英文法を学ぶ前に:英語の特徴

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英文法を学ぶ前に最初に理解してほしいことがあります。英語は日本語とはかなり異なる文法ルールで成り立っています。ですから日本語の常識をそのまま英語に持ち込もうとしないでください。混乱のもとになります。

しかしそうは言っても、普段当たり前に日本語を使っている私たちからすると、何が日本語の常識なのかを理解していないことが多いと思います。ですから大きなものを今回説明します。

英語の特徴

1.英語では語順が重要である。

おそらく多くの日本人が、この事を聞いたことはあるけれども、いまいち理解していないと思います。なので少し説明します。

文というのは普通、「誰々は、何々を、どうする」という形になります。例えば以下を見てください。

日本語1)人々は リンゴを 食べる。

実は日本語の場合、語順がかなり自由なのです。試しに上の例文の語順を変えてみましょう。

日本語2)リンゴを 人々は 食べる。
日本語3)食べる リンゴを 人々は。
日本語4)リンゴを 食べる 人々は。

日本語1と意味が変わっていませんよね? なぜ日本語の場合は文の意味が変わらないかと言うと、「助詞」の働きがあるからです。

文では「誰々は」に相当するものを主語、「何々を」に相当するものを目的語と言います。日本語では「~は」とあれば主語、「~を」とあれば目的語と分かるので、語順を入れ替えても文の意味は変わらないのです。

試しに助詞を入れ替えてみましょう。

日本語5)リンゴは 人々を 食べる。

いかがでしょうか? 文の意味がガラリと変わってしまいました。リンゴが人々を食べるなんてホラーですよね?

では、英語を見てみましょう。「人々はリンゴを食べる。」はこうなります。

英語1)People eat apples.

(apple になぜsが付いているかはややこしいので別のところで説明します。)

さて語順を入れ替えてみましょう。

英語2)Apples eat people.

「リンゴは日本人を食べる。」という怖い意味になりました。(笑)

気が付かれたでしょうか? 日本語の助詞の働きを、英語では語順が行っているのです。ですから英語では「語順が大切」と言われているのです。

英語の文は語順で意味が決まる

時々、「英語なんて適当に単語を並べれば意味が通じる」という方がいますが、それが間違っていることは、もうこの時点でお分かりでしょう。

英語では語順が大切で、単語の並べ方によって文の意味が決まります。単語をどのように並べれば文の意味がどのようになるのか、それを決めるのが「英文法」なのです。そしてその基本は「中学英文法」にあるのです。

日本で英語を勉強して英語を話せるようになった方の多くが「中学の英文法は大切だよ」と口にしていますが、こういう訳なのです。

2.英語は数えられるかどうかを異常に気にする。

日本人が英語を学んでいて理解しにくいのが、英語は数えられるかどうか、また数えられるなら単数か複数か、を異常に気にする!ということです。

物の名前を英文法では「名詞(めいし)」と言いますが、数えられる名詞は必ず、頭に a や語尾に s をつけなければいけません。ネイティブは子供の頃からこれらの使い分けを徹底して教えられます。

たとえば、以下の2つの英文の違いをお分かりでしょうか?

1) I like dogs.
2) I like dog.

dog の後に複数形のsがあるかどうかだけです。数えられる名詞を複数形で表すときは、そのもの全般を表しますので、1の dogs は「犬全般」を意味し、「私は犬が好きです。」という、日本人が普通に想像する意味になります。

一方、2の dog は、普通なら数えられる名詞にもかかわらず複数形のsが無いので、数えられない名詞扱いになっています。英語で動物を数えられない名詞として扱うのは、「肉」の時です。つまり、「私は犬の肉が好きです」となってしまいます(笑)

dogs と dog の違い

なぜ英語は極端なまでに数えられるかどうかを気にするのでしょうか? 実は誰もきちんと説明できません。なぜなら、「各ヨーロッパ言語の元となった昔の言語である印欧祖語が、『たまたま』そうだったので、ヨーロッパの言語は皆その影響を受けている」としか言いようがないからです。

一方、日本語は『たまたま』その影響を受けていません。ですから、数えられるかどうかを大して気にしないのです。そのため逆に、日本人が英語を学ぶ際には、このことで非常に苦労するのです。

というわけで、英語では、数えられるかどうか、単数か複数か、で微妙なニュアンスの使い分けをしています。ですから、英語を習得するのであれば、この微妙なニュアンスの使い分けも「必ず」理解しなければいけないのです。

3.英語はスペルと発音が一致しないことが多い。

これは本当に大変です。英語が簡単だというヨーロッパの人々も困っています。なぜならヨーロッパでも普通、スペルと発音は規則的だからです。ですから最後は、英単語ごとに発音を覚えなければいけません。

例えば、鍵の key は「キー」とkを読みますが、knife は「ナイフ」であり、頭のkは読みません。英語のスペルと発音の関係は、ある程度の規則性はありますが、例外が非常に多いのです。

スペルと発音の違い

なぜこんなことになってしまったのかと言うと、いくつかの理由があります。しかし、一番大きいのは、「話し言葉は変化しやすいのに、書き言葉は変化しにくい」ということでしょう。日本語の「私は」を「私わ」と読むのと同じです。

