「同僚が昇進した!」「残念ながら、あの人は左遷されたらしい…」
ビジネスシーンでは、人事に関する話題がつきものですよね。特にグローバルな環境では、相手のキャリアに関するポジティブなニュースも、デリケートな話題も、適切な言葉で表現するスキルが求められます。
今回は、そんな「昇進」や「左遷」にまつわる英語表現を、英語学習を再開した初心者の方にも分かりやすく、徹底的に解説していきます。
嬉しい「昇進」のストレートな表現から、ちょっと複雑で言いにくい「左遷」や「降格」の遠回しな伝え方まで、具体的な例文と丁寧な解説を豊富にご紹介します。それぞれの言葉が持つニュアンスの違いをしっかり理解して、ビジネス英会話のレベルアップを目指しましょう。
まずはこちらのYouTube動画で基本をサクッと確認し、さらに深く学びたい方はぜひこのブログを読み進めてみてくださいね。
嬉しい報告!「昇進」を表す英語表現
まずは、誰にとっても喜ばしい「昇進」に関する表現から見ていきましょう。フォーマルでストレートな言い方から、少しカジュアルで親しみを込めたものまで、状況に応じて使い分けられるようになると、コミュニケーションがより円滑になります。
基本の単語: promote vs. promotion
一番基本的で、ビジネスシーンで最も正式に使われるのが promote
という動詞です。「〜を昇進させる」という意味を持ち、会社が主語になる公式な文脈でよく使われます。
- promote: (動詞)〜を昇進させる
- promotion: (名詞)昇進
実際の会話の中では、「私が昇進した」「彼が昇進した」というように、昇進した本人が主語になることが多いため、受け身の形である be promoted
が非常によく使われます。これは客観的な事実を伝えるのに最適な形です。
名詞の promotion
は、「昇進する」という意味で get a promotion
という形で頻繁に使われます。
- 例文:
- I was promoted to section chief last month.(先月、課長に昇進しました。)
- She was promoted after years of hard work.(長年の頑張りが認められ、彼女は昇進しました。)
- Did you hear? John got a promotion!(聞きましたか?ジョンが昇進したんですよ!)
- The company will promote her to manager.(会社は彼女をマネージャーに昇進させる予定です。)
このように、be promoted to [役職名]
や get a promotion
の形で「〜に昇進する」と表現できることを覚えておきましょう。
カジュアルな表現: move up
もう少し気軽な言い方として move up
があります。「(会社組織の)上に行く」という視覚的なイメージで、同僚との会話など、インフォーマルな場面でよく使われる親しみやすい表現です。promote
よりも、本人の努力や意欲によって地位が上がっていくニュアンスが含まれることがあります。
- 例文:
- I heard you’re moving up! Congratulations!(昇進するんだってね!おめでとう!)
- He is working hard because he wants to move up in the company.(彼は会社で出世したいので、一生懸命働いています。)
- It’s a company where young people can move up quickly.(若手が早く出世できる会社です。)
比喩的な表現: climb the corporate ladder
日本語の「出世街道」や「出世の階段を上る」のように、英語にも面白い比喩表現があります。それが climb the corporate ladder
です。
corporate ladder
は「会社の階層(はしご)」を意味し、それを climb
(登る)することで、一歩一歩、努力して地位を上げていく様子を生き生きと表現します。キャリアアップへの強い意志や、長期的な努力の過程を示すのによく使われるフレーズです。
- 例文:
- She is very ambitious and wants to climb the corporate ladder quickly.(彼女はとても野心的で、早く出世の階段を上りたいと思っています。)
- It takes time and dedication to climb the corporate ladder in this industry.(この業界で出世するには時間と献身が必要です。)
- He started in the mailroom and climbed the corporate ladder to become CEO.(彼は郵便室係からスタートし、CEOにまで上り詰めました。)
デリケートな話題、「左遷・降格」を表す英語表現
ここからは、非常にデリケートな「左遷」や「降格」に関する表現です。
日本語でも「肩たたき」や「窓際」のように遠回しな言い方をすることが多いように、英語でも直接的な表現は極力避けられる傾向にあります。言葉の裏に隠された本当の意味や、その場の空気を読み取ることが、誤解を避ける上で非常に大切になります。
最も直接的な単語: demote
「降格させる」という意味で、promote
の正反対の言葉が demote
です。
- demote: (動詞)〜を降格させる
- demotion: (名詞)降格
ただし、この demote
は非常に直接的で、極めてネガティブな響きが強い言葉です。何か大きなミスを犯したり、不正行為や就業規則違反があったりした場合など、「罰として降格させる」という懲罰的なニュアンスで使われることがほとんどです。ネイティブスピーカーがこの言葉を聞くと、何かよほど深刻な問題があったのだと察するでしょう。
- 例文:
- He was demoted for a serious breach of company policy.(彼は重大な社内規定違反のために降格させられた。)
- After losing the company’s biggest client, the sales manager faced demotion.(会社最大手の顧客を失った後、その営業部長は降格の危機に直面した。)
