「この映画、良かったよ!」「彼って、すごく良い人だよね」
日本語の「良い」は、本当に便利な言葉ですよね。ですが、これを英語にしようとした時、”good” と “nice” のどちらを使えばいいか迷ってしまった経験はありませんか?
この二つの単語は、どちらも「良い」と訳せますが、実はネイティブスピーカーは明確なニュアンスの違いを意識して使い分けています。この違いを理解できると、あなたの英語はぐっと自然になり、表現の幅も広がります。
まずは基本をサクッと理解したい!という方は、こちらのYouTube動画がおすすめです。会話形式で楽しく学べます。
そして、さらに一歩進んで、それぞれの単語が持つ感覚をじっくりと自分のものにしたい方は、ぜひこのままブログを読み進めてください。具体的な例文をたくさん交えながら、一つひとつ丁寧に解説していきます。
“good” の核心:客観的な基準に基づく「良さ」
まず “good” から見ていきましょう。”good” という単語が持つ中心的なイメージは、「質の高さ」や「基準を満たしている」といった、しっかりとした価値判断を伴う「良さ」です。
話者が「なんとなく良い」と感じるのではなく、ある一定の基準をクリアした、客観的な価値を持つ「良さ」を表すことが多いのが特徴です。
具体的には、主に以下の4つの場面で使われます。
1. 質の高さ・能力
モノの品質や人の能力を客観的に評価する時に使われます。
- This is a good book.これは良い本です。(内容が充実していて、読む価値がある本)
- She is a good student.彼女は優秀な生徒です。(成績や態度が、生徒としての基準を満たしている)
- He is a good doctor.彼は良い医者です。(腕が良く、信頼できる有能な医者)
2. 道徳的な正しさ・善良さ
人の内面的な性格や行動が、道徳的に見て「善い」ことを示します。これは “nice” にはない、”good” の非常に重要な意味合いです。
- He is a good person.彼は善い人です。(道徳的に正しく、善良な性格の人)
- It was a good deed.それは善い行いでした。(道徳的に正しい行為)
3. 都合の良さ・有益性
何かに対して「適している」「効果がある」「利益がある」といった、機能的な良さを表します。
- Is this a good time to talk?今、お話しするのに良い時間ですか?(ご都合はよろしいですか?)
- Vegetables are good for your health.野菜はあなたの健康に良いです。(健康にとって有益である)
4. 楽しさ・満足感
“nice” と意味が重なる部分ですが、”good” を使うと、単に楽しいだけでなく、中身が伴った満足感や充実感といったニュアンスが出ることがあります。
- We had a good time at the party.私たちはパーティーで楽しい時間を過ごしました。(満足のいく、充実した時間だった)
このように “good” は、品質、能力、道徳、利益といった、より客観的で本質的な価値に基づいた「良さ」を表す言葉なのです。
“nice” の核心:主観的な感覚からくる「心地よさ」
次に “nice” を見ていきましょう。”nice” という言葉の優しい響きのように、その中心的な意味は「心地よい」「感じが良い」といった、人の主観的・感覚的な印象に関連しています。
“good” のような客観的な基準というよりは、話者自身がどう感じたかに焦点が当たります。
1. 心地よさ・快適さ
天気や物、雰囲気などが「気持ちいい」「素敵だ」と感じる時に使われます。まさに “nice” の代表的な使い方です。
- Have a nice day!良い一日を!(気持ちよく快適な一日をお過ごしください)
- What a nice smile!なんて素敵な笑顔なんでしょう!(見ていてこちらまで心地よくなる笑顔)
- This is a nice house.これは素敵な家ですね。(見た目や雰囲気が心地よい家)
2. 親切・丁寧・人当たりの良さ
人の外面的な態度や振る舞いが「親切だ」「丁寧だ」「感じが良い」ことを表します。”good” が内面的な善良さを示すのに対し、”nice” は人付き合いの上での接しやすさや態度の良さに焦点を当てます。
- He is a nice person.彼は感じの良い人です。(人当たりが良く、親切な人)
- She was very nice to me.彼女は私にとても親切でした。(親切な態度で接してくれた)
“nice” は、人の感情や感覚に訴えかける「心地よさ」や「親切さ」を表す言葉だと覚えておくと分かりやすいでしょう。
実践! “good” vs. “nice” 使い分けドリル
それでは、具体的な場面を想定して、どちらを使うのがより自然か比べてみましょう。
ケース1:人を評価する時
- a good person: 道徳的に善い人、または、有能な人(a good cook なら料理が上手な人)
- a nice person: 親切で感じが良い人、人当たりの良い人
「彼は正直で信頼できる」という内面的な善良さを言いたいなら “He is a good person.”、「彼はいつも笑顔で話しかけてくれる」という外面的な態度の良さを言いたいなら “He is a nice person.” となります。
ケース2:経験を語る時(例:会議)
- a good meeting: 有益で生産的だった会議(具体的な成果や良い結論が出た)
- a nice meeting: 雰囲気が和やかで心地よかった会議(特に成果はなくても、みんなが気持ちよく話せた)
会議の「中身・質」を評価するなら “good”、会議の「雰囲気」を評価するなら “nice” がしっくりきます。
ケース3:モノを表現する時(例:靴)
- good shoes: 機能が良くて長持ちする靴(品質が良く、丈夫で、歩きやすい)
- nice shoes: 見た目が素敵な靴(デザインがおしゃれ、色が綺麗)
靴の「機能性や品質」を褒めるなら “good”、靴の「デザインや見た目」を褒めるなら “nice” と使い分けると、より的確に伝わります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。二つの単語の違いを、もう一度シンプルにまとめてみましょう。
- good: 質、能力、道徳、利益など、物事の「本質的な価値」や「客観的な良さ」
- nice: 心地よさ、親切さ、見た目の魅力など、「人の感情」や「主観的な印象」
もし、会話の中でどちらを使うか迷ったら、「これは質や能力の話かな?それとも心地よさや見た目の話かな?」と、心の中で少し立ち止まって考えてみてください。この一工夫で、あなたの英語はより自然で、表現豊かなものに変わっていくはずです。
もちろん、言葉には例外もあり、時にはどちらを使っても良い場面もあります。まずは今回学んだ基本的な違いを意識するところから、少しずつ始めてみてくださいね。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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