「うわっ、今のナシだわ…」「ちょっと引く…」
相手の言動にがっかりしたり、その場の空気が凍りついたり。日本語の「ドン引き」は、そんな複雑な心境を一言で表せる、とても便利な言葉ですよね。誰しも一度は、そんな場面に遭遇したことがあるのではないでしょうか。
でも、この「ドン引き」という絶妙なニュアンス、英語で伝えようとすると、途端に言葉に詰まってしまう…そんな経験はありませんか?
それもそのはず、実は日本語の「ドン引き」に100%ピッタリ一致する英単語は存在しないのです。
だからこそ、自分がその時感じた「気持ちの種類」に合わせて、いくつかの表現を上手に使い分けることが、自然な英語への近道になります。
この記事では、英語学習を始めたばかりの方でもすぐに使える、基本的な3つの「ドン引き」表現を、たくさんの具体的な例文とともに、どこよりも詳しく解説していきます。
手軽に基本を知りたい方は、こちらのYouTube動画がおすすめです。
さらに深く、様々な状況で自分の気持ちを的確に表現できるようになりたい方は、ぜひこの記事を最後までじっくり読んでみてくださいね。
「ドン引き」は感情のグラデーションで表現しよう
英語で「ドン引き」を表現する最大のコツは、「自分は、どんな気持ちになったか?」を具体的に考えてみることです。感情を細かく分析する、と考えると少し難しく聞こえるかもしれませんが、ポイントはシンプルです。
- 見ていて痛々しい、こっちが恥ずかしくなる気持ち?
- ただただ気まずくて、その場から逃げ出したくなる感じ?
- それとも、相手への好意が一瞬で消え去り、幻滅してしまった?
このように、あなたの心の中にある感情のグラデーションによって、使うべき言葉は自然と変わってきます。適切な言葉を選ぶことで、相手に自分の気持ちがより正確に伝わり、誤解のないスムーズなコミュニケーションが生まれます。
今回は、その代表的な3つの表現を、それぞれの違いを意識しながら見ていきましょう。
1. 痛々しい・見てて恥ずかしいドン引きは ‘Cringey’
誰かの言動が「痛いな」「寒いな」と感じたり、見ているこちらが恥ずかしくなってしまったりするようなドン引き。そんな時にピッタリなのが ‘cringey’(クリンジィ)という形容詞です。いわゆる「見てるこっちが恥ずかしい」という、英語で言うところの “second-hand embarrassment” に近い感覚です。
最近ではSNSなどでも頻繁に使われる、比較的カジュアルで現代的な言葉です。
どんな時に使う?
- 全然面白くない、空回りしているジョークを聞いた時
- 人前で大声でイチャイチャしすぎているカップルを見た時
- SNSでの痛々しい自慢話や、大げさなポエムを読んでしまった時
- 昔の自分の卒業アルバムの写真や、若い頃に書いたブログを見て、恥ずかしくなった時
- カラオケで、明らかに音を外しているのに気持ちよさそうに歌っている人を見た時
例文で見てみよう
That was cringey.
今の(発言や行動)は痛々しかったな。
His joke was so cringey that no one laughed.
彼のジョークはあまりに寒すぎて、誰も笑わなかった。
I watched a video of my younger self singing. It was super cringey!
若い頃の自分が歌っているビデオを見たんだけど、すごく痛々しかった!
It’s cringey when my dad tries to use youth slang.
お父さんが若者言葉を使おうとすると、痛々しいんだ。
Honestly, their public display of affection was a little cringey.
正直に言うと、彼らの人前でのイチャつきは少し痛々しかった。
2. 気まずい・居心地が悪いドン引きは ‘Awkward’
‘Cringey’ ほどの「痛々しさ」はないけれど、その場の空気がシーンと静まり返ってしまったり、なんとなく居心地の悪さを感じたりする全般的な「気まずさ」。これを表現するのが ‘awkward’(オークワード)です。
これは非常に幅広く使える基本単語なので、絶対に覚えておきたい表現の一つ。ドン引きするような言動が原因で生まれた「気まずい状況」そのものを指すのに最適です。
Cringey vs. Awkward の違いは?
- Cringey: 誰かの「行動」が原因で感じる、痛々しさや恥ずかしさ。(原因に焦点)
例:彼の寒いジョーク(cringey) - Awkward: その結果として生まれる「状況」が引き起こす、居心地の悪さ。(結果に焦点)
例:ジョークの後の気まずい沈黙(awkward)
どんな時に使う?
- 会話が急に途切れて、気まずい沈黙が流れた時
- エレベーターでそれほど親しくない上司と二人きりになってしまった時
- 久しぶりに会った人の名前を間違えて呼んでしまった時
- 元カレ・元カノとスーパーでばったり会ってしまった時
- 間違った相手にプライベートなメッセージを送ってしまった時
例文で見てみよう
There was an awkward silence after his comment.
