「もう諦めた!」と日本語では一言で済むこの言葉、英語では伝えたい気持ちや状況によって様々な表現があることをご存知でしたか?
英語学習を進めていくと、こうした細かなニュアンスの違いが、より自然で豊かなコミュニケーションの鍵になることに気づきます。適切な言葉を選ぶことで、自分の気持ちをより正確に、そして相手の心に響くように伝えることができるのです。
この記事では、英語学習を始めたばかりの方でも分かりやすいように、「諦める」にまつわる英語表現を、それぞれの言葉が持つ感情の温度差や使われる場面に焦点を当てながら、例文付きで詳しく解説していきます。
まずは、こちらの動画で基本をサクッと掴むのがおすすめです。
動画で大まかなイメージを掴んだら、この記事でさらに深く学んでいきましょう。表現の引き出しが増えると、英会話はもっと楽しくなりますよ。
基本の「諦める」 vs. 期待を手放す「諦める」:give up vs. give up on
give up:挑戦や習慣をやめる(=降参する)
「諦める」と聞いて、多くの人が最初に思い浮かべるのが give up
ではないでしょうか。これは、続けていたことや挑戦していたことを「これ以上は無理だ」と感じてやめる、つまり「降参する」というニュアンスを持つ最も一般的な表現です。努力したけれど、困難に直面して断念する、そんな場面を想像すると分かりやすいでしょう。
使い方のポイントは、give up
の後ろに「〜すること」を意味する動詞のing形を続けることです。
例文:
- She gave up playing tennis after a serious injury.
- 彼女は深刻な怪我の後、テニスをすることを諦めた。(テニスの練習や試合への出場をやめた)
- I’ve almost finished the puzzle, so I can’t give up now.
- もう少しでパズルが完成するから、今諦めるわけにはいかない。
- He gave up looking for his lost keys after an hour.
- 彼は1時間探した後、なくした鍵を見つけるのを諦めた。
give up on:人や物事への期待を手放す(=見限る)
give up
に前置詞の on
がつくだけで、意味合いがぐっと深くなります。give up on
は、単に行動をやめるのではなく、人や物事、夢などに対して「もう期待しない」「見限る」といった、信頼や期待そのものを手放すという、より重いニュアンスで使われます。そこには、失望や見切りをつけたという感情が含まれることが多いです。
例文:
- Even when he failed the exam many times, his parents never gave up on him.
- 彼が何度も試験に落ちた時でさえ、彼の両親は決して彼を見限らなかった。
- I gave up on this computer. It’s too slow.
- このコンピューターはもう諦めたよ。あまりにも動作が遅すぎる。
- Never give up on your dreams.
- 絶対にあなたの夢を諦めないで。(夢が叶うという希望を捨てないで)
give up
と give up on
の違いは、「行動」をやめるのか「期待」をやめるのか、という点にあります。例えば、I gave up teaching him.
は「彼に教えるという行為をやめた」だけですが、I gave up on him.
と言うと「彼が何かを学ぶこと自体に期待するのをやめた、彼を見限った」という非常に強い意味になります。on
一つで、相手に与える印象が大きく変わるのです。
自分の意思で「やめる」:quit
quit
は、仕事や学校、続けていた習慣などを、自分の意思で「スパッとやめる」と決断した時に使われる単語です。give up
が持つ「断念する」というネガティブな響きとは異なり、quit
は次のステップに進むための前向きな選択を表すことも多いのが特徴です。誰かに強制されたのではなく、自らの判断で区切りをつける、という主体性が感じられます。
例文:
- He quit his job to start his own business.
- 彼は自身の事業を始めるために仕事を辞めた。
- My doctor advised me to quit drinking.
- 医者は私に禁酒するように忠告した。
- She quit the team because she disagreed with the coach.
- 彼女はコーチと意見が合わなかったので、チームをやめた。
自分の決断という側面が強く、潔いイメージを持つと分かりやすいでしょう。
過去の感情を「手放す」:let it go
大ヒットした映画の主題歌でもおなじみのフレーズですね。let it go
は、過去の出来事に対する怒り、後悔、執着といったネガティブな感情を、意識的に「手放す」「水に流す」という意味で使われます。心の中に留めておいても仕方がない、と考えて次に進むための精神的な切り替えを表します。
行動や挑戦を諦める give up
とは違い、let it go
は自分自身の心の中のわだかまりを解放するイメージです。
例文:
- It was a minor mistake. Just let it go.
- それは小さなミスだよ。もう気にしないで。
- He’s still angry about the argument. He needs to learn to let things go.
- 彼はまだあの口論について怒っている。彼は物事を水に流すことを学ぶ必要がある。
- It took a long time to let go of my grief.
- 私の悲しみを手放すのに長い時間がかかった。
誰かが失敗を引きずっている時に「もういいんだよ」と声をかけるような、心を軽くしてあげる優しい表現です。
責任や計画を「放棄する」:abandon
これまで紹介した表現よりも、さらに重くフォーマルな響きを持つのが abandon
です。これは、責任がある人や場所、計画などを「見捨てる」「放棄する」という意味で使われます。特に、守るべきものを見捨てて去ってしまうような、ネガティブで無責任な文脈で使われることが多い単語です。
例文:
- The captain gave the order to abandon ship.
- 船長は船を放棄(退船)するよう命じた。
- We had to abandon our plan due to lack of funding.
- 資金不足のため、私たちはその計画を断念せざるを得なかった。
- To abandon your principles is to lose yourself.
- 自分の信念を放棄することは、自分自身を見失うことだ。
日常会話で頻繁に使う単語ではありませんが、ニュースや映画などで見かけることがあるので、その重い意味合いを理解しておくと役立ちます。
相手を励ます「諦めないで!」
最後に、誰かがくじけそうになっている時にかけたい励ましの言葉も見ていきましょう。状況に応じて使い分けることで、より相手の心に寄り添うことができます。
Don’t give up.
「諦めるな!」とストレートに力強く励ましたい時の定番フレーズです。シンプルですが、目標に向かって頑張る人の背中を押す、熱意のこもった一言です。
例文:
- The exam is tough, but don’t give up. You’ve studied so hard.
- 試験は大変だけど、諦めないで。あんなに一生懸命勉強したんだから。
Hang in there.
「持ちこたえて」「頑張って」と、困難な状況の真っ只中にいる相手に寄り添いながら励ます時にぴったりの表現です。「そこにぶら下がって耐えて」というイメージから、今が正念場であることを理解し、「もう少しの辛抱だよ」と共感を示す温かいニュアンスがあります。
例文:
- I know things are tough right now, but hang in there. It will get better.
- 今、大変なのは分かっているけど、頑張って乗り切ってね。状況は良くなるから。
まとめ
いかがでしたか?「諦める」という一つの言葉にも、英語では様々なニュアンスがあることがお分かりいただけたかと思います。
- give up:困難に直面し、挑戦や行動を「降参」してやめる。
- give up on:人や物事への期待や信頼を「見限って」手放す。
- quit:自分の意思で決断し、仕事や習慣を「スパッと」やめる。
- let it go:過去の嫌な感情を心の中から「解放し」水に流す。
- abandon:責任や計画などを「無責任に」放棄する、見捨てる。
これらの表現を状況や気持ちに合わせて使い分けることで、あなたの英語はより豊かで自然になります。まずは自分が使ってみたいと思うものから、少しずつ会話に取り入れてみてくださいね。言葉の細かな違いを感じ取れるようになると、英語でのコミュニケーションは格段に面白くなりますよ。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
★ このブログの運営は、初心者専門英会話カーディム が行っています。★