日常の会話で「彼、降格されたらしいよ」といった噂話で気軽に使える単語ではないので、使い方には十分な注意が必要です。
遠回しな表現が一般的
demote
があまりに強すぎる言葉であるため、実際にはもっと穏やかで遠回しな表現が好まれます。これらは、人間関係への配慮から生まれた、いわば「大人の表現」と言えるでしょう。
be moved sideways: 横滑りの異動
sideways は「横へ」という意味です。つまり、「横に動かされる」=「横滑りの異動」を指します。
表向きは昇進も降格もない同じレベルの役職への異動ですが、実際にはキャリアの主流から外されたり、より重要度の低い部署へ移されたりする、実質的な左遷を意味することが多い表現です。会社側が直接的な降格を避けるために使うこともあります。
- 例文:
- He wasn’t demoted, but he was moved sideways to a less important department.(彼は降格されたわけではないが、あまり重要でない部署に横滑りさせられた。)
- She realized she had been moved sideways when her new role had fewer responsibilities.(新しい役職での責任が減っていることに気づき、彼女は自分が左遷させられたのだと悟った。)
be sidelined: 第一線から外される
スポーツで選手を試合に出さず、脇の sideline
(サイドライン)に待機させておくことから来ています。ビジネスシーンでは、重要なプロジェクトや意思決定の場から「重要なポジションから外される」「第一線から退かされる」といった、日本語の「窓際に追いやられる」に近いニュアンスで使われます。
- 例文:
- After the project failed, she was sidelined from the main team.(プロジェクトが失敗した後、彼女は主要チームから外された。)
- He felt sidelined during the important meetings.(彼は重要な会議の間、自分がないがしろにされていると感じた。)
皮肉の効いたイディオム
さらに、皮肉やブラックユーモアを交えた面白いイディオムも存在します。これらは、言葉の裏の本当の意味を知らないと、まったく逆の意味に誤解してしまう可能性があるので、ぜひ覚えておきましょう。
be kicked upstairs: お飾りの役職に祭り上げられる
upstairs
(上の階へ)に kick
(蹴り上げる)と聞くと、一見、景気の良い昇進のように思えます。しかし、これは「名目上は聞こえの良い役職に昇進させ、実際には現場から遠ざけることで実権や影響力を奪う」という非常に皮肉のこもった表現です。日本語の「祭り上げる」という感覚に非常に近いでしょう。
- 例文:
- To get him out of the way, they kicked him upstairs to a new advisory role.(彼を邪魔にならないようにするため、会社は彼を新しい顧問というお飾りの役職に祭り上げた。)
- She was kicked upstairs to a senior vice president title, but everyone knew she lost her power.(彼女は上級副社長の肩書に祭り上げられたが、実権を失ったことは誰もが知っていた。)
be put out to pasture: 閑職に追いやる
pasture
は「牧草地」のこと。年老いた家畜を仕事から解放して、のんびりと牧草地で過ごさせる、という元の意味から転じています。主に定年間近のベテラン従業員を、責任の軽い部署へ異動させたり、半ば引退のような形で退職させたりすることを指す、少し寂しい響きのある表現です。
- 例文:
- After 40 years of loyal service to the company, he was put out to pasture.(会社に40年間忠実に勤め上げた後、彼は閑職に移された。)
- The company has a reputation for putting older executives out to pasture.(その会社は年配の役員を閑職に追いやることで知られている。)
- と相手を傷つけたり、人間関係に角ネガティブな人事の話は、直接的に伝えると相手のプライドを傷つけたり、職場の士気を下げたり、人間関係に修復不可能な亀裂を生じさせたりすることがあります。これは日本でも英語圏でも、あるいは世界のどの文化圏でも共通している感覚です。そのため、相手の気持ちや場の空気を配慮して、できるだけ波風を立てないように穏便な表現が好まれるのです。これは、ビジネス上のリスク管理という側面もあります。不当解雇や降格で訴訟に発展することを避けるため、企業側が慎重に言葉を選ぶという背景もあります。ムが、どのような状況で、どんなニュアンスで使われているのかを感じ取る力は、円滑なコミュニケーションのために非常に重要になります。
まとめ
いかがでしたか?今回は、ビジネスシーンで使われる「昇進」と「左遷」に関する英語表現を解説しました。
- 昇進の場合は、
promote
やmove up
など、比較的ストレートな表現が多い。 - 左遷や降格の場合は、直接的な
demote
という言葉は非常に強い意味を持つため、通常はbe moved sideways
のような遠回しな表現が使われる。 be kicked upstairs
のような皮肉のこもったイディオムも存在し、言葉の裏のニュアンスを理解することが大切。
これらの表現を覚えておくだけで、海外のドラマや映画のビジネスシーンがより深く理解できたり、実際の会話で微妙なニュアンスを伝えたり、読み取ったりするのに役立つはずです。
一つ一つの言葉の背景にある文化や感覚を理解しながら、少しずつ英語の表現力を豊かにしていきましょう。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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