「I’m sorry」と聞くと、多くの人が「ごめんさい」という謝罪の言葉を思い浮かべるのではないでしょうか。もちろん間違いではありませんが、実は「I’m sorry」は謝罪以外にもたくさんの意味を持つ、とても奥が深い表現なのです。
この「ごめんさい」という一つの意味に縛られてしまうと、ネイティブとの会話で「なぜここで謝るの?」と不思議に思われたり、逆に相手の気持ちに寄り添いたい場面で言葉が出てこなかったり…といったすれ違いが起こりがちです。英語における「I’m sorry」は、単なる謝罪ではなく、人間関係をスムーズにするための「潤滑油」のような役割を担う、非常に重要なコミュニケーションツールなのです。
この記事では、「I’m sorry」が持つ謝罪以外の便利な使い方を、豊富な例文と共に徹底解説します。
まずは基本を短時間で理解したい!という方は、こちらのYouTube動画をご覧ください。
さらに深く学んで、自信を持って「I’m sorry」を使いこなしたい方は、ぜひこのまま記事を読み進めてください。この記事を読み終える頃には、あなたの英語コミュニケーションはもっとスムーズで、人間味あふれるものになっているはずです。
「Sorry」の本当の意味は「心が痛む」
そもそも、「Sorry」という言葉の元々の意味は「sore(痛い)」や「sad(悲しい)」から来ており、「心が痛む」「悲しい」という個人的な感情を表す言葉でした。
つまり、「自分が悪いことをしたから謝る」のではなく、「ある状況に対して心が痛む・残念に思う」というのがこの言葉の核となるイメージです。自分の過ちに対して心が痛むから「ごめんなさい」という謝罪になる。そして、相手の不幸に対して心が痛むから「お気の毒に」という共感の言葉になるのです。このイメージを頭の片隅に置いておくと、これからご紹介する様々な使い方をすんなりと理解できますよ。
1. 相手に寄り添う「同情・共感」の I’m sorry
これは、日本人学習者が最もつまずきやすいけれど、マスターすると人間関係がぐっと深まる使い方です。相手に何か良くないこと、悲しいことがあった時に「お気の毒に」「それは大変でしたね」と、同情や共感の気持ちを伝える時に使います。
ポイントは、自分に全く非がない場面で使うということです。「なぜ私が謝るの?」と考えるのではなく、「あなたの悲しみに、私の心も痛みます」という気持ちを伝える表現だと考え方を変えてみましょう。もしこの場面で何も言わなかったり、的外れな言葉をかけてしまったりすると、「冷たい人」「無神経な人」という印象を与えかねません。相手との心の距離を縮める、大切な一言です。
こんな時に使えます
- 相手が病気や怪我をしたと聞いた時
- 誰かが亡くなったという知らせを受けた時(お悔やみ)
- 友人が試験に落ちた、物をなくした、恋人と別れたなど、がっかりしている時
- 相手が仕事で困難な状況に直面している時
例文を見てみましょう
A: I have a bit of a cold.
(ちょっと風邪をひいてしまって。)
B: Oh, I’m sorry to hear that. Please take care.
(日本語訳:あら、それはお気の毒に。お大事にしてくださいね。)
A: My dog passed away last week.
(先週、飼っていた犬が亡くなったんです。)
B: I’m so sorry for your loss. I know how much he meant to you.
(日本語訳:心からお悔やみ申し上げます。彼がどれほど大切な存在だったか、お察しします。)
A: I failed my driving test again.
(また運転免許の試験に落ちちゃった。)
B: Oh, I’m sorry. That’s tough. Don’t give up!
(日本語訳:あら、それは残念だったね。大変だね。でも、あきらめないで!)
A: I didn’t get the promotion I was hoping for.
(期待していた昇進ができなかったんだ。)
B: I’m so sorry to hear that. You worked so hard for it.
