しばらく会っていない友人や、間が空いてしまった取引先。そんな相手に、いざ英語で「ご無沙汰しています」と伝えようとした時、ぴったりの言葉が思い浮かばず、もどかしい思いをしたことはありませんか?
日本語の「ご無沙汰」には、「長い間ご連絡できず、申し訳ありません」というお詫びのニュアンスが含まれることが多いですが、英語圏ではコミュニケーションの感覚が少し異なります。
この記事では、英語学習を再スタートした初心者の方でも安心して使えるように、「ご無沙汰」の気持ちを自然に伝えるための文化的なポイントから、場面に合わせた具体的なフレーズまで、一つひとつ丁寧に解説していきます。
まずは動画で基本をサクッと確認したいという方は、こちらのYouTube動画をご覧ください。さらに深く、じっくりと理解を深めたい方は、ぜひこのまま読み進めてくださいね。
「ごめんなさい」より「会えて嬉しい!」が基本
日本語で「ご無沙汰しております」と言う時、私たちは無意識のうちに「長い間連絡をしなくて申し訳ない」という、過去の行動に対するお詫びの気持ちを伝えようとします。これは、相手への配慮や謙虚さを示す、日本の美しい文化の一部です。
しかし、英語、特にアメリカやカナダなどの北米文化圏では、コミュニケーションの捉え方が異なります。久しぶりに誰かと再会した時、彼らがまず先に表現するのは、過去の空白期間に対する謝罪ではなく、今、目の前で会えたことへの「再会の喜び」です。
過去に連絡を取らなかったことを詫びるよりも、「Wow, it’s so great to see you!(わあ、また会えてすごく嬉しい!)」といったポジティブな感情をストレートに伝える方が、ずっと自然で、相手にも喜ばれます。もし、いきなり謝罪の言葉から入ってしまうと、相手によっては「何か悪いことでもしたのかな?」と少し戸惑わせてしまうかもしれません。
大切なのは、過去ではなく「今、この瞬間」に焦点を合わせること。この文化的な違いを少し意識して、「ごめんね」から「嬉しい!」へと考え方をシフトするだけで、あなたの英語でのコミュニケーションは、よりポジティブでスムーズなものになるはずです。
まずは覚えたい!基本の2大フレーズ
「ご無沙汰」を伝える英語表現は数多くありますが、まずは応用範囲の広い基本の2フレーズをしっかり押さえましょう。この2つを自信を持って使い分けることができれば、日常のほとんどの場面で困ることはありません。
1. It’s been a while. (しばらくですね)
これは「(最後に会ってから)しばらく時間が経ちましたね」という客観的な事実を、落ち着いたトーンで伝える表現です。「It has been a while」を短縮した形で、非常にニュートラルな響きを持っています。丁寧すぎず、かといって砕けすぎてもいないため、ビジネスシーンから日常会話まで、相手や場面をほとんど選ばずに幅広く使える、まさに「万能」フレーズです。覚えておくと、どんな相手にも安心して使えます。
例文
- ビジネスの相手にMr. Smith, it’s great to see you. It’s been a while.(スミスさん、お会いできて嬉しいです。しばらくでしたね。)
- 以前お世話になった先生にHello, Professor Davis. It’s been a while. How have you been?(こんにちは、デイビス先生。ご無沙汰しております。お変わりありませんか?)
- ご近所さんや顔見知りの知人にHi, Sato-san. It’s been a while.(こんにちは、佐藤さん。しばらくですね。)
2. Long time no see. (久しぶり!)
こちらは「うわー、久しぶり!」という、再会の喜びや驚きを、親しみを込めてカジュアルに伝える表現です。英語のフレーズの中でも特に有名で、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。その語源は、英語を母国語としない人が使っていた言葉が広まったもの、という説もあり、文法的には少し変わっていますが、それがかえってフレンドリーな響きを生んでいます。本当に仲の良い友人や、気心の知れた同僚など、親しい間柄で使うと、再会できた嬉しさがより強く、ストレートに伝わります。
例文
- 街で友人にばったり会った時Yuki! Long time no see! I can’t believe it’s you!(ユキ!久しぶりだね!君だなんて信じられないよ!)
- しばらく会っていなかった同僚と職場でHey Mike, long time no see. We should grab lunch sometime.(やあマイク、久しぶりだね。今度ランチでも行こうよ。)
最重要注意点
Long time no see.
は非常にカジュアルで、くだけた表現です。そのため、会社の重役や重要な取引先の相手など、フォーマルな関係性の相手に使うのは絶対に避けましょう。Tシャツとジーンズで高級レストランに行くような、場違いな印象を与えかねません。ビジネスメールの書き出しで使うのも不適切です。この線引きだけは、しっかりと覚えておきましょう。
基本の使い分けをまとめると、以下のようになります。
- 迷ったらこれ!広く使える万能フレーズ: It’s been a while.
- 友達に会えた喜びに!親しい人向けのカジュアルフレーズ: Long time no see.
