものの何をしてよいか分からず、お金と時間だけ消費して英語力は伸びず、ひたすら森の中をさまよう事になります。

見ていると、このエリアで行き詰まる人は4つのパターンがあるようです。

1. 教材型

このタイプは、様々な英語の本を次から次へと購入するので本棚には沢山の英語の本があります。良い本を教えてあげても「持っています」と言われることが多いです。

にもかかわらず、最後までやり終えた本が殆どないのもこのタイプの特徴です。

2. 英会話学校型

英会話学校に3年以上通っているのに、全然英語力が伸びていない方々です。この方々は学習期間が長いにもかかわらず、基本的な英語の知識が欠けており、英検2級やTOEIC600に達しません。

そもそも日々の英語学習時間が極端に短く、週に1回英会話学校に行く以外は特に英語の勉強をしていない方も多いです。

3. 留学型

日本で英語の勉強をするより海外に留学した方が早い!と行って留学するものの、留学先で英語力が全然伸びない方々です。ワーキングホリデーに行かれる方の大半がこのパターンです。

1年で英語ペラペラになって凱旋することを夢見るも、殆どの方が中学レベルの英語すら話せず帰国する羽目に陥ります。そして何か良い方法はないか、探し始めます。

4. 短期集中型

これは新しいタイプです。ライ◯ップ型と呼んでも良いでしょう。数ヶ月で何十万円という高額コースに資金を投入するものの、結局たいして英語力が伸びずに終える方々です。

このタイプの方々は高いお金さえ払えば短期間で楽して英語をマスター出来るのではないかと思うわけですが、世の中そんなに甘くありません。


上記4パターンを見てきましたが、明らかに英語学習の方法を間違えています。

英語を習得するには、各段階に合った合理的な勉強法や練習法があります。

例えば、病気になったとしたら、まずは医者の診察を受けて原因をしらべ、治療方針を決定します。そして様子を見ながら治療法を調整していき、最後にリハビリをしながら日常生活への復帰を試みるわけです。

ところが皆さん、英語となった途端、医者の診察も受けずに高額のサプリメントを飲みまくったり、〇〇療法に走ったりするわけです。

この初心者の森を抜けだすには、正しい方向に向かって進み続ける事が必要です。簡単に言うと、中学高校で学ぶレベルの英単語や英文法の知識は「必須」です。それらを学び、その上で、会話練習を重ねていく必要があります。

しかし、多くの人は勉強の絶対量が足りていなかったり、勉強の仕方が非常にアンバランスです。

中級者入り口でハマる罠

中級者の丘の手前には大きな「崖」があります。

初心者は英語の知識を埋めていかねばならないので、テキストを淡々とこなすことが必然的に多くなります。勉強の苦手な方には大変ですが、勉強が得意な方にはそれほど苦痛ではありません。

ところが、中級者に必要になるのは、ネイティブとの英語での会話です。つまり、「英語の勉強」から「英会話の練習」へのシフトが必要になるのです。

ところが多くの方が、このネイティブとの会話での緊張感がたまらなく苦痛なのです。

「何を言っているのか聞き取れない」「何を言って良いのか分からない」「文をどう組み立ててよいのか分からない」・・・

よく外国人はこう言います。「日本人はシャイだから恥ずかしがらずに間違いを恐れず英語を話しましょう!」

でも違います。本当に分からないし、本当に苦痛なのです。

そして、例え辛くても、この崖を登っていかねばならないのです。

私の生徒さんも皆ここで躓きます。「ネイティブとの会話が苦しいです」とまず泣きが入ります。なので苦痛を最小限に抑えるコツを教えて、会話練習をしてもらいます。この崖を超えるのに大体半年は掛かります。

すると皆さん、「ネイティブとの会話が楽しいです」に変わっていきます。ここまで来たら初心者卒業なので私も一安心です。

危険な脇道

さて、中級者の丘の手前には大きな崖があると言いましたが、実は、そこには脇道があるのです。しかし、これが大きな罠なのです。

つまり、英会話の練習をせずに、今までと同じように英語の勉強をひたすら続ける道があるのです。この脇道にはストレスがあまりありません。ネイティブとの会話が無いからです。

