「たくさん」と英語で言いたい時、「much? many? a lot of? どれを使えばいいの?」と迷った経験はありませんか。
実は、この3つの言葉は、ネイティブスピーカーが話す場面や文の種類(肯定文・否定文・疑問文)によって自然な使われ方が異なります。この使い分けができるようになると、あなたの英語は不自然さがなくなり、ぐっとネイティブスピーカーのような響きになります。英語のコミュニケーションで、より正確に、そして自然に意図を伝えるための重要な一歩です。
この記事では、英語を学び直している初心者の方でも自信を持って「たくさん」を表現できるよう、”much”, “many”, “a lot of” の使い方を、基本のルールから応用、そして微妙なニュアンスの違いまで、徹底的に解説します。
まずは基本を短い動画でサクッと理解したい、という方はこちらのYouTube動画をご覧ください。この記事は、動画の内容をさらに深掘りし、より多くの例文と共に詳しく解説していますので、動画と合わせてご覧いただくと理解が何倍にも深まります。
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動画で基本を押さえた方も、これから学ぶ方も、この記事をじっくり読んで「たくさん」マスターを目指しましょう。
基本のキ:使い分けのカギは「数えられる名詞」vs.「数えられない名詞」
“much” と “many” を使い分けるための最も重要なルールは、後ろに続く名詞が「数えられるか、数えられないか」です。この概念は、日本語にはない英語特有の考え方なので、ここをしっかり押さえることが全ての土台となります。
数えられない名詞 (不可算名詞) と一緒に使う “much”
“much” は、一つ、二つと数えられない名詞(不可算名詞)と一緒に使い、「たくさんの量」を表します。
数えられない名詞とは、液体、粉、情報、お金、時間、愛情など、具体的な形がなく、数で区切れないもののことです。頭の中で「かたまり」や「全体」としてイメージされるもの、と考えると分かりやすいかもしれません。
- 水 (water)、コーヒー (coffee)、牛乳 (milk) のような液体
- 砂糖 (sugar)、米 (rice)、砂 (sand) のような粉状・粒状のもの
- 時間 (time)、お金 (money)、幸福 (happiness) のような抽象的な概念
- 情報 (information)、アドバイス (advice)、知識 (knowledge) のような形のないもの
- 交通量 (traffic)、荷物 (luggage)、家具 (furniture) のような集合的なもの
これらは “one water, two waters” のようには数えません。グラスなどの容器に入れたり、単位をつけたりして初めて数えられるようになります(例: two glasses of water)。このような名詞の「量」が「たくさん」あることを示す時に “much” を使います。
特に日本人が間違いやすいのが「お金 (money)」と「情報 (information)」、「宿題 (homework)」です。
- お金 (money): 日本語では「100円」「1000円札」と数えますが、英語の “money” は「お金」という抽象的な概念全体を指します。「硬貨 (coins)」や「紙幣 (bills)」は数えられますが、”money” そのものは数えられません。
- 情報 (information): 日本語の「2つの情報」という感覚とは違い、英語の “information” は数えられない名詞です。「一つの情報」と言いたい場合は “a piece of information” のように単位を使います。
- 宿題 (homework): これも「宿題」という活動全体を指すため、数えられません。「たくさんの宿題」は “much homework” となります。
数えられる名詞 (可算名詞) と一緒に使う “many”
“many” は、一つ、二つと数えられる名詞(可算名詞)と一緒に使い、「たくさんの数」を表します。
数えられる名詞とは、その名の通り、数を数えることができるものです。単数形と複数形があり、複数形になるのが大きな特徴です。
- 本 (book → books)
- 友達 (friend → friends)
- りんご (apple → apples)
- 国 (country → countries)
- 人 (person → people)
- 子供 (child → children)
このように、数字をつけて数えられる名詞の「数」が「たくさん」あることを示す時に “many” を使います。”many” の後ろの名詞は、必ず複数形になることを忘れないようにしましょう。これは英語の基本的な文法ルールです。
どちらにも使える万能選手 “a lot of” / “lots of”
“a lot of” は、数えられる名詞と数えられない名詞、その両方に使える非常に便利な表現です。”lots of” も同じ意味ですが、”a lot of” よりも少しカジュアルで、より話し言葉的な響きになります。