(日本語訳:それは本当に残念だったね。すごく頑張っていたのに。)
使い方のコツ:大切なのは声のトーンと表情
この用法で一番大切なのは、心から同情している気持ちが伝わるように、優しく、少し沈んだ声のトーンで言うことです。眉を少しひそめ、相手の目を見て心配そうな表情を浮かべるなど、言葉以外のサインも重要です。決して笑顔で言わないように気をつけましょう。言葉と表情がちぐはぐだと、不誠実な印象を与えてしまいます。
類似表現との違い:I’m sorry vs. That’s too bad
同じく「残念だね」という意味で使われる「That’s too bad.」や「That’s a shame.」という表現がありますが、これらは比較的軽い不運(例:楽しみにしていたイベントが雨で中止になった、買いたかったパンが売り切れていた)に対して使われます。これらは相手の状況に対する客観的な「感想」に近いニュアンスです。
病気や不幸、失恋など、より深刻な状況で「That’s too bad.」と言ってしまうと、「他人事だと思っている」「気持ちを分かってくれていない」と受け取られ、冷たい印象を与えかねません。相手の気持ちに深く寄り添いたい時は、感情を共有するニュアンスの強い「I’m sorry」を使いましょう。
2. 言いにくいことを伝える「クッション言葉」の I’m sorry
頼み事を断ったり、相手の期待に沿えない知らせを伝えたりする時、少し言いにくいと感じることがありますよね。そんな時に、話の切り出しを和らげる「クッション言葉」として「I’m sorry」が活躍します。
ここでの意味は「ごめんなさい」ではなく、「残念なのですが」「申し訳ないのですが」というニュアンスです。これから伝えるネガティブな内容によって、相手をがっかりさせてしまうかもしれない、そのことに対して「心が痛みます」という気持ちを先に示すことで、続く言葉の衝撃を和らげる効果があります。日本語でも同じような前置きをしますよね。それと同じ感覚で使えます。
こんな時に使えます
- お店で、お客さんが探している商品の在庫がない時
- 友人からの誘いを断る時
- 相手の要望に応えられないことを伝える時
- 会議の予定を変更しなければならない時
例文を見てみましょう
(お店の店員がお客さんに)
I’m sorry, but that shirt is sold out in your size. We can check if another branch has it.
(日本語訳:申し訳ありませんが、そのシャツのあなたのサイズは売り切れです。他の店舗に在庫があるかお調べできますが。)
A: Can you join us for dinner tonight?
(今夜、一緒に夕食どうかな?)
B: I’m so sorry, but I can’t make it. I have other plans. How about next week?
(日本語訳:本当にごめんね、でも行けないんだ。別の予定があって。来週はどうかな?)
(電話で)
I’m sorry, but Ms. Tanaka is not at her desk right now. Can I take a message?
(日本語訳:申し訳ありませんが、田中はただいま席を外しております。ご伝言を承りましょうか?)
(同僚に)
I’m sorry, but I won’t be able to attend the meeting tomorrow.
(日本語訳:申し訳ないのですが、明日の会議には出席できそうにありません。)
使い方のコツ:「I’m sorry, but…」の形で使う
この用法では、「I’m sorry, but…(残念ですが、しかし…)」という形で使われることがほとんどです。断りの言葉や残念な知らせを直接的に伝えるのではなく、ワンクッション置くことで、丁寧で思いやりのある印象を与えることができます。可能であれば、例文のように代替案や次の提案を付け加えると、より親切な印象になります。
類似表現との違い:I’m sorry, but… vs. I’m afraid…
同じく残念な知らせを伝える表現に「I’m afraid…」があります。「I’m sorry, but…」が相手の気持ちへの共感を含むのに対し、「I’m afraid…」は「残念ながら変えられない事実を客観的にお伝えします」という、よりフォーマルで事務的な響きがあります。例えば、お店の閉店時間を伝える時などは「I’m afraid we close at 7 PM.」のように使われます。
3. もう一度聞きたい時の「聞き返し」の I’m sorry?
会話の中で、相手の言ったことがよく聞き取れなかったり、意味が理解できなかったりした時、「え?もう一度お願いします」という意味で「Sorry?」や「I’m sorry?」が使えます。
これは、相手にもう一度話してもらう手間をかけることに対して、「すみません」という軽い気持ちが込められた表現です。単に「What?」と聞くよりもずっと丁寧で、相手に不快感を与えません。
★最重要ポイント:語尾のイントネーションを必ず上げる!
この使い方で絶対に間違えてはいけないのが、イントネーションです。必ず、文の最後を「Sorry? ↗」のように、語尾を上げて疑問形のように発音してください。少し首を傾げたり、耳に手を当てる仕草をしたりすると、より「聞こうとしています」という姿勢が伝わります。
もし語尾を下げて平坦に「Sorry. ↘」と言ってしまうと、それは謝罪に聞こえ、相手は「え?なぜ突然謝るの?」と混乱してしまいます。意味が全く変わってしまうので、ここはしっかり意識して練習しましょう。
例文を見てみましょう
A: My flight number is AZ seven six five.
(私のフライト番号はAZ765です。)
B: Sorry? Could you say that again, please?