普通は、発音の変化に従って、書き言葉も追いかけるように変わっていきます。日本語も英語もそうです。しかし英語の場合、活版印刷が発明されたために、書き言葉であるスペルが固定化してしまい、変わりにくくなってしまったのです。

更に英語ではその後、「大母音推移」という、母音「アイウエオ」の発音が大きく変化するという、英語の歴史上最大の事件があったのです。

このため、例えば、Aを「ア」または「アー」と読んでいたのを、「ア」または「エイ」と読み方が変わってしまったのです。日本人はローマ字を学びますが、昔の英語はローマ字と同じ読み方だったので、スペルと発音は一致していたのです。

ですから、day は昔「ダーイ」と読んでいたのが、現在では「デイ」と変わってしまったのです。

発音の変化

そしてこの「大母音推移」ですが、西暦1400年頃から1600年頃に渡って起きたことは分かっているのですが、その原因が分からないのです。これには研究者がいまだに頭を悩ませています。

結局、ひたすら発音を覚えるしかないのですが、ある程度の法則性はありますので、過度に心配する必要はありません。

文法の重複が多い

通常、文法というのはある程度体系化されており、一つのことを表すのに複数の表現方法が存在することはあまりありません。なぜかと言うと、さまざまな理由で歴史的に淘汰されていくからです。

ところが英語には同じことを表現する重複が多く見られます。

いくつか例を挙げます。

比較や最上級を表す方法が2種類

er-est 型と more-most 型です。tallermore beautiful のように使い分けます。

er-est 型は英語本来の用法で、more-most 型はフランス語から入ってきた用法です。でもひとつで良いと思いませんか?混乱するだけです。実際、ネイティブも2つの用法を地域によって好きずきに使っていました。

最終的に、統合する段階で、短い単語は er-est 型、長い単語は more-most 型で使い分けることになりましたが、本来はどちらかだけで良いはずなのです。

個人的には er-est 型に統一してほしかったです。

動詞を名詞にする方法が2種類

to不定詞と動名詞です。

I want to swim.(私は泳ぎたい)

I like swimming.(私は泳ぐことが好きです)

これらは歴史的に別々に発展してしまったため、気が付いたら重複していました。

最終的には、to不定詞は未来志向、動名詞は現在過去志向と使い分けることになりましたが、これも本来はひとつだけで十分です。to不定詞は制約が多いので、おそらく動名詞に統一したほうがシンプルになると思います。

ここで挫折する方は多いので、統一すれば多くの学習者が救われるのですが。

所有を表す方法が2種類

of と ‘s です。厳密には人称代名詞の所有格をいれれば3種類ですが。

His mother.(彼のお母さん)

Mike‘s mother.(マイクのお母さん)

The door of the house.(その家のドア)

‘s が本来の英語の形で、of はフランス語からやってきた形です。

現在では、人間を含む生き物は ‘s、生物以外は of という使い分けが一応存在しています。なお、人称代名詞が使えるときは優先的に使います。

そうはいっても、緩いルールですので、よく例外を見掛けます。

未来を表す形が2つ以上

未来を表すと言うと will と be going to が思いつくでしょうか。しかし他にも、現在進行形を用いたり、現在形をそのまま使ったり、be about to なんていう表現もあります。英語学習者としては混乱するところです。

活用形の統合が多い

英語は単語の語尾を活用(変形)させることでその単語の働きを変えることが可能です。ヨーロッパの言語はだいたいそのようになっています。しかし英語は他の言語に比べ、別々の機能の形を一つに形に統合したものが目立ち、同じ形なのに複数の機能を持つことがよくあります。

動名詞と現在分詞の ing

He is sleeping.(彼は眠っています。)
I have a sleeping bag.(私は寝袋を持っています。)

どちらの単語も ing で終わります。慣れるまでは結構混乱します。もともと動名詞は ende でした。発音が ing と似ているので最終的に同じになってしまいました。

だから文の中での使われ方や意味で、どちらなのかを判断せねばなりません。

過去形と過去分詞の ed

I surprised him.(私は彼を驚かせた。)
I was surprised by him.(私は彼に驚かせられた。)

どちらの単語も ed で終わります。語順でどちらなのか分かりますが、慣れるまでは結構混乱します。昔の英語の過去形や過去分詞はさまざまな形がありましたが、過去形で de、過去分詞で ed というのがありましたので、それらの単語が一つになったのでしょう。

過去形と仮定法の were

They were tired.(彼らは疲れていました。)
If I were you, I wouldn’t do it.(もし僕が君ならば、それはやらないだろう。)

昔の英語の仮定法にはさまざまな活用形がありました。しかし普通の過去形と形が似ていたので、普通の過去形の形に統合されてしまいました。その生き残りが were なのです。主語が私の時でも were を使うのですが、最近はネイティブも過去形と同じ was を使うようになってきました。これは日本語の「ら抜き言葉」みたいな物です。

本来の形:
If I were a bird, I would fly to you(もしも私が鳥ならば、あなたのもとに飛んでいくのに)
最近の文法が崩れた形:
If I was a bird, I would fly to you(もしも私が鳥ならば、あなたのもとに飛んでいくのに)

今回は以上です。

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