- a lot of water (たくさんの水)
- a lot of books (たくさんの本)
- lots of noise (たくさんの騒音)
- lots of tourists (たくさんの観光客)
もし “much” と “many” のどちらを使うか一瞬で判断できない時、まずはこの “a lot of” を使ってみましょう。特に日常会話では “a lot of” が圧倒的に頻繁に使われます。これを使いこなすだけで、会話がぐっとスムーズになります。
基本の使い分けまとめ
表現 | 使われる名詞の種類 | 意味 |
much | 数えられない名詞 | たくさんの量 |
many | 数えられる名詞 (複数形) | たくさんの数 |
a lot of | 両方 | たくさんの量・数 |
【最重要ポイント】肯定文・否定文・疑問文での使い分け
基本ルールを押さえたら、次はいよいよ本題です。実はこれらの言葉、文の種類によって使われ方が大きく変わります。ここを理解することが、自然な英語への一番の近道です。
1. 肯定文 (「~です」の文)
肯定文で「たくさん」と言いたい時、最も自然で一般的に使われるのは “a lot of” です。
“a lot of” は肯定文の王様
She has a lot of friends.
彼女は友達がたくさんいます。
I need a lot of money for my trip.
旅行のためにたくさんのお金が必要です。
We had a lot of fun at the party.
私たちはパーティーでとても楽しみました。
There is a lot of traffic this morning.
今朝は交通量がとても多いです。
肯定文での “much” は要注意!
日常会話の肯定文で、”much” を単独で使うことはほとんどありません。使うと非常に堅苦しく、古風な印象を与え、不自然に聞こえてしまいます。
(不自然な例) × I have much work to do.
(自然な例) 〇 I have a lot of work to do.
やらないといけない仕事がたくさんあります。
(不自然な例) × He drinks much coffee.
(自然な例) 〇 He drinks a lot of coffee.
彼はコーヒーをたくさん飲みます。
ただし、”so” (とても), “too” (~すぎる), “as” (~と同じくらい) といった強調する言葉と一緒の場合は、肯定文でも全く問題なく、自然に使えます。
I have so much work to do!
やらないといけない仕事が本当にたくさんある!
I ate too much cake.
ケーキを食べすぎました。
You can take as much time as you need.
必要なだけ時間をかけていいですよ。
“many” は使えるが “a lot of” の方が口語的
肯定文で “many” を使うことは文法的に間違いではありません。特に書き言葉や少しフォーマルな場面では普通に使われます。しかし、カジュアルな話し言葉では、”a lot of” の方がより自然で好まれる傾向があります。
(自然) Many people visit Kyoto every year.
毎年たくさんの人々が京都を訪れます。(少しフォーマルな響き)
(より自然な会話表現) A lot of people visit Kyoto every year.
毎年たくさんの人々が京都を訪れます。
“many” が間違いではないので混乱するかもしれませんが、「友達と話すなら “a lot of” が普通」と覚えておくと良いでしょう。
2. 否定文 (「~ではない」の文)
否定文で「あまり~ない」と言いたい時は、”much” と “many” が大活躍します。肯定文とはうってかわって、こちらが主役になります。
“not much” と “not many”
I don’t have much time.
時間はあまりありません。
There aren’t many chairs in the room.
部屋には椅子があまりありません。
She didn’t eat much breakfast.
彼女は朝食をあまり食べませんでした。
He doesn’t know many people here.
彼はここに知り合いがあまりいません。
このように、否定文では “not much” (量の否定) と “not many” (数の否定) が非常に自然で、頻繁に使われます。もちろん “not a lot of” も使え、意味はほとんど同じです。
I don’t have a lot of time.
時間はたくさんありません。(not much time とほぼ同じ意味)
3. 疑問文 (「~ですか?」の文)
疑問文で量や数を尋ねる時は、”How much…?” と “How many…?” が基本の形です。これは決まり文句として覚えてしまいましょう。
“How much…?” と “How many…?”
