「お待たせしました」は、レストランの店員さんから友人との待ち合わせまで、日常のあらゆる場面で使える、とても便利な日本語ですよね。この一言には、「待たせてしまってごめんなさい」という謝罪の気持ちと、「待っていてくれてありがとう」という感謝の気持ちの両方が含まれています。相手への気遣いを凝縮した、まさに日本らしい表現と言えるかもしれません。
しかし、これを英語で表現しようとすると、少し文化的な視点の切り替えが必要です。英語では、この「謝罪」と「感謝」を分けて、より直接的に伝えるのが基本なのです。この違いを理解することが、より自然な英語コミュニケーションへの第一歩となります。
この記事では、英語を学び直したいと考えている初心者の方でも安心して理解できるように、「お待たせしました」の英語表現を「感謝」と「謝罪」の2つの側面から、豊富な例文とともに詳しく解説していきます。
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英語の基本:感謝 vs. 謝罪
英語で「お待たせしました」と言いたい時、まず心の中で考えるべきことは、「今、一番伝えたい気持ちは感謝?それとも謝罪?」ということです。自分の気持ちの軸をどちらに置くかで、選ぶべき言葉が変わってきます。
- 相手が待ってくれたというポジティブな行動に対して、「ありがとう」と伝えたいのか
- 自分が待たせてしまったというネガティブな状況に対して、「ごめんなさい」と伝えたいのか
例えば、友人が文句も言わずに笑顔で待っていてくれたなら、「ありがとう」という感謝の気持ちが強いはずです。一方で、自分が大幅に遅刻してしまい、相手を長く待たせてしまったなら、まずは「ごめんなさい」という謝罪の気持ちを伝えるべきでしょう。
このどちらの気持ちが強いかによって、使うべきフレーズが変わってきます。それぞれのパターンを、具体的なシチュエーションと共に詳しく見ていきましょう。
感謝を伝える「お待たせしました」
まずは、相手への感謝の気持ちを表す表現です。こちらはポジティブな印象を与え、場の空気を和やかにしてくれます。自分の落ち度を強調するのではなく、相手の寛大な行動に焦点を当てる素敵なコミュニケーションです。
1. Thank you for waiting. (お待ちいただきありがとうございます。)
これは最も一般的で使いやすい「感謝」の表現です。「待つ」という行為そのものに対して「ありがとう」と伝える、ストレートで分かりやすいフレーズです。ビジネスシーンから日常会話まで本当に幅広く使えます。
- (レストランで)Thank you for waiting. Your table is ready now.
- お待たせいたしました。お席の準備ができました。
- (電話で保留にした後)Thank you for holding. I have the information you requested.
- お待たせいたしました。ご依頼の情報を確認いたしました。(※電話の保留に対しては holding を使うのが一般的です)
- (友人とカフェで)Thanks for waiting! I just had to take a quick call.
- 待っててくれてありがとう!ちょっと電話に出なきゃいけなくて。(※友人相手なら Thanks とカジュアルに言うこともできます)
2. Thank you for your patience. (お待ちいただきありがとうございます。)
waiting
の代わりに patience
(忍耐、辛抱強さ) を使うことで、より丁寧でフォーマルな響きになります。相手が長時間待ってくれた場合や、待つことが当然ではない状況で待ってくれたことに対して、深い敬意と感謝を示すことができます。特にビジネスの場面や、お客様に対して使うのに最適な表現です。
- (フライトの遅延に関するアナウンスで)Thank you for your patience. We will begin boarding shortly.
- 長らくお待たせいたしました。まもなく搭乗を開始いたします。
- (問い合わせへの返信メールで)Thank you for your patience while we looked into this matter.
- この件に関してお調べしている間、お待ちいただきありがとうございました。
- (システム障害からの復旧を知らせる場面で)We appreciate your patience during the system maintenance.
- システムメンテナンスの間、ご辛抱いただき感謝いたします。(Thank you の代わりに We appreciate を使うと、より組織的でフォーマルな感謝の表明になります)
謝罪を伝える「お待たせしました」
次に、「待たせてしまって申し訳ない」という謝罪の気持ちをストレートに伝えたい時の表現です。自分の非を認め、相手への迷惑を詫びる誠実な態度を示すことができます。
1. Sorry for the wait. (待たせてごめんね。)
シンプルで直接的に謝罪を伝えるフレーズです。「the wait (待ったこと)」に対して「ごめんなさい」と伝えます。カジュアルな場面で友人に使うのはもちろん、お店のスタッフがお客さんに少し待たせた時など、比較的軽い謝罪として幅広く使えます。
- (カフェで友人と待ち合わせ)Hi, sorry for the wait. The traffic was terrible.