この道を行けば、少なくとも英語のテストの点数はどんどん上がっていき、TOEIC満点まで至ります。しかし、この脇道の先には、TOEIC900を超えていながら、全く英語が話せない状態が待っているのです。

実は、こういった方が年に数人、私のもとにやって来ます。「自分はTOEIC900を超えているが全くしゃべれない。おそらく基本が欠けているのだと思う。どうか基本を教えて欲しい」

しかし、全てお断りしています。基本が欠けているのではなく、会話練習が圧倒的に不足しているだけだからです。それに私の生徒の大半は、TOEIC400すら超えられない方が殆どなので一緒に教えられないのです。

だからそういう方が来た時は、会話練習が不足していることを告げ、オンライン英会話などで最低週3日は会話練習をこなすことをアドバイスするだけです。

初心者を卒業間近の皆さん、会話練習から逃げないで下さい。不安な方は、まずリスニングを練習して下さい。この脇道を進むと後でもっと苦労しますよ。

中級者の丘

英語力で言うと、英検2級位、TOEIC600以上で、かつ簡単な会話がこなせる人達の住むエリアです。

おそらく英語を勉強していて一番楽しいエリアです。英会話学校で見かける、英語をペラペラに話しているように見える生徒さんは大体このエリアの住人です。ちなみに上級者はすでに英会話学校にいません!

最初にこの中級者の丘に辿り着いた時は、楽しくて仕方ありません。何故なら夢にまでみたネイティブとの会話がそれなりにこなせるようになったのですから。ネイティブの話している内容も分かりますし、こちらの言っている事も分かってくれます。だからネイティブと会話していても楽しいです。周囲の人達からは、「○○さんは英語ペラペラですね」と羨望の眼差しです。初めて会ったネイティブにも「英語がお上手ですね!」とおだてられます。非常に気持ちの良いエリアです。まさしく緑の丘がずっと続いているのです。

また、留学して一気に伸びるのはこのエリアの人達です。基礎が大体出来ていますので、英語のシャワーを浴びることで、リスニングとスピーキングが非常に伸びます。

大体、このエリアの人たちは正しい方向で英語学習さえすれば、一気にTOEICが800超えまで伸びます。英語学習のボーナス・ゾーンです。電車の中吊り広告やインターネットに宣伝で出てきて、「〇ヶ月でTOEICが600点から800点になりました!」という人達です。

例え、英語が上手く話せなくてもこのレベルの英語力があるのなら留学してもOKです。日本国内ではなかなか話す機会がありませんが、否応なしに会話に引きずり込まれます。もちろん最初はキツイと思いますが、初心者が留学するのと違い、基礎ができているのですぐに会話力が伸びてきます。しばらくの辛抱です。

ところがこのエリアには大きな問題が潜んでいます。一見、緑の丘が続く気持ちのよいエリアなのですが、その丘が果てしなく続くのです。

つまり、いくら勉強しても、自分が上達している実感がしないのです。実際この時期は、英語力の上達に大きな波が現れ、一時的に上達した気になれば、次には下手になった気がします。初心者の時とは異なる悩みにぶつかり始めます。

高みを目指して丘を登っても次は下り坂が続き、また上り坂になってもしばらくするとまた下り坂に変わります。幾つも幾つも丘を越え、それでも次の丘が見えるだけという状況が延々と続くのです。まさしく、三歩進んで二歩下がる、「三百六十五歩のマーチ」の地獄が続くのです(笑)。

この段階では、まだ洋画を字幕なしで楽しむことは不可能です。洋書も辞書を引きながらでないととても読めません。電話でネイティブと話すのも苦痛です。

周囲も自分自身も、初心者とはみなさないのですが、かといって上級者ともみなしません。そして実はここから先が長いことに気づきます。海外旅行や簡単な日常会話が目的ならここまでくれば十分です。しかし、人間欲が出るものです。大半の人がもっと上達して英語を使いこなせるようになりたい、と願うようになるのですが、このいつまでも続く中級者の丘を超えられないのです。

