日本人が英語の習得に苦労する3つの理由

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なぜ日本人は英語に苦労するのか?

日本人は中学高校6年間も英語を学んだのに話せるようになりません。
だから学校教育に「改革が必要だ!」と叫ばれています。
もちろん学校教育にも問題はあるでしょう。
しかし、日本人が英語の習得に苦労するのはもっと大きな理由が3つあります。

1.日本語と英語はかなり異なる言語

ヨーロッパの言語の多くは英語と非常に似ているのですが、その中でも英語の構造はかなりシンプルな部類に入るため、ヨーロッパ人にとって英語はマスターしやすいのです。
ところが、日本語と英語の違いは非常に大きいため、日本人が英語を学習するにはかなり苦労します。例えば、アメリカのある公的機関は、アメリカ人にとって世界で一番難しい言語は日本語だと言っています。そのため本来ならこの事を踏まえた英語学習が行われなければならないのに、何故か日本ではこの事実が存在しないかのような英語学習が広く行われています。まずはこれから説明します。

元々英語は昔のドイツ語(より正確には古代ゲルマン語)が発展して出来た言語です。5世紀にドイツ北方に住んでいたアングル人、サクソン人がケルト人を追い出してブリテン島に移り住んだのが始まりです。(アングロサクソンと言う言葉はここに由来します。) だからドイツ語と共通点が多いのです。

<上記Wikipedia民族移動時代より>

この後、英語は他の言語から影響を受けて発展していきます。特に大きかったのが、1066年にフランスに占領されたことです(ノルマン・コンクエスト)。そのため上流社会ではフランス語が使われるようになり、多くのイギリス人がフランス語を学ばざるをえなくなりました。結果的にその後200年の間に多くのフランス語が英語に流入しました。
例を少し出すと、beef(ビーフ)、pork(ポーク)、bottle(ボトル)、dinner(夕食)、tax(税金)、prince(王子)、city(都市)、money(お金)、face(顔)などがあります。どうです、皆さんよく知っている「基本英単語」でしょう?現在よく使われる英単語1000語のうちだけでも約30%はフランス語が元になっている事が分かっています。だからフランス語とは単語が似ているのです。
更に言うと、フランス語はラテン語から発展した言葉ですので、同じようにラテン語から発展したスペイン語やイタリア語とも共通点が多いのです。
(ローマ帝国の公用語はラテン語でしたから!)
聞く所によると、スペイン人はイタリア人と会話しても何となく通じるそうで、フランス語はさすがに発音が違いすぎるので分からないと言うものの、読むことは何とかできるそうです。
これって日本なら単なる方言ではありませんか?

それもそのはず、そもそも英語を含めヨーロッパ各言語には元となった共通の古代言語があり、インド・ヨーロッパ祖語(または印欧祖語)と呼ばれています。

「英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ロシア語・ギリシア語・ペルシア語・サンスクリット・ヒンディー語・ウルドゥー語などの言語はすべてこのインド・ヨーロッパ祖語から派生して成立したとされ、細部はともかく、その存在は定説となっている。」(Wikipedia英語史より)

この様に、英語史を少し辿れば、英語と他の国の言葉には共通点が多いことに気が付きます。ちなみに似ている言語同士を地図で色分けするとこうなります。

<上記Wikipedia比較言語学より>

殆どが緑色のIndo-European(インド・ヨーロッパ語族)に分類されていますね。で日本語と言うと、灰色のIsolated(孤立)となっています。では、他の国々の言語がどれだけ似ているか見てみましょう。

さて、どうですか?
英語のfootが他の言語と似てないと思われる方もいるかもしれませんが、インド・ヨーロッパ祖語の「p」は英語だと「f」に、「d」は「t」に変化しました。これはグリム童話で有名なグリム兄弟が発表したグリムの法則の一つです。このようにインド・ヨーロッパ祖語から派生した言語は似ているのです。元が同じ言語だから当然です。

