こんにちは!
別れ際に使う日本語の「お気をつけて」は、相手を気遣うとても便利で温かい言葉ですよね。相手が友人でも、職場の同僚でも、旅行に出かける人でも、この一言で「あなたのことを気にかけていますよ」という気持ちが伝わります。
ですが、これを英語で言おうとすると、「Take care? Be careful? どっちが適切なんだっけ?」と迷ってしまい、結局 “Good-bye” だけで済ませてしまった…なんて経験はありませんか。
その迷い、実はとても自然なことです。なぜなら、日本語の「お気をつけて」のように、あらゆる状況で使える万能な英語表現は、実は存在しないのです。英語では、状況や「何に」気をつけるのかによって、使うべき言葉が変わってきます。
この記事では、英語学習者が最も混同しやすい「お気をつけて」の英語表現について、その使い分けを徹底的に、そして詳しく解説していきます。この記事を読み終える頃には、自信を持って「お気をつけて」の気持ちを伝えられるようになっているはずです。
(基本をサクッと音声で確認したい方は、こちらのYouTube動画をご覧ください。動画で基本を掴んだ後、この記事でさらに詳しい解説と例文を読むと、理解が深まりますよ!)
なぜ英語では「お気をつけて」を一言で言えないの?
日本語の「お気をつけて」は、本当に便利な言葉です。
- 「(風邪などひかずに)お気をつけて」= 健康への気遣い
- 「(道中)お気をつけて」= 移動の安全への気遣い
- 「(足元に)お気をつけて」= 目の前の危険への注意
これらすべてをカバーできてしまいます。これは、相手の状況を察し、文脈で意図を伝える日本語の文化とも関係があるかもしれません。
一方、英語は「何に対して気をつけるのか」を、もう少し具体的に示す傾向があります。つまり、「何を気遣っているのか」を言葉にしてはっきり伝えるコミュニケーションを好むのです。
- 全般的な健康や無事を願うのか? (Take care)
- 目の前にある、あるいは予想される具体的な危険を知らせるのか? (Be careful)
- これからの旅行や移動の安全を祈るのか? (Have a safe trip)
このように、状況や相手への気持ちを少し意識するだけで、ネイティブスピーカーが使う自然な表現にグッと近づくことができます。難しく考える必要はありません。まずは「どんな気持ちを伝えたいか」で使い分ける、と考えると分かりやすいですよ。
基本の使い分け: Take care vs. Be careful
まずは、最もよく使われ、そして最も混同しやすいこの2つの表現の違いをしっかり押さえましょう。ここがクリアになれば、使い分けの8割はマスターしたも同然です。
1. Take care (元気でね / 気をつけてね)
これは、最も幅広く使える「お気をつけて」であり、基本的には「挨拶」の一種です。友人や同僚との普段の別れ際に、”Good-bye” や “See you” と同じような感覚で使われます。
ポイントは、「特定の危険」を指しているのではなく、「あなたの健康や無事を願っていますよ」「あなたがいない間も元気で過ごしてね」という全般的な気遣いや温かい気持ちを伝える挨拶である、という点です。
日本語の「元気でね」「じゃあね、気をつけて」といった、親しみを込めた別れの言葉に最も近いニュアンスを持っています。
<Take care を使う場面>
- 友人や同僚と別れる時(毎日会う相手にも使えます)
- “See you tomorrow.” (また明日。) “You too. Take care.” (あなたもね。気をつけて。)
- 電話やチャットを切り上げる時
- “Okay, I have to go now. Talk to youlater.” (じゃあ、もう行かないと。また後でね。) “Sure. Take care.” (もちろん。じゃあね。)
- しばらく会えなくなる時(週末前や休暇前など)
- “Have a nice weekend!” (良い週末を!) “Thanks, you too. Take care.” (ありがとう、あなたもね。気をつけて。)
- 相手が少し疲れていそうな時や、病み上がりの時
- この場合は「無理しないでね」「お大事にね」というニュアンスが強まります。
<例文>
- A: “I’m heading home now.” (今、家に帰るところです。)B: “Okay, take care.” (わかった、気をつけてね。)
- “It was nice talking to you. Take care.” (お話しできてよかったです。では、お気をつけて。)
- “Bye! Take care!” (じゃあね!元気でね!)
