「理由を説明するとき、いつも ‘because’ ばかり使ってしまう…」
「’since’ や ‘as’ も見るけど、違いがよく分からなくて自信がない…」
「自分の英語が、なんだか単調に聞こえる気がする…」
英語の学び直しをされている方の中には、そんな風に感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、理由を伝える英語表現は ‘because’ だけではありません。’since’ や ‘as’ といった言葉を状況に応じて的確に使い分けることで、あなたの英語はより自然で、知的で、そして表現力豊かなものに変わります。
まずは、こちらの動画で3つの単語の基本的な違いをサクッと掴んでみてください。
このブログ記事では、動画の内容をさらに一歩も二歩も進めて、豊富な例文を交えながら、それぞれの単語が持つ細かなニュアンスや使い分けのポイントを、どこよりも分かりやすく、そして深く解説していきます。
この記事を読み終える頃には、もう「なぜなら」の英語表現で迷うことはなくなるはずです。単に意味が通じるだけでなく、あなたの気持ちや状況にピッタリの言葉を選べるようになりますよ。
なぜ「理由」の使い分けが大切なの?
日本語でも「〜なので」「〜だから」「〜なものですから」「〜というわけで」と、場面や相手によって言葉を選ぶように、英語も同じです。理由を伝える場面や、相手との関係性によって最適な言葉は変わってきます。
もし ‘because’ だけで全ての理由を表現しようとすると、時には不自然に聞こえたり、少し子供っぽく聞こえたり、あるいは相手に意図が正確に伝わらなかったりすることもあります。
ネイティブスピーカーがごく自然に行っているこの使い分けをマスターすることは、単なるテクニックではありません。相手への配慮を示し、会話の流れをスムーズにし、自分の考えをより正確に伝えるための、いわば「大人のコミュニケーション術」なのです。これを身につけることで、あなたの英語の表現力は一段も二段もアップします。
because vs. since vs. as の核心イメージ
本格的な解説に入る前に、まずは3つの単語が持つ根本的なイメージの違いを掴みましょう。この核となるイメージを頭に入れておくだけでも、使い分けがグッと楽になります。
- because: 「これが理由です!」と、理由そのものに強いスポットライトを当てるイメージ。相手が知らないであろう、一番伝えたい核心的な情報です。
- since: 「ご存知の通り〜なので」と、お互いが知っていることを「さて、これを前提として…」と話を進めるイメージ。スポットライトは理由ではなく、その先にある「結論」に当たっています。
- as: ‘since’ と似ていますが、よりフォーマルで