「会社の電話が鳴るたびに、海外からじゃないかとドキッとする…」
「英語の電話がかかってきたら、頭が真っ白になってしまう…」
そんな経験はありませんか? 職場での予期せぬ英語の電話は、多くの人にとって大きなストレスの原因です。
まずは短い動画で、恐怖を乗り越えるための基本的な心構えと必須フレーズをサクッと確認してみませんか?
動画で基本のイメージを掴んだら、この記事でさらに一歩進んだ知識とテクニックを身につけていきましょう。この記事を最後まで読めば、英語の電話に対する漠然とした「恐怖」が、具体的な「自信」に変わるはずです。
なぜ英語の電話は怖いのか?乗り越えるための3つの心構え
フレーズを覚える前に、まずなぜ私たちは英語の電話に恐怖を感じるのか、その心理的な壁を取り除くことから始めましょう。大切なのは、英語力そのものよりも「心構え」の転換です。
1. ゴールを再定義する:「完璧な英語」vs.「目的の達成」
最大のプレッシャーは、「完璧な英語を話さなければならない」という思い込みです。しかし、電話対応の本当の目的は何でしょうか?
それは、美しい英語を披露することではなく、かかってきた電話の用件を処理し、業務を前に進めることです。
多くの場合、あなたの役割は「英語が堪能な担当者に電話を取り次ぐこと」かもしれません。その場合、求められるのは流暢な会話力ではなく、相手が誰で、誰に用があるのかを正確に聞き取り、つなぐことです。
究極的には、Just a moment, please.
(少々お待ちください)が言えれば、その時点であなたの役割の9割は達成されているのです。
2. 相手も「協力者」であると知る
電話の相手は、あなたが英語のネイティブスピーカーではないことを理解してくれる、という前提に立ちましょう。国際電話では、相手も様々な国籍の人と話すことに慣れています。完璧な英語など期待していないのです。
面白いことに、ネイティブスピーカー向けにも「非ネイティブと話す際は、よりゆっくり、辛抱強く話しましょう」というマニュアルが存在します。コミュニケーションの責任は、あなた一人にあるのではありません。相手もあなたに理解してもらうよう努力する義務があるのです。
聞き取れなかった時に「もう一度お願いします」と頼むことは、恥ずかしいことではなく、コミュニケーションを成功させるための当然の権利であり、責任感の表れです。
3. 「準備」という名のお守りを持つ
パニックを防ぐ最も効果的な対策は、物理的な「準備」です。
- お守りフレーズを決める:いざという時に頼れるフレーズを2〜3個だけ選びましょう。
- カンニングペーパーを作る:選んだフレーズを付箋に書き、電話機のそばに貼っておきます。頭が真っ白になっても、視線を動かせば大丈夫。
- 声に出して練習する:フレーズを何度か音読し、口の筋肉に覚えさせましょう。
この「準備」という行為そのものが、あなたの心を落ち着かせる最高の「お守り」になります。
実践編:最初の30秒を乗り切るサバイバル術
パニックになるかどうかは、最初の30秒で決まります。ここを乗り切るための具体的な手順を見ていきましょう。
STEP 1: まずは時間を稼ぐ
頭が真っ白になったら、思考を整理するための時間を確保することが最優先です。この一言が、あなたをパニックから救い出します。
- Just a moment, please.(少々お待ちください。)解説:最もシンプルで便利なフレーズです。相手に失礼なく、考える時間を作ることができます。まずはこれを言うことだけを目標にしましょう。
- Could you hold on for a moment, please?(少々お待ちいただけますか?)解説:
hold on
は「電話を切らずに待つ」というニュアンスを含み、より丁寧な表現です。ビジネスシーンで非常に標準的で安全な選択肢です。
STEP 2: 正直に、賢く状況を伝える
英語が得意でないことを正直に伝えるのは、弱みを見せることではありません。相手の協力を引き出し、会話のペースを自分に有利にするための高度な戦略です。
- My English is not very good. Could you please speak slowly?(私の英語はあまり上手ではありません。ゆっくり話していただけますか?)解説:この一言で、相手はあなたの状況を理解し、話すスピードを落としてくれるでしょう。これは、スムーズなコミュニケーションのための「賢い方法」です。
STEP 3: 聞き返すことを恐れない
一度で聞き取れなくても全く問題ありません。わからないまま話を進めることの方が、よほど失礼にあたります。「正確に理解しよう」という姿勢を示すことが大切です。
- Could you say that again, please?(もう一度おっしゃっていただけますか?)解説:聞き返す際の最も標準的で丁寧なフレーズです。これを言うことに、何の遠慮もいりません。
- I’m sorry, could you say that again, please?(申し訳ありません、もう一度おっしゃっていただけますか?)解説:
I'm sorry
を頭につけるだけで、さらに丁寧な印象になります。電波状況が悪いなど、自分のせいではない場合も多々ありますから、自信を持って使いましょう。
シーン別・完全フレーズ集:これだけあれば大丈夫!