<豆知識: Take care of yourself>
“Take care” の後に “of yourself” をつけて、”Take care of yourself.” と言うこともよくあります。
“Take care” よりも少し丁寧で、相手をより深く気遣う「ご自愛くださいね」というニュアンスが強まります。
- 相手が明らかに疲れている時
- 体調を崩していた時
- これから大変なことに取り組むと分かっている時
- メールや手紙の結びの言葉として
こんな時に使うと、より温かい気持ちが伝わります。
2. Be careful (注意して / 気をつけて)
一方、”Be careful” は、「挨拶」ではなく、もっと具体的で直接的な「注意」を促す時に使います。日本語の「(危ないから)気をつけて!」に一番近い表現です。
目の前に物理的な危険がある場合や、これから行うことに対して注意すべき点があると分かっている場合に、「危ないから気をつけてね」とはっきり伝える表現です。”Take care” が持つ「挨拶」のニュアンスは薄く、強い「注意喚起」のニュアンスがあります。
例えば、毎日別れる同僚に毎日 “Be careful” と言っていたら、「え、私そんなに危なっかしい?」と不思議に思われてしまうかもしれません。
<Be careful を使う場面>
- 道が滑りやすそうな時(雨や雪の日など)
- 熱い飲み物や割れ物を渡す時
- 交通量が多い場所を渡る時
- 重い荷物を持っている時
- これから難しい作業や危険な作業をしようとしている時
<例文>
- “Be careful when you cross the street.” (道を渡る時は気をつけてね。)
- “The floor is wet. Be careful.” (床が濡れています。注意して。)
- “Be careful with that knife. It’s sharp.” (そのナイフ、気をつけて。鋭いですよ。)
- “Be careful not to catch a cold.” (風邪をひかないように気をつけてね。)
- (これは、”Take care” とも言えますが、”Be careful” を使うと「(風邪が流行っているから、油断しないで)本気で気をつけてね」という強い注意のニュアンスが出ます。)
<豆知識: Be careful + 前置詞>
“Be careful” は、前置詞とセットで使うと、何に注意すべきかをより明確にできます。
- Be careful with [モノ]: (~の扱いに気をつけて)
- “Be careful with that hot coffee.” (その熱いコーヒーに気をつけて。)
- Be careful of [人・モノ・事]: (~(という危険)に気をつけて)
- “Be careful of pickpockets.” (スリに気をつけて。)
- “Be careful of the cars.” (車に気をつけて。)
- Be careful [動詞]ing: (~しないように気をつけて)
- “Be careful walking on the icy road.” (凍った道を歩くときは気をつけて。)
使い分けのポイント(まとめ)
頭では分かっていても、とっさの場面で迷うかもしれません。そんな時は、この2つの質問を自分にしてみてください。
質問1:今、目の前に具体的な「危険」はあるか?
- YES → Be careful
- (例:道が凍っている、相手が熱いお茶を持っている)
- NO → Take care
- (例:いつもの帰り道、特に危険はない)
質問2:伝えたいのは「挨拶」か? それとも「注意」か?
- 挨拶 (元気でね、じゃあね)→ Take care
- 注意 (危ないよ、油断しないで)→ Be careful
「また明日」と別れる同僚には “Take care”、「雨で道が滑りやすいから気をつけて帰ってね」と伝えるなら “The roads are slippery. Be careful on your way home.” と覚えると分かりやすいですね。
旅行や移動の時の「お気をつけて」
では、基本の2つをマスターしたところで、応用編です。これから旅行や出張、帰省などで遠くへ移動する人には、何と言えばよいでしょうか。
この場合、”Take care” も間違いではありません(「旅先で体調に気をつけてね」という意味で使えます)。しかし、もっと「道中の安全」を願う気持ちに特化した、ぴったりの表現があります。
1. 定番: Have a safe trip / Have a safe journey (安全な旅を)
これが、旅行や出張など、長めの移動に出かける人にかける最も一般的で丁寧な表現です。「道中、お気をつけて」「安全な旅になりますように」という、移動の無事を祈る気持ちがしっかり伝わります。
“Trip”(旅行)も “Journey”(旅程、移動)も、このフレーズではほぼ同じ意味で使えます。あえて言うなら、”Journey” の方が少し長距離、あるいは目的地に着くまでの「道のり」そのものを指すニュアンスが強いですが、どちらを使っても問題ありません。
<例文>
- A: “I’m going to Osaka on a business trip tomorrow.” (明日、大阪へ出張なんです。)B: “Oh, really? Have a safe trip.” (そうなんですね。気をつけて行ってきてください。)
- “Enjoy your vacation in Hawaii! Have a safe trip.” (ハワイでの休暇楽しんでね!お気をつけて。)
- (空港で見送る時)”It was great seeing you. Have a safe journey home.” (会えてよかった。家まで気をつけて帰ってね。)
2. 応用編: 移動手段に合わせた表現
さらに具体的に、相手の移動手段に合わせて表現を変えることもよくあります。これができたら、かなり自然な英語に聞こえますし、相手も「お、分かってるな」と思ってくれるかもしれません。
- Drive safe (安全運転してね)車で出かける人に対して使います。”Have a safe drive” とも言えますが、”Drive safe” の方がより口語的で一般的です。文法的には “Drive safely” (安全に運転して)が正しいのですが、別れ際の決まり文句としては “Drive safe” が広く使われています。<例文>”It’s raining. Drive safe.” (雨が降ってるね。安全運転でね。)”Bye, honey! Drive safe!” (いってらっしゃい、あなた!安全運転でね!)
