英語の勉強を再開したとき、多くの人が「あれ、どう違うんだっけ?」と立ち止まってしまうのが「some」と「any」の使い分けではないでしょうか。
これらは日常会話で頻繁に登場する基本的な単語ですが、日本語の「いくつか」や「何か」と一対一で対応しないため、日本語の感覚で使おうとすると不自然に聞こえてしまうことがあります。これが、多くの日本人学習者がつまずきやすい理由です。
この記事では、そんな「some」と「any」の謎を、基本ルールからネイティブが持つ「言葉の感覚(フィーリング)」まで、徹底的に解き明かしていきます。この2つの単語をマスターするだけで、あなたの英語は教科書的な表現から一歩進んで、より自然で生き生きとしたものに変わるはずです。
まず、基本をサクッと5分で理解したい方は、こちらのYouTube動画をご覧ください。要点が簡潔にまとまっています。
そして、このブログでは動画の内容をさらに深掘りし、「なぜそうなるのか?」という理由や、会話の場面ごとの微妙なニュアンスの違いまで、豊富な例文と共にじっくり解説していきます。
ルールを覚えるだけでなく、その背景にある感覚を掴むことで、自信を持って「some」と「any」を使いこなし、英語でのコミュニケーションをもっと楽しみましょう!
大原則:someとanyが持つ「言葉の感覚」
個別のルールに入る前に、最も大切な「some」と「any」の根本的なイメージの違いを掴んでおきましょう。これはコンパスのようなもので、迷ったときにいつでも立ち返れる指針になります。
- 「some」の感覚:「ある」という存在感と限定感。話者の心の中には、具体的な量や数は分からなくても、「確かに存在する」というポジティブな感覚があります。「ここに、これだけあるよ」と、ぼんやりとでも特定の範囲を指し示しているイメージです。まるで、目の前のボウルにいくつかのリンゴが入っているのを指しているような感覚です。
- 「any」の感覚:「あるかないか分からない」不確かさと、「何でもOK」という開放感。話者は、存在を確信しておらず、「そもそも、あるの?」と中立的に尋ねているイメージです。また、肯定文で使われる際は、「制限なく、どれでも」という、あらゆる選択肢に扉が開かれているような感覚を持ちます。これは、蓋の閉まった箱の中身を尋ねたり、ビュッフェで「どれでも好きなものをお取りください」と言ったりする感覚に似ています。
この「存在を肯定するsome」と「不確か・無制限のany」という感覚を頭の片隅に置いておくだけで、これから学ぶルールが格段に理解しやすくなります。
基本ルール①:肯定文での使い分け
まずは、何かを「~です」「~します」と肯定的に述べるときのルールです。
原則は「some」:「いくつかの」「いくらかの」
肯定文では、原則として「some」を使います。「ゼロではない、ある程度の量や数が存在する」ことを示します。漠然と「犬が好きです(I like dogs.)」と言うのとは違い、「公園で犬を何匹か見ました(I saw some dogs in the park.)」のように、特定の存在に言及する際に使われます。
- I have some questions about the report.
- (そのレポートについていくつか質問があります。)
- She needs some time to think about it.
- (彼女はそれについて考える時間がいくらか必要です。)
- We bought some fresh vegetables at the market.
- (私たちは市場でいくつか新鮮な野菜を買いました。)
- There is some water in the bottle.
- (ボトルにいくらか水が入っています。)
- He showed me some pictures from his trip.
- (彼は旅行の写真を何枚か見せてくれました。)
例外の「any」:「どんな~でも」
通常は否定文や疑問文で使われる「any」ですが、肯定文で使われると特別な意味を持ちます。それは、「(選択肢の中で)どんな~でも」「誰でも」「どれでも」という「制限のない自由な選択」です。これは非常に強力で便利な表現です。
- You can take any seat you like. There are many available.
- (どの席でも好きな席に座っていいですよ。たくさん空いています。)
- Ask any of our staff if you need help.
- (助けが必要な場合は、どのスタッフにでも尋ねてください。)
- You can choose any topping for your pizza.
- (ピザのトッピングはどれでも選べますよ。)
- Any advice you can give me would be helpful.
- (あなたがくれるどんなアドバイスでも助かります。)
- “Which bus should I take?” “Any bus will take you to the station.”