ここでは、電話対応で遭遇する様々な状況に対応するための、より具体的なフレーズを深掘りしていきます。
担当者へ取り次ぐ
電話の目的で最も多いのが、担当者への取り次ぎです。
誰宛の電話か確認する
- May I ask who’s calling, please?(どちら様でしょうか?)解説:相手が名乗らなかった場合に、名前を尋ねるための最も丁寧で標準的な表現です。
- Who would you like to speak to?(どなたにお繋ぎいたしましょうか?)解説:誰宛の電話かを確認するための、シンプルで分かりやすい質問です。
担当者につなぐことを伝える
- I’ll put you through to Mr./Ms. [Name].([名前]さんにお繋ぎします。)解説:
put someone through
は「(電話を)~につなぐ」という、非常に自然でプロフェッショナルな響きを持つ表現です。 - Please hold while I transfer you.(お繋ぎする間、お待ちください。)解説:待ってもらう依頼と、これから何をするかを同時に伝える、親切で効率的なフレーズです。
担当者が不在・電話に出られない
担当者がいない、または電話に出られない場合の対応です。
不在であることと理由を伝える
- I’m afraid he is not available at the moment.(あいにく、彼はただいま電話に出られません。)解説:
not available
は「手が空いていない、対応できない」という意味の万能表現。I'm afraid...
(残念ながら、恐れ入りますが)をつけることで、悪い知らせを和らげる効果があります。 - I’m sorry, she is in a meeting right now.(申し訳ありません、彼女はただいま会議中です。)
- He is on another line at the moment.(彼はただいま別の電話に出ております。)
- She is out of the office today.(彼女は本日、社外におります。)解説:不在理由が明確な場合は、具体的に伝えると親切です。
いつ戻るかを伝える
- He should be back by 5 p.m.(彼は午後5時までには戻るはずです。)
- She is expected to be back around 3 p.m.(彼女は午後3時頃に戻る予定です。)
- I’m not sure what time he will be back.(彼が何時に戻るか、分かりかねます。)解説:戻り時間がわかる場合は具体的に、わからない場合は正直に伝えましょう。不確かな情報を伝えるより誠実です。
重要な情報を正確に聞き取る
名前や会社名、電話番号など、間違いが許されない情報は、念には念を入れて確認します。
- Could you spell that for me, please?(スペルを教えていただけますか?)解説:これは英語力の問題ではなく、正確性を期すためのプロフェッショナルな行動です。ネイティブ同士でも、お互いの名前を確認するためなど、本当によく使います。自信を持って使いましょう。
- Let me read that back to you. Your number is…(復唱させていただきます。お電話番号は…ですね。)解説:数字やアルファベットの羅列は間違いやすいため、復唱確認はビジネスの基本です。責任感のある真摯な態度が伝わり、相手に安心感を与えます。
伝言を預かる
担当者が不在の場合、伝言を預かるかどうかを提案します。
- Would you like to leave a message?(ご伝言はございますか?/伝言を残されますか?)解説:相手に伝言を残す意思があるかどうかを尋ねる、最も一般的で丁寧な表現です。「こちらから何かしましょうか?」という、相手の意向を尊重するプロアクティブな姿勢が伝わります。
- Can I take a message? / Could I take a message?(ご伝言を承りましょうか?)解説:こちらも同じ意味で使えます。
Could
を使うと、より丁寧さが増します。 - Okay, I’ll make sure he/she gets the message.(かしこまりました。彼/彼女に必ず申し伝えます。)解説:伝言を預かった後の締めくくりとして完璧な一言です。「必ず伝えます」という約束が、相手に信頼感と安心感を与えます。
電話を終える
用件が済んだら、丁寧に電話を締めくくります。
- Thank you for calling. Have a nice day.(お電話ありがとうございました。良い一日を。)解説:感謝の言葉と相手を気遣う一言の組み合わせは、ポジティブな印象を残すための定番フレーズです。
- Is there anything else I can help you with?(他に何かお手伝いできることはございますか?)解説:電話を切る前に、他に用件がないか最終確認するための丁寧な一言です。
まとめ:恐怖を乗り越え、自信を持って次の電話へ

突然の英語の電話は、もう怖くありません。最後に、大切なポイントをもう一度確認しましょう。
- 心構えを変える:完璧な英語は不要。「目的を達成する」ことだけを考える。
- お守りフレーズを準備する:
Just a moment, please.
をはじめ、数個のフレーズをデスクに貼っておく。 - 聞き返すことを恐れない:
Could you say that again, please?
は、プロフェッショナルな対応の証。 - 正確さを期す:
Could you spell that for me, please?
は、ネイティブも使う必須フレーズ。
今日学んだフレーズは、どれもシンプルで、すぐに使えるものばかりです。しかし、その一つ一つが、あなたをパニックから救い、冷静な対応へと導いてくれる強力な武器になります。
この記事を「お守り」として、いつでも見返せるようにしておいてください。次の電話が鳴ったとき、きっとあなたは以前とは違う、落ち着いた自分に出会えるはずです。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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