はじめに
英語でビジネスメールを書くとき、学校で習った表現や、昔買ったビジネス英語のテンプレートをそのまま使っていませんか?
「文法的には間違っていないはずなのに、なぜか返信がよそよそしい…」
「ネイティブの同僚のような、こなれたメールが書きたいけれど、失礼になるのが怖い」
そんな風に感じている英語「やり直し」学習者の方は意外と多いのです。
実は、教科書通りの英語が、現代のネイティブスピーカーにとっては「少し偉そう(上から目線)」だったり、「まるで19世紀の手紙のように古臭い」と感じられることがあります。言葉は生き物であり、ビジネスのスピード感が変われば、好まれる表現も変化していくからです。
まずは、こちらのYouTube動画をご覧ください。今回の記事の基本エッセンスを5分で分かりやすく解説しています。
動画で「基本」をサクッと理解したら、この記事で「さらに深い知識」と「使えるバリエーション」を身につけましょう。
今回は、日本人がつい使いがちな「Please confirm(確認してください)」と「Please find attached(ファイルを添付します)」について、誤解されやすいポイントを徹底解説し、明日からすぐに使える「大人の気遣い英語表現」を豊富にご紹介します。
1. 「確認お願いします」= Please confirm ではない理由
日本語の「確認」という言葉は、魔法のように便利です。「書類を確認する」「日程を確認する」「間違いがないか確認する」「入金を確認する」……。ビジネスの現場では、1日に何度も「確認」という言葉を使いますよね。
その感覚で、英語でもとりあえず「Please confirm」を使っていませんか?
実は英語の confirm という単語には、「それが正しいと証明する」「最終確定させる」「裏付ける」という、法的・論理的に非常に強いニュアンスが含まれています。
Confirm が与える「強すぎる」印象
たとえば、あなたが同僚に「この企画書、どう思う?ちょっと見ておいて」と軽く意見を求めたいとします。そこで Please confirm this proposal. と送ってしまうと、相手にはこう聞こえているかもしれません。
「この企画書の内容が正しいことを証明してください(異論は認めません)」
「決定事項として承認してください(早く判子を押してください)」
これでは、意図せず相手に「圧」をかけたり、命令口調のように聞こえてしまったりします。
日本語の「確認」の裏にある「本当の目的」に合わせて、以下の3つの表現を使い分けるのが、スマートな大人の英語です。
ケース1:資料を読んで意見やアドバイスが欲しいとき
「内容を精査してほしい」「感想がほしい」「おかしなところがあれば教えてほしい」。そんなときは、review を使いましょう。
review には「(内容をよく見て)検討する」「再調査する」という意味があります。相手の専門知識や経験を信頼し、「あなたの目で見て判断してください」というリスペクト(尊重)の気持ちが伝わる、とても丁寧な響きがあります。
基本フレーズ
- Could you please review the document?(その書類に目を通していただけますか?)
さらに丁寧な依頼
- I would appreciate it if you could review the draft.(下書きをご検討いただけますと幸いです。)
- ※
I would appreciate it if you could...は、非常に丁寧な依頼の黄金フレーズです。
- ※
具体的な期限を入れる場合
- Please review the attached file by Friday.(金曜日までに添付ファイルをご確認(ご検討)ください。)
ケース2:間違いがないか事実を見てほしいとき
単純なチェック作業、たとえば「数字が合っているか」「スペルミスがないか」「リンクが切れていないか」といった事実確認なら、日本語と同じ感覚で check を使いましょう。
check は confirm ほど重くなく、review ほど深く考えなくて良い、「サッと見る」というニュアンスで使えます。
基本フレーズ
- Please check the numbers specifically.(特に数字のチェックをお願いします。)
機能の確認
- Can you check if the link works?(リンクが正しく機能するかチェックしてもらえますか?)
二重チェックのお願い
- Could you double-check the spelling of the client’s name?(クライアントの名前のスペルを、念のため再確認(ダブルチェック)してもらえますか?)