彼のコメントの後、気まずい沈黙が流れた。
I felt awkward because I was the only one not wearing a suit.
私だけスーツを着ていなかったので、居心地が悪かった。(気まずかった)
It’s always awkward when you forget someone’s name.
誰かの名前を忘れてしまうと、いつも気まずいものだ。
He started talking about money at the party, which made the situation awkward.
彼がパーティーでお金の話をし始めたので、その場の状況が気まずくなった。
I said goodbye to my friend, but we both walked away in the same direction. It was so awkward.
友達にさよならを言ったのに、二人とも同じ方向に歩き出してしまった。すごく気まずかった。
3. 気持ちが冷める・幻滅するドン引きは ‘A turn-off’
それまで良いと思っていた相手の、ある言動がきっかけで、一気に気持ちが冷めてしまう。「幻滅した」「がっかりした」というニュアンスのドン引きには、’a turn-off’(ア・ターン・オフ)という名詞表現が使えます。
まるで、今まで点いていた好意のスイッチが「オフ」に切り替わるようなイメージです。これは自分の価値観や、どうしても受け入れられない「地雷」のようなものを伝えるのに便利な言葉で、特に恋愛関係や人間関係について語る際によく使われます。
どんな時に使う?
- 店員さんへの横柄な態度を見た時
- 食べ方が汚いのを見てしまった時(くちゃくちゃ音を立てるなど)
- 会話中に自慢話ばかり聞かされた時
- 約束を平気で破られたり、時間にルーズだったりした時
- 衛生観念が合わないと感じた時
例文で見てみよう
Being rude to the staff is a big turn-off for me.
店員さんに失礼な態度をとるのは、私にとってはすごく幻滅するポイントです。
He was a nice guy, but his constant complaining was a turn-off.
彼は良い人だったけど、絶え間ない愚痴にはウンザリした。(気持ちが冷めた)
For me, dishonesty is a major turn-off in any relationship.
私にとって、不誠実であることはどんな関係においても一気に気持ちが冷める要因です。
I find arrogance to be a real turn-off.
私は傲慢な態度は本当に幻滅すると思う。
What’s your biggest turn-off on a first date?
初デートで一番がっかりする(ドン引きする)ことは何ですか?
【もっと知りたい】その他の「ドン引き」関連表現
基本の3つ以外にも、状況によって使える便利な表現がいくつかあります。表現の幅が広がると、会話がもっと豊かになりますよ。
- That’s weird. (なんか変だよ、気味が悪い)
少し不気味さや、理解できない奇妙さを感じるようなドン引きに使えます。
He was staring at me without blinking. It was weird.
彼はまばたきもせずに私をじっと見ていた。気味が悪かった。
She collects insects and keeps them in her room. I think that’s a bit weird.
彼女は昆虫を集めて部屋に置いている。少し変わっている(引いてしまう)と思う。 - I’m speechless. (呆れて言葉も出ない)
信じられない言動に、怒りや驚きで何も言えなくなってしまった時に使えます。
She blamed me for her mistake. I was speechless.
彼女は自分のミスを私のせいにした。呆れて言葉も出なかった。
He told me he spent his entire salary on a game. I was speechless.
彼が給料を全部ゲームに使ったと聞いて、呆れて何も言えなかった。 - That’s gross. (キモい、不潔だ)
生理的な嫌悪感を伴うドン引きに使います。衛生的に受け付けない、という強い拒否感を表します。
He didn’t wash his hands after using the bathroom. That’s gross.
彼はトイレの後に手を洗わなかった。不潔だ。
Don’t talk with your mouth full. It’s gross.
口に物を入れたまま話さないで。行儀が悪いよ。(見ていて不快だ)
まとめ:感情に合わせて言葉を選んでみよう
今回は、日本語の「ドン引き」を英語で表現するための、核心的な3つのフレーズについて、深く掘り下げてみました。
- 痛々しい・寒い感じなら → Cringey
- 気まずい・居心地が悪いなら → Awkward
- 幻滅して気持ちが冷めたなら → A turn-off
一番大切なのは、自分がその時「どう感じたか」という気持ちのニュアンスに正直になり、それに最も近い言葉を選び取ることです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、焦る必要はありません。まずは海外のドラマや映画を見ている時に、「あ、今の状況は awkward かな?」「このキャラクターの行動は cringey だな」と心の中で分析してみることから始めてみてください。
そうやって少しずつ練習を重ねることで、あなたの繊細な感情を英語で豊かに表現する楽しさを、きっと感じられるようになるはずです。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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