場面別・もっと伝わる英語表現ガイド
基本の2フレーズの使い分けに慣れてきたら、さらに具体的な場面に応じた表現を使いこなして、コミュニケーションの幅を広げていきましょう。
ビジネスメールの場合
文字でのやり取りとなるメールでは、対面よりも丁寧さが求められます。書き出しで「ご無沙汰しております」というニュアンスを伝えたい場合は、以下のような表現が洗練されていて、かつ相手への敬意を示せます。
- I hope this email finds you well. It has been some time since we last corresponded.(お元気でお過ごしのことと存じます。前回ご連絡を取り合ってからしばらく経ちました。)最も丁寧でフォーマルな表現の一つです。
- I hope you are doing well. It’s been a while since we were last in touch, but I wanted to contact you about…(お元気でいらっしゃいますか。ご無沙汰しておりましたが、…の件でご連絡いたしました。)少し柔らかい印象になり、本題にスムーズにつなげることができます。
このように、相手を気遣う一文を添えてから、しばらく時間が空いたことに触れるのが、スマートなビジネスメールの書き方です。
ビジネスで直接会った場合
展示会や外出先で取引先の人に偶然会った時など、予期せぬ再会の場面では、何よりもまずポジティブな驚きと「会えた喜び」を伝えるのが成功の鍵です。
- It’s great to see you again.(またお会いできて嬉しいです。)
この一言が、最も前向きで良い第一印象を与えます。ビジネスシーンでは、常にポジティブな雰囲気を作ることが大切です。その後に続けて、
- How have you been?(いかがお過ごしでしたか?)
- How is everything at your company?(会社の皆様はお変わりありませんか?)
などと相手の近況や会社の様子を尋ねることで、自然で心のこもった会話を始めることができます。
友人や知人とのカジュアルな再会
学生時代の友人や、前の職場の仲の良い同僚との再会では、少し大げさなくらい感情を込めた表現で、最大限の喜びを伝えてみましょう。
- It’s been ages!(すっごく久しぶり!何年ぶりだろう!)
- It’s been forever!(めちゃくちゃ久しぶり!もう会えないかと思ったよ!)
ages
(長い年月) や forever
(永遠) といった単語を使うことで、「本当に長い間会っていなかったね!」「会いたかったよ!」という驚きや喜びの気持ちを強調し、感動的な再会を演出することができます。また、シンプルに I haven't seen you for a long time.
と言うこともできます。
会話がもっと弾む!挨拶の後のプラスαフレーズ
「久しぶり!」の挨拶は、会話の始まりにすぎません。その後の会話をどう繋げていくかが、関係を深める上でとても重要です。そんな時に役立つ、気の利いたフレーズをご紹介します。
相手の近況を詳しく尋ねる
- What have you been up to?(最近、どうしてたの?何かあった?)定番の How are you? が「元気?」という現在の状態を尋ねる挨拶なら、こちらは「会っていなかった間、どんなことをして過ごしていたの?」という、空白期間の出来事について尋ねる質問です。より具体的で、プライベートな話に発展しやすいのが特徴です。
- Anything new and exciting?(何か新しくてワクワクするようなこと、あった?)相手のポジティブなニュースを引き出す、明るい質問です。
また話したい気持ちを具体的に伝える
その場でゆっくり話す時間がない時でも、「また近いうちに話したい」という気持ちを具体的に伝えることで、次の約束に繋げることができます。
- We should catch up properly soon.(近いうちにまた、ちゃんと時間とってお互いの近況を話そうよ。)catch up は「会っていなかった間の出来事を話し合って、情報や状況をアップデートする」という意味の、ネイティブが非常によく使う便利な表現です。properly (ちゃんと) を加えることで、「立ち話ではなく、じっくりと」という気持ちが伝わります。
- Let’s grab coffee sometime next week.(来週あたり、お茶しない?)より具体的に次のアクションを提案することで、社交辞令で終わらせないという意思表示になります。
相手から「久しぶり」と言われた時のスマートな返し方
自分から言うだけでなく、相手から It's been a while.
と言われることも当然あります。そんな時、日本語の「いえいえ、こちらこそご無沙汰しております」のように返したくなりますが、英語では少し違います。焦らず、自信を持って返すための「黄金の3ステップ」を覚えましょう。
- 同意する: It sure has. / Yes, it’s been too long.(本当にそうですね。/ ええ、本当にご無沙汰しています。)まずは「本当にそうですね」と、相手の言葉に同意を示します。
- 喜びを伝える: It’s so good to see you.(お会いできて、とても嬉しいです。)次に、「会えて嬉しい」というポジティブな気持ちを伝えます。これが最も重要な部分です。
- 相手に質問する: How have you been? / So, what’s new with you?(お元気でしたか? / それで、何か変わりはありましたか?)最後に、相手に質問を投げかけることで、会話のキャッチボールを続けます。
この「同意 → 喜び → 質問」という一連の流れで返答すると、非常に自然でコミュニケーションが上手な印象を与え、会話もきっと弾むはずです。ぜひこのままのセットで覚えて、使ってみてください。
まとめ
最後に、英語で「ご無沙汰」の気持ちを伝える際の、大切なポイントをもう一度振り返ってみましょう。
- まずは謝罪よりも「再会の喜び」というポジティブな気持ちを表現する。
- 場面や相手を選ばない、迷った時の万能フレーズは
It's been a while.
- 親しい友人には
Long time no see.
やIt's been ages!
で、ありったけの親しみを込めて。 - ビジネスメールでは、相手を気遣う言葉を添えて丁寧な書き出しを心がける。
- 挨拶の後は
What have you been up to?
などで会話を広げ、次の約束に繋げる。 - 相手から言われた時の返事は「同意 → 喜び → 質問」の黄金の流れを意識する。
日本語の謙虚な感覚とは少し違うかもしれませんが、決して難しく考える必要はありません。大切なのは、目の前にいる相手に「あなたにまた会えて、心から嬉しい」という素直な気持ちを伝えることです。その気持ちがあれば、多少の文法の間違いは気にしなくても大丈夫。ぜひ今日から、身近な場面で少しずつ試してみてくださいね。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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