逆の例になりますが、だからこそアメリカ人が日本語を学ぶのは極めて大変なのです。以下の表を見て下さい。

英語教育に携わる人なら大抵の人が知っている話ですが、米国務省の機関FSI(Foreign Service Institute)が発表した「外国語の研修成果と学習時間に関する資料(上図は抜粋)」というのがあります。この機関は将来の外交官や軍の上官になる人達に各国の言葉を教えているそうです。グループ1のドイツ語とグループ4の日本語で、レベル2に達する時間を比べて下さい。レベル2は「なんとか仕事で使える」レベルですが、ドイツ語で約720時間、日本語で1320時間と約2倍の時間が掛かるとしています。さらに日本語の場合、仕事で十分に使えるレベルに達するには2400時間以上の授業時間が必要と報告しているのです。この機関は難易度で言語を4つのグループに分けていますが、上記の理由から日本語を最難関のグループ4に分類しています。グループ4には他に、中国語、朝鮮語、アラビア語が含まれています。全て英語とは構造的に異なる言葉ですね。このように言語構造が異なると習得に時間が掛かるのです。だからアメリカ人が日本語を覚えるのは大変であり、逆に日本人が英語を覚えるのも大変なのです。
(なおこの表の時間は、教師が教えた授業時間で家庭学習の時間は含まれておらず、かつ多くの生徒を輩出してきた経験から割り出したそうです。)

一方、アメリカ人にとって日本語と同じ最高難易度の韓国語ですが、日本人にとっては英語より簡単に習得できる言語です。他の言葉より日本語にかなり近いですから。少しネットを検索してもらえれば分かって頂けると思います。

このように、母国語に近い言語ほど単語や文法が似ているので学びやすいのですが、残念ながら英語と日本語は非常にかけ離れた言語なのです。これが、他の国の人と比べ、日本人が英語を習得するのに苦労する一番の理由なのです。それにも関わらず、英語学習法の議論からこの点が何故かすっぽりと抜け落ちており、英文法など学ばなくても英語漬けにさえすれば何故か英語が話せるようになると信じている人が多いのです。

2.英語の勉強時間が圧倒的に足りない

さて、日本人はよく、「中学高校で英語を6年間も勉強してきたのに全然話せるようにならなかった」と、学校の英語教育に対する不満をよく口にします。私自身も昔同様の不満を持っていたのでよく分かります。ですが、皆さん、その6年間で英語の授業は何時間だったかご存知でしょうか?実はせいぜい800時間だそうです。先ほどのFSIの表をみて下さい。800時間だと「最低限の意思の疎通ができる」とあります。実際皆さんの英語力はそのレベルではありませんか?

だから私たちは、中学高校で英語を6年間勉強して、「全然話せるようにならなかった」のではなく、「最低限の意思の疎通ができる」ようになったのです。そして「なんとか仕事で使える」ようになるには更に500時間必要であり、大抵の日本人が目指している「仕事で十分使える」レベルには、さらに1600時間必要なのです。言語構造が英語とかなり異なる私たち日本人は、他の国の人達の2倍頑張らないといけないのです。この方がより正しい認識だと思いませんか?
(この表はあくまでアメリカ人が日本語を覚える場合に掛かる時間であり、逆ではありませんので、あくまで目安の話です。この数字よりおそらく大きいと言われています。)

3.英語を話す機会が殆どない

では、日本語と英語の構造的な違いを十分に認識して、充分な時間英語を勉強したとしましょう。それで英語を話せるようになるでしょうか。おそらく無理でしょう。簡単な理由です。一体どこで英語を使うのでしょうか?
日本に住んでいる限り、英語を話す機会はまずありません。車に乗らずに運転がうまくなる人もいませんし、水に入らずに泳ぎがうまくなる人はいません。英語も同じです。
英語が話せるようになるには、繰り返し英語を話す機会が必要でしょう。でも日本国内にいて、英語を話さなければならない状況は殆どありません。これが日本国内で英語の勉強を一生懸命やって、英語の知識が十分ついても英語が話せるようにならないもう一つの大きな理由です。日本国内にいながら英語を話せるようになるのは実に大変な事なのです。

だから日本国内で十分に勉強した人たちが留学すると非常に伸びます。ただこういう人たちは既に仕事についている場合が多く、海外留学する時間が取れない場合が多いでしょうね。
逆に英語の基礎をよく分かっていない初心者がいきなり留学しても、ブロークン英語で簡単な意思疎通が出来るようになるだけなので注意して下さい。泳げない人がいきなりプールに飛び込んでも、せいぜい犬かきが出来るようになるだけでしょう。そしてどれだけ練習しても犬かきが上手くなるだけで、クロールを息継ぎしながら泳げるようにはならないのです。

英語と日本語は非常に異なる言語です。そのため英語に似た言葉を話す国の人達よりも基礎的な事から学ぶ必要があります。だから他の国の人以上に時間を掛けて学ぶ必要があるのです。更にその上で、十分な時間をかけて英語を話す練習が必要です。
残念ながらこれらのことは日本ではあまり理解されておらず、正しい対策が取られていない気がします。

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