(日本語訳:すみません、もう一度言っていただけますか?)
(騒がしいカフェで)
A: (何かを話している)
B: I’m sorry? It’s a bit loud in here. I couldn’t catch that.
(日本語訳:すみません、ちょっとここ騒がしくて。聞き取れませんでした。)
(電話で相手の声が遠い時)
A: (何かを話している)
B: I’m sorry, you’re breaking up a little.
(日本語訳:すみません、少し音声が途切れているようです。)
類似表現との違い:丁寧さのレベルを使い分ける
聞き返す表現は他にも色々あり、それぞれ丁寧さの度合いが異なります。状況や相手との関係性によって使い分けるのが、洗練された大人のコミュニケーションです。
- What?:非常にカジュアル。家族や親しい友人同士で使いますが、言い方によっては「は?」という挑戦的な響きになるため、学習者は避けた方が無難です。
- Excuse me?:「Sorry?」と同じくらい丁寧で、特にアメリカでよく使われます。どちらを使っても問題ありません。
- Pardon? / Pardon me?:「Sorry?」よりも少しフォーマルな響きで、特にイギリスで好まれます。目上の方と話す時や、フォーマルな場では非常に適切な表現です。
英語初心者の方は、まず万能で失礼のない「Sorry? ↗」と「Excuse me? ↗」をマスターするのがおすすめです。
4. 相手に敬意を払う「丁寧な反論」の I’m sorry
会議やディスカッションで、相手の意見に反対したい。でも、ストレートに「I disagree.(反対です)」と言うのは少し角が立つ気がする…。そんな時に使えるのが、この「I’m sorry」です。
ここでの意味は「恐縮ですが」「失礼ですが」に近く、相手への敬意を示しつつ、自分の意見を穏やかに伝えるための前置きとして使われます。これは、相手の意見そのものではなく、「これからあなたの意見と対立することを述べます。それによって場の空気を乱してしまうかもしれないことを、残念に思います」という気持ちを表しています。
こんな時に使えます
- 会議で、同僚や上司の提案に異なる視点を提示したい時
- 友人と会話していて、考え方の違いを穏やかに伝えたい時
- 相手が言ったことに、事実とは異なる点がある時
例文を見てみましょう
A: I think this new design is perfect.
(この新しいデザインは完璧だと思う。)
B: I’m sorry, but I think the color is a little too bright. What about a softer tone?
(日本語訳:恐縮ですが、色が少し明るすぎるように思います。もう少し柔らかい色調はいかがでしょうか?)
A: That movie was the best of the year.
(あの映画は今年最高だったね。)
B: I’m sorry, but I see it differently. I felt the story was a bit predictable.
(日本語訳:ごめん、でも私は違う見方をしているな。ストーリーが少し予測しやすいと感じたんだ。)
A: The deadline is next Friday, right?
(締め切りは来週の金曜日ですよね?)
B: I’m sorry, but I believe it’s this Friday. Let me double-check.
(日本語訳:失礼ですが、今週の金曜日だったかと思います。もう一度確認させてください。)
使い方のコツ:穏やかなトーンで、建設的な意見を
反論する時は、穏やかで落ち着いたトーンを心がけましょう。攻撃的な響きにならないように注意が必要です。この「I’m sorry」を最初に言うことで、「あなた個人を攻撃したいのではなく、アイデアについて話したいのです」という姿勢を示すことができます。また、ただ反対するだけでなく、例文のように代替案を出したり、理由を述べたりすることで、より建設的なコミュニケーションになります。
まとめ
いかがでしたか?「I’m sorry」という一言が、実に様々な場面で活躍するコミュニケーションツールであることがお分かりいただけたかと思います。
最後に、今日学んだ4つの顔をもう一度おさらいしましょう。
-
- 同情・共感:「お気の毒に」「それは大変でしたね」と相手の心に寄り添う
- クッション言葉:「残念ですが」「申し訳ないのですが」とネガティブな内容を和らげる
- 聞き返し:「もう一度お願いします」と丁寧に聞き返す(語尾は必ず上げる!)
- 丁寧な反論:「恐縮ですが」「失礼ですが」と敬意を払いつつ意見を述べる
これらの使い方をマスターすれば、あなたの英語はもっと自然で、感情豊かになります。これからは「ごめんなさい」だけでなく、場面に応じて様々な「I’m sorry」を自信を持って使ってみてくださいね。ネイティブの会話や映画などでも、どの意味で使われているか意識して聞いてみると、さらに理解が深まりますよ。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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