このエリアの人なら2,3年留学すれば更に上級に進めるのですが、日本にいながらこの中級者の丘を抜けるのはかなりの時間が掛かります。10年以上掛かる人も普通にいます。日本で英語を話せる人は、大体このエリアから抜けられすに終わるのではないでしょうか。

中級者が上級者手前で陥りやすい罠

ある程度英語を話せるようになった人が陥りやすい罠なのですが、机に向かって行う「泥臭い英語の勉強」をないがしろにして、より負担の少ない会話練習に逃げることが多くなります。

初心者から中級者になる時は、会話練習から皆さん逃げようとするのですが、中級者から上級者になる時は、再び机に向かって勉強することから逃げようとするのです。

実はそういった方の多くは、TOEICが800点代で何年も止まっているのですぐ分かります。

「このままネイティブと会話しているうちに自然に英語が上達していくだろう」と思い込んでいるのです。もちろんそういった部分もあるのですが、すぐに行き詰まります。それでも多くの方が現実から目を背けます。その方が楽だからです。

ですので机に向かって勉強することを辞めないで下さい。会話はもちろん重要ですが、早く上級者になるには泥臭い英語の勉強を続ける必要があります。

上級者の谷

TOEICで900位からこのエリアです。多くの洋画が字幕なしで楽しめるし、海外のネットの英語も大体読めます。仕事では普通にネイティブと英語で会話して、時には通訳も任されます。日本で英語を学ぶ人の5%位の人だけがたどり着ける夢の場所でしょう。ここまで来ると英語の分からない方から見ると、「英語ペラペラ」です。

しかし反対に本人から見ると、益々自分の英語力の無さを嘆くこととなります。

中級者であれば、「英語上手ですね」と言ってくれたネイティブも、遠慮なくナチュラルスピード&スラングで普通に話しかけてきて、聞き取るのが大変になります。要求される英語力が中級者の頃とは段違いに高く求められます。こまかなニュアンスを表現したくても、上手く言えなくて自分の英語にイライラしたりします。TIMEを読むと知らない単語が一杯出てくるし、CNNを見るとアンカーの英語は聞き取れるのにゲストの英語が聞き取りにくくて苦労します。もちろんプロの翻訳も通訳もまだまだこなせるレベルではありません。

実はここでようやくネイティブレベルの入門コースなのです。

長年通っていた英会話学校の授業にも疑問を持ち始めます。既にネイティブと会話しているだけでは英語力が伸びないことに気づくからです。

英語を話していても楽しくなく、ひたすら自分とネイティブとの英語力の隙間を埋める作業が続きます。一つの谷を渡るとまた次の谷がやってきます。そしてその谷は終わりなく続くのです。

中級者の丘は、アップダウンが激しく自分が成長しているかが分からず悩むのですが、上級者の谷ではいくら勉強してもネイティブの世界に辿りつけないことに悩みます。

必要な勉強量は実は初心者、中級者の頃より逆に増えます。例えば、初心者が必要な英単語は約3000語(高卒レベル)、中級者は約8000語(TOEIC満点レベル)ですが、ネイティブの語彙力は大卒で大体25000語と言われていますので、この英単語の隙間だけでも2万語弱を埋めなければなりません。

それでも英単語はやるべきことがはっきりしているだけ実はマシです。句動詞や口語表現(言い回し)などは学習が極めて大変で、どう勉強したら良いかすら分かりません。

上級英文法はそれ程ないのでまだ楽とは言え、「ロイヤル英文法(約800ページ)」程度の理解は必須です。

このように勉強量が逆に一気に増えるのです。しかし働きながらこの勉強時間を確保するのは非常に困難です。勉強時間がないことに悩むのはどのレベルでもおなじですが、実は最も切実に悩むのは上級者なのです。

このレベルだと私たちもアドバイスのしようがありません。もうひたすら上を目指すレベルですから。

多くの方はこの辺で英語学の世界に入ったり、通訳学校の門を叩いたり、留学の道を選択したりします。