How much is this bag?
このカバンはいくらですか?
How much water should I drink?
水はどのくらい飲むべきですか?
How many countries have you been to?
いくつの国に行ったことがありますか?
How many students are in your class?
クラスには何人の生徒がいますか?
“Do you have a lot of…?” という尋ね方も可能ですが、これは「たくさん持っていますか?」とイエス・ノーで答えを求める質問になります。相手が持っている量が「多いか少ないか」に関心がある場合に使います。純粋に具体的な量や数を尋ねたい場合は “How much/many…?” を使いましょう。
文の種類別使い分けまとめ
文の種類 | おすすめの表現 | 例文 |
肯定文 | a lot of | I have a lot of homework. (宿題がたくさんある) |
否定文 | not much / not many | I don’t have much money. (あまりお金がない) |
疑問文 | How much…? / How many…? | How many books do you have? (本を何冊持ってる?) |
もっと表現豊かに!ニュアンスと類似表現
基本をマスターしたら、もう少し表現の幅を広げてみましょう。言葉の微妙なニュアンスを理解すると、より細やかな感情や状況を表現できます。
フォーマル vs. カジュアル
簡単に言うと、”much” や “many” は少しフォーマルな響きがあり、書き言葉や公の場でのスピーチなどでよく使われます。一方、”a lot of” や “lots of” は日常会話で使われるカジュアルな表現です。
例えば、ビジネスメールで「多数のご応募ありがとうございます」と書くなら、”Thank you for the many applications.” の方が “a lot of applications” よりもフォーマルで適切に聞こえます。逆に、友達に「昨日パーティーに人がいっぱいいたよ!」と言うなら、”There were a lot of people at the party yesterday!” の方が断然自然です。
「十分すぎるほどたくさん」の “plenty of”
“plenty of” は「たくさんの」という意味に加え、「必要に対して十分すぎるほどある」「有り余るほどある」というポジティブで満たされたニュアンスを持つ表現です。単に量が多いだけでなく、「だから心配ない」「だからもう要らない」といった安心感を伝えたい時にぴったりです。
Don’t worry. We have plenty of time.
心配しないで。時間はたっぷりありますよ。(だから急がなくて大丈夫)
There is plenty of food for everyone.
みんなに行き渡る十分な食べ物がありますよ。(だから安心してたくさん食べて)
“I have a lot of problems.” (問題がたくさんある) はネガティブな状況ですが、”Don’t worry, I have plenty of ideas.” (心配しないで、アイデアは十分にあるから) と言えば、とても頼もしく聞こえますね。
フォーマルな場面での言い方
よりフォーマルな文章、例えばニュース記事や学術レポートなどでは、以下のような表現も好んで使われます。
- a large amount of + 数えられない名詞The project requires a large amount of money.そのプロジェクトは多額の資金を必要とする。
- a large number of + 数えられる名詞A large number of people attended the event.多数の人々がそのイベントに参加した。
これらの表現は話し言葉ではあまり使いませんが、知っておくと英文を読む際に役立ちます。
まとめ:今日から使える3つの黄金ルール
長くなりましたが、英語初心者の方が覚えるべき重要なポイントは、究極的には3つだけです。
- 迷ったら “a lot of” を使う。 特に日常会話の肯定文では、これが最も安全で自然な選択です。まずは “a lot of” を完璧に使いこなすことを目指しましょう。
- 否定文・疑問文では “much” と “many” を積極的に使う。 「〜ない」「どのくらい?」と言いたい時は、”not much/many” や “How much/many?” が定番の形です。これはセットで覚えてしまいましょう。
- 数えられる名詞か、数えられない名詞かを常に意識する。 これが “much” と “many” を正しく使い分けるための基本です。新しい単語を覚える時は、数えられるかどうかも一緒に確認する習慣をつけると、英語力全体が向上します。
最初は難しく感じるかもしれませんが、意識して使っているうちに、頭で考えなくても感覚的に使い分けられるようになってきます。たくさんの英語に触れ、間違いを恐れずにどんどん使ってみてください。この記事が、あなたの英語学習の助けになれば幸いです。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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