ケース3:日程調整をしたいとき
ここが最も間違いやすいポイントです。「日程を確認してください」と言いたくて Please confirm the date. と言うと、相手は「この日で決定です(変更不可)」というニュアンスを受け取ってしまいます。
「この日でご都合はいかがですか?」と相手の事情を伺う優しさを見せるなら、work(都合がつく、うまくいく)という動詞を使うのがおすすめです。
基本フレーズ
- Does this date work for you?(この日程でご都合いかがでしょうか?)
- ※ 直訳すると「この日程はあなたにとって機能しますか?」となります。
具体的な日時を提案する場合
- Would next Tuesday at 2 PM work for you?(来週の火曜日の午後2時はご都合いかがですか?)
複数の候補から選んでもらう場合
- Please let me know which time works best for you.(どのお時間が一番ご都合が良いか教えてください。)
比較まとめ:ニュアンスの違い
| 表現 | ニュアンス | おすすめの使用場面 |
| Please confirm | 「正しいと証明せよ」「確定せよ」 (強い・硬い・業務的) | ホテルの予約確定、入金確認、法的書類の承認など |
| Could you review | 「検討して意見をください」 (丁寧・尊敬) | 企画書、草案、契約書の内容確認 |
| Please check | 「間違いがないか見てください」 (軽い・実務的) | 数字、誤字脱字、URL、添付漏れの有無 |
| Does this work | 「都合はいいですか?」 (柔らかい・配慮) | 会議の日程調整、スケジュールの相談 |
2. 「ファイルを添付します」は Please find attached だと古い?
学校や、少し前のビジネス英語の本では、添付ファイルを送るときのお決まりフレーズとして Please find attached を習った方も多いでしょう。
文法的に間違いではありませんが、これは「Eメール以前の手紙文化」の名残です。「同封されたものを見つけてください」というニュアンスがあり、現代のメール、特にチャット感覚でスピーディーにやり取りするビジネスシーンで使うと、少し違和感があります。
- 堅苦しい
- ロボットが自動送信したような冷たさ
- 「見つけてください」という回りくどさ
今はもっとシンプルで、会話に近い自然な表現が好まれます。
おすすめ表現1:Here is … (カジュアル〜標準)
「はい、どうぞ」と手渡すような、最も自然でシンプルな表現です。同僚や、ある程度やり取りのある取引先相手なら、これで十分です。
基本フレーズ
- Here is the report you asked for.(ご依頼のあったレポートをお送りします。)
資料を送る
- Here is the invoice for this month.(今月の請求書です。)
複数のファイルを送る場合
- Here are the photos from the event.(イベントの写真はこちらです。)
- ※ 複数形なので
Here areになります。
- ※ 複数形なので
おすすめ表現2:I’ve attached … (プロフェッショナル)
「私が添付しました」と伝える、能動的でプロフェッショナルな響きのある表現です。I have attached の短縮形 I’ve attached を使うことで、適度な親しみやすさも出ます。
上司や顧客など、少し改まった相手にも安心して使えます。
基本フレーズ
- I’ve attached the file for your review.(ご確認用(ご検討用)にファイルを添付しました。)
- ※ ここで先ほどの
reviewを組み合わせると完璧です!
- ※ ここで先ほどの
特定の種類のファイルを送る
- I’ve attached the meeting minutes.(会議の議事録を添付しました。)
- I’ve attached the quotation as a PDF.(見積書をPDFとして添付しました。)
応用編:ファイルの中身を具体的に伝える
単に「添付しました」と言うだけでなく、「添付ファイルには何が書いてあるのか」を主語にすると、さらに洗練された印象になります。読み手も、ファイルを開く前に概要がわかって助かります。
詳細を含んでいることを伝える
- The attached file contains the project details.(添付ファイルにはプロジェクトの詳細が含まれています。)
概要を説明していることを伝える
- The attached document outlines the new strategy.(添付書類には新しい戦略の概要が記されています。)
もし添付を忘れてしまったら?