- 「どのバスに乗ればいいですか?」「どのバスでも駅に行きますよ。」
基本ルール②:否定文 vs. 疑問文
次に、「~ではない」という否定文と、「~ですか?」と尋ねる疑問文での使い方です。ここが「some」と「any」の使い分けのメインステージであり、ネイティブ感覚を掴む鍵となります。
否定文では「any」:「全く~ない」
否定文(not…)では、基本的に「any」を使います。「not any」の形で「全く~ない」「少しも~ない」「一つも~ない」という「ゼロ」の状態を強調します。これは非常に明確な否定の表現です。
- I don’t have any money with me right now.
- (今、私はお金を全く持っていません。)
- There aren’t any good movies on TV tonight.
- (今夜はテレビで良い映画が一つもありません。)
- She didn’t show any interest in the project.
- (彼女はそのプロジェクトに少しも興味を示しませんでした。)
- Please don’t make any noise. The baby is sleeping.
- (どうか物音を立てないでください。赤ちゃんが寝ています。)
疑問文でも「any」:「何かありますか?」
疑問文でも、基本的には「any」を使います。これは、話者が「そもそも存在するのかどうか分からない」ニュートラルな状態で尋ねているからです。「一つでもありますか?」「少しでもありますか?」という、純粋な問いかけの気持ちです。
- Do you have any questions for me?
- (何か私への質問はありますか?)
- Is there any coffee left in the pot?
- (ポットにコーヒーは残っていますか?)
- Did you buy any souvenirs on your trip?
- (旅行でお土産を何か買いましたか?)
- Are there any parks near your house?
- (あなたの家の近くに公園はありますか?)
疑問文で「some」を使う特別なケース
ここが一番面白いポイントであり、マスターすると会話がぐっと自然になります。疑問文なのに「some」が使われる場合があります。これは、ただ質問しているのではなく、話者の特別な「気持ち」が込められているからです。
ケース1:相手への「提案・申し出」
相手に何かを勧めるとき、「Would you like…?」や「Do you want…?」といった形で「some」を使います。「ここに飲み物があるけど、いかが?」という、存在を前提とした親切な申し出であり、相手が「はい」と答えることを期待しているニュアンスが含まれます。
- Would you like some coffee or tea?
- (コーヒーか紅茶はいかがですか?)
- Do you want some more cake? It’s delicious.
- (ケーキをもう少し食べますか?とても美味しいですよ。)
- Why don’t you have some cookies with your milk?
- (牛乳と一緒にクッキーはいかがですか?)
もしこれを “Would you like any coffee?” と言ってしまうと、「(もしうちにあるか分からないけど)コーヒーとかどう?」といった、少し奇妙で自信なさげな響きに聞こえてしまいます。
ケース2:相手への「依頼」
相手に何かをお願いするとき、「Can I have…?」や「Could you give me…?」といった形で「some」を使います。相手がそれを持っている(または提供できる)と期待しており、それを分けてほしい、という気持ちが込められています。
- Can I have some water, please? I’m so thirsty.
- (お水をいただけますか?とても喉が渇いていて。)
- Could you give me some advice on this matter?
- (この件についていくつかアドバイスをいただけますか?)
- Could you lend me some money until tomorrow?
- (明日までいくらかお金を貸していただけませんか?)
ケース3:「はい」という答えを期待している
話している相手の様子や状況から、「きっとそうだよね?」と肯定的な答えを予想しながら尋ねる場合にも「some」を使います。純粋な疑問ではなく、確認に近いニュアンスです。
- (友人が必死にカバンの中を探しているのを見て)Are you looking for something?
- (何か探し物をしているの?)
- (友人が大きな買い物袋を持っているのを見て)Did you buy some new clothes?
- (何か新しい服を買ったの?)
- (プロジェクトに問題が発生していると聞いて)So, you’ve run into some problems, haven’t you?
- (それで、いくつか問題に突き当たっているんだね?)