- やあ、待たせてごめんね。道がすごく混んでて。
- (レジで)Sorry for the wait. How would you like to pay?
- お待たせして申し訳ありません。お支払い方法はいかがいたしますか?
- (同僚に資料を渡すのが少し遅れた時)Here are the documents. Sorry for the wait.
- はい、これが資料だよ。待たせてごめんね。
2. I’m sorry I’m late. (遅れてごめんなさい。)
これは「待たせた」ことよりも、「遅刻した」という事実そのものを謝罪する決まり文句です。待ち合わせや会議に遅れて到着した際に、言い訳をする前に、まず第一声として使うのが一般的です。
- (会議室に入りながら)Good morning, everyone. I’m sorry I’m late. My train was delayed.
- 皆さん、おはようございます。遅れて申し訳ありません。電車が遅延しまして。
応用編:謝罪と感謝のコンビネーション
より丁寧で自然な印象を与える上級テクニックとして、「謝罪」と「感謝」を組み合わせる方法があります。特に、自分が遅刻して相手を待たせてしまった場合に非常に効果的です。これは、自分の非(遅刻)を認めつつ、相手の協力(待ってくれたこと)に感謝するという、非常に成熟したコミュニケーション方法です。
I’m so sorry I’m late. Thank you for waiting.
(遅れて本当にごめんなさい。待っていてくれてありがとう。)
この流れは、
- まず、遅刻したという自分の非をきちんと認めて謝る (
I'm sorry I'm late.
)。 - その上で、待っていてくれた相手の親切な行為に感謝する (
Thank you for waiting.
)。
となり、非常に誠実な気持ちが伝わります。ただ謝るだけでなく、感謝を添えることで、相手も「待っていて良かった」と感じることができ、場の雰囲気をポジティブに転換させる力があります。
注意!日本人がやりがちなNG英語「I made you wait.」
英語学習者が「待たせた」という日本語を直訳して、つい使ってしまいがちなのが I made you wait.
という表現です。しかし、これは絶対に避けるべきフレーズです。
動詞の make
には、「〜させる」という強制のニュアンスが含まれています。例えば、My mother made me clean my room.
は「お母さんは私に部屋の掃除をさせた」という意味になり、自分の意思とは関係なく強制された状況を表します。
そのため、I made you wait.
と言うと、「私があなたを(意図的に、無理やり)待たせた」というような、非常に高圧的で無神経な印象を与えてしまう可能性があるのです。悪気がないのに、相手を不快にさせてしまうかもしれない危険な表現です。
相手に申し訳ないという気持ちを伝えたい場合は、以下のような表現を使うのがずっと自然で丁寧です。
- Sorry for the wait. (待たせてごめんね)
- Sorry to have kept you waiting. (お待たせしてしまって申し訳ありませんでした)
Sorry to have kept you waiting.
は Sorry for the wait.
よりも丁寧な表現で、ビジネスの場面や目上の方に対して使うのに適しています。「(今までずっと)待たせ続けてしまってごめんなさい」という継続のニュアンスが含まれており、より深く反省している気持ちが伝わります。
まとめ
いかがでしたか?日本語の「お待たせしました」が持つ便利なニュアンスを英語で表現するには、少し頭を切り替えて、自分の伝えたい気持ちの核心は何かを考える必要があります。
- 基本は「感謝 (Thank you)」と「謝罪 (Sorry)」を分けて考える。
- 相手の行動に感謝するなら
Thank you for waiting / your patience.
- 自分の遅れを詫びたいなら
Sorry for the wait / I'm late.
- 謝罪と感謝のコンボで、より誠実な気持ちを伝えることができる。
- 直訳
I made you wait.
は強制的な響きがあるので絶対に使わない。
これらのポイントを押さえて、場面や相手、そして自分が伝えたい気持ちに合った表現を選べるようになると、あなたの英語はより自然で、心が伝わるものになるはずです。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、意識して使い分けることで、気持ちはもっと正確に伝わります。ぜひ、今日から意識して使ってみてくださいね。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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