ヨーロッパの言語は、もともと「印欧祖語」と呼ばれる一つの言語が枝分かれした後、お互いに影響を与え合いながら発達していきました。ですから、ヨーロッパの言語はお互いに特徴が似ています。
その中でも英語は、さまざまな歴史的な偶然が重なり、昔ながらの複雑なルールが崩れたため、ヨーロッパの言語の中でもかなりシンプルな言語になりました。ですから、ヨーロッパの人々からすると、英語は自分たちの言語に似た、簡単で習得しやすい言語なのです。
例えば、日本人の苦手な定冠詞 the ですが、ドイツ語ではなんと16種類あります。イタリア語でも10種類、フランス語でも3種類です。数が多ければ覚えるのも使い分けるのも大変です。ですから英語を話す人がドイツ語やイタリア語を覚えようとすれば大変ですが、逆に英語を覚えるのは比較的楽なのです。
一方、私たちの日本は、ユーラシア大陸の西の端にあるヨーロッパとは反対の東端にあります。そのため日本語は、ヨーロッパの言語とは全く異なる起源を持ち、独自の発達をしてきました。そのため日本人からすると、英語は言語構造が全く異なる、非常にわかりにくい言語なのです。
先ほど例に出した定冠詞の the なんて、多くの日本人が使いこなせません。昔は「冠詞がよく分からない、と言い始めたら上級者」なんて言葉もあったくらいで、日本時にとって冠詞の理解は大変なのです。でも中学1年のテキスト最初のところに載っていることから分かるとおり、冠詞という概念は、英語を始め、ヨーロッパの言語では当たり前で必須なのです。
※ 他にも理由はあるのですが、詳細は別のところで論じたのでそちらを参照して下さい。
そのため日本人は、英語の構造をルール化した「英文法」を学ぶことで、英語を習得しようとしてきました。ところがこの英文法のルールが複雑なのです。なぜなら英語は歴史の中で、規則的なルールが崩れ、変則的なルールの塊になってしまっているからなのです。
しかし、中学高校での英語の授業では、なぜそんな複雑なルールになっているのかの説明は全くありません。ひたすらより多くの文法ルールを覚え、テストで問題を解ける程度に使いこなすことを目指しています。
それはそれで間違っていません。最短時間で最大限の結果を出そうとすれば、「力技で文法ルールをひたすら覚える」というのが最も効率の良い方法だと私も考えています。しかしこの方法が使えるのは、英語が好きな人と、勉強が得意な人、あとは努力ができる人です。
ですから、結果的に多くの人が英語学習に失敗したまま社会に出ます。そしてさまざまな理由から英語を学びなおそうとするのですが、うまくいきません。時間のある学生時代ですらできなかったのですから、時間がない社会人が「力技で文法ルールをひたすら覚える」という、学生時代と同じやり方をしても、うまくいくはずがありません。
そうであれば、社会人は改めて「英語の理屈」を理解した方が、結果的に習得は早いはずなのです。ただ残念ながら、市販の参考書や英会話学校では、基本である中学英文法をきちんと説明するということをしておりません。
多くの場合、単に英語にはどのようなルールがあるのか説明しているだけで、なぜそのようなルールになっているかの説明がないのです。
例えば、「三単現のS」があります。どういうときに動詞の語尾にSが付くのかの説明はあります。しかし、なぜ、こんな変なルールがあるのか一切説明がないのです。よって、学習者は、意味不明のこのルールをひたすら覚えて慣れるしかないのです。
先ほども言いましたが、日本語と英語は言語的にかなり異なる構造をしています。子供相手なら「英文法のルールはこうなっているから、ひたすら慣れろ」という方法も悪くありませんが、大人相手であれば、大人の持っている知識や理解力を利用して「英文法のルールが、なぜそうなっているのか」を説明して理解してもらった方が、結果的に習得は早いはずなのです。
ですからこの「理屈で分かる大人の中学英文法」では、大人の英語初心者が英文法を学び直すことを大前提に、「なぜ、そうなっているのか」という理屈を説明しながら、英文法の基本である中学英文法を説明していきます。
英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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