名詞の種類との関係
「some」と「any」は、後ろに続く名詞が「数えられる」か「数えられない」か、また「単数」か「複数」かによっても振る舞いが変わります。ここは少し複雑ですが、整理すれば大丈夫です。
数えられる名詞 (Countable Nouns)
リンゴ(apples)、本(books)、友達(friends)など、一つ、二つと数えられる名詞です。
- 複数形の場合:これまで見てきた基本ルール通りです。
- 肯定文:I have some apples. (いくつかリンゴを持っています。)
- 否定文:I don’t have any apples. (リンゴを一つも持っていません。)
- 疑問文:Do you have any apples? (リンゴはいくつかありますか?)
- 申し出:Would you like some apples? (リンゴはいかがですか?)
- 単数形の場合:ここが少し注意の必要なポイントです。
- 通常は
a
/an
を使います。「不特定のひとつ」を指します。I need a pen.
(ペンが一本必要です。)
some
+ 単数名詞:これは「(誰だか・どれだか特定はしないけど)ある一つの」という特別なニュアンスで使います。Some person called for you.
(どなたかからあなたに電話がありましたよ。)
any
+ 単数名詞(肯定文):これは「どれでも一つの」という意味です。Pick any card.
(どのカードでも一枚引いてください。)
- 通常は
数えられない名詞 (Uncountable Nouns)
水(water)、情報(information)、アドバイス(advice)、お金(money)など、形が不確かで数えられない名詞です。日本語では数えられても英語では数えられないもの(information
, advice
など)が多いので注意が必要です。基本的なルールは「数えられる名詞の複数形」と同じです。
- 肯定文:I need some information about the hotel. (そのホテルに関する情報がいくらか必要です。)
- 否定文:I don’t have any time to waste. (無駄にする時間は全くありません。)
- 疑問文:Is there any news about the accident? (その事故に関するニュースは何かありますか?)
- 依頼:Can I have some water? I’m thirsty. (お水をいただけますか?喉が渇いています。)
「some」と「any」の仲間たち
somebody
, anything
, somewhere
など、-body, -one, -thing, -where が付く言葉たちも、元の「some」と「any」と全く同じルールで使い分けができます。これを理解すると、一気に語彙が広がります。
someの仲間 (存在を肯定) | anyの仲間 (不確かさ・ゼロ・自由選択) | |
人 (who) | somebody / someone (誰か) | anybody / anyone (誰も/誰か/誰でも) |
物 (what) | something (何か) | anything (何も/何か/何でも) |
場所 (where) | somewhere (どこか) | anywhere (どこにも/どこか/どこでも) |
例文で見てみよう
- Somebody left their umbrella. (誰かが傘を忘れました。) vs. I didn’t see anyone. (誰にも会いませんでした。)
- Is anybody home? (誰かいますか?) vs. Anyone can join the club. (誰でもそのクラブに入れます。)
- I need something to drink. (何か飲むものが必要です。) vs. I don’t need anything from the store. (その店から何も必要ありません。)
- Do you want anything to eat? (何か食べるものは欲しいですか?) vs. You can eat anything you want. (好きなものを何でも食べられますよ。)
- Let’s go somewhere quiet. (どこか静かなところへ行きましょう。) vs. I couldn’t find my keys anywhere. (どこにも鍵が見つかりませんでした。)
まとめ:もう迷わない!使い分けマップ
最後に、ここまでの内容を一枚の地図のようにまとめてみましょう。会話の中で迷ったら、この思考プロセスを思い出してください。
- まず、文の種類は?
- 肯定文か?
- → 原則「some」(いくつかの、いくらかの)
- → 例外「any」(どんな~でも)
- 否定文か?
- → 「any」を使う (全く~ない)
- 疑問文か?
- → 話者の気持ちは?
- 中立的な質問(あるかどうか分からない) → 「any」(何かありますか?)
- 提案・依頼・「はい」を期待 → 「some」(~はいかが?、~をいただけますか?)
- → 話者の気持ちは?
- 肯定文か?
この思考プロセスを何度か繰り返すうちに、頭で考えなくても感覚的に「some」と「any」が口から出てくるようになります。
英語の学習は、こうした小さな「わかった!」の積み重ねです。まずは、映画や音楽の中で some
と any
がどのように使われているか意識して聴いてみてください。そして、間違いを恐れずに、自分で文章を作って使ってみましょう。
今回の記事が、あなたの英語学習の旅における、確かな一歩となることを心から願っています。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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