- Have a safe flight (安全な空の旅を)飛行機に乗る人に対して使います。空港での別れ際や、旅行前のメールなどで使えます。”Enjoy your flight” (フライト楽しんでね) と似ていますが、こちらは「楽しむ」ことより「安全」を願う気持ちが中心です。<例文>”Have a great time in Hawaii! Have a safe flight.” (ハワイ楽しんでね!安全なフライトを。)”Text me when you land. Have a safe flight.” (着いたら連絡してね。安全な空の旅を。)
- Watch your step (足元に気をつけて)これは「道中」というより、電車やバスを乗り降りする時、階段、段差がある場所などで使う、ピンポイントの注意表現です。”Be careful” に近いですが、特に「足元」への注意を促します。<例文>”Watch your step when you get off the train.” (電車を降りる時は足元に気をつけて。)”It’s dark in here. Watch your step.” (ここは暗いね。足元に気をつけて。)
- Stay safe (ご無事で)これは、台風、大雪、あるいはパンデミックや治安の悪い地域へ行く時など、特定の危険ではなく、その人を取り巻く環境全体からの安全・無事を願う表現です。「無事でいてね」という強い気持ちがこもります。<例文>”The typhoon is coming. Stay safe indoors.” (台風が来てる。家の中で無事でいてね。)
迷った時は “Take care” が最強!
ここまで色々な表現を見てきましたが、「やっぱり覚えるのが大変」「とっさの場面で、Have a safe tripだっけ? Drive safeだっけ?と迷ってしまいそう」と不安に思うかもしれません。
そんな時は、原点に戻って “Take care” を使いましょう。
前述の通り、”Take care” は相手への温かい気遣いを表す、最も幅広く使える便利な「挨拶」です。
もちろん、目の前で車が来ているのに “Take care” と言うのは不適切です(その時は “Be careful!” です)。
ですが、例えば旅行に行く人に対して “Take care” と言っても、決して間違いではありません。その場合は、「(旅行の安全)+(旅先での健康)+(全般的な無事)」をまとめて願うような、包括的な「気をつけてね」「元気でね」というニュアンスが伝わります。
自信を持って “Have a safe trip” と言えるのがベストですが、もし迷って黙ってしまうくらいなら、温かい気持ちを込めて “Take care” と言ってみてください。あなたの気遣いは、きっと相手に伝わります。
まとめ
日本語の便利な「お気をつけて」も、英語では状況によって使い分ける必要があることがお分かりいただけたかと思います。
最後に、状況別のおすすめフレーズをまとめます。
- 普段の挨拶として (元気でね):Take care
- 具体的な危険を知らせる時 (危ないよ):Be careful
- 旅行・長距離の移動 (道中気をつけて):Have a safe trip (または Have a safe journey)
- 車での移動:Drive safe
- 飛行機での移動:Have a safe flight
- 足元の注意:Watch your step
- 広範な安全を願う時 (ご無事で):Stay safe
まずはこの基本を覚えて、相手の状況や、あなたが伝えたい「気遣い」の種類を少しだけ意識して、使い分けに挑戦してみてください。
言葉を正しく選べるようになると、あなたの気持ちはより深く、より正確に伝わるはずです。英語でのコミュニケーションが、もっと楽しくなりますよ!

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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