「ファイルを添付します」と書いたのに添付し忘れて送信してしまった……。誰にでもあるミスです。そんなときは、慌てずに次のようにフォローしましょう。
- My apologies, I forgot to attach the file. Here it is.(申し訳ありません、ファイルを添付し忘れました。こちらです。)
- Here is the file regarding the previous email.(先ほどのメールに関するファイルはこちらです。)
3. さらに一歩進んで:件名(Subject)もシンプルに
本文の表現を変えたら、件名も見直してみましょう。
日本人は件名を丁寧にしようとして、「〜の件につきまして」と長く説明しがちです。しかし、英語圏のビジネスパーソンは1日に大量のメールを処理するため、「一目で内容がわかること(要件ファースト)」が最優先です。
悪い例:長すぎてスマホで見切れる
- Regarding the matter of the meeting schedule adjustment for next week(来週の会議日程調整の件につきまして)
- “Regarding the matter of…”(〜の件に関して)は丁寧ですが、前置きが長すぎます。
良い例:名詞を中心に短く
- Meeting Schedule: Next Week(会議日程:来週)
- Schedule Change: Project A(日程変更:プロジェクトA)
- Invoice #12345 – September(請求書番号12345 – 9月分)
覚えておくと便利な「タグ」
件名の先頭に【 】のようなタグをつける感覚で、以下の言葉を入れると、緊急度やアクションの必要性が一発で伝わります。
- [Urgent] :緊急
- [Action Required] :要返信・要対応
- [FYI] :参考までに(返信不要) ※For Your Information の略
- [Reminder] :リマインダー(再通知)
例: [Action Required] Please sign the contract (【要対応】契約書への署名をお願いします)
4. 結びの言葉もトーンを合わせる
最後に、メールの締めくくり(結語)についても触れておきます。
本文を Here is… や Does this work? といった自然な現代的表現にしたのに、最後だけ Sincerely, のようなガチガチに硬い表現を使うと、タキシードにサンダルを履いているようなチグハグな印象になります。
相手との距離感に合わせて、以下の3つを使いこなしましょう。
避けたほうがよい硬い表現(日常会話ではNG)
- Sincerely,
- Yours truly,これらは、会ったこともない相手への最初のフォーマルな手紙や、公的な文書で使われます。日常的なビジネスメールで使うと、「あなたとは距離を置きたいです」という冷たい壁を感じさせてしまうことがあります。
1. 最も一般的・万能な表現
- Best regards,(よろしくお願いします/敬具)社内・社外、上司・同僚問わず使える最も安全な表現です。迷ったらこれを使いましょう。
- Kind regards,Best regards よりも少しだけ柔らかく、温かみのあるニュアンスです。
2. 少しカジュアルな表現(何度もやり取りしている相手)
- Regards,(よろしく/ではまた)Best regards の短縮版。スピーディーなやり取りの中でよく使われます。
- Best,こちらも非常に一般的で、シンプルで好印象です。
3. 親しい・感謝を伝えたい表現
- Thanks,(ありがとう)何かを依頼したときや、親しい間柄で。
- Many thanks,(本当にありがとう)感謝の気持ちを少し強調したいときに。
おわりに
いかがでしたか?
「確認=Confirm」「添付=Please find attached」という長年の思い込みを捨てるだけで、あなたのメールはぐっとネイティブらしく、そして何より「相手への配慮(Empathy)」が伝わる温かみのあるものに変わります。
言葉は時代とともに変化します。昔習った英語をアップデートすることは、単にオシャレな表現を使うだけでなく、「あなたの時間を尊重しています」「あなたとスムーズに仕事をしたいです」 というメッセージを相手に送ることにもつながるのです。
まずは次のメールで、Please confirm と書きそうになった手を止めて、Could you please review…? に書き換えてみることから始めてみませんか?
小さな変化が、ビジネス上の信頼関係を大きく育ててくれるはずです。
さらなる英語学習のヒントは、また次回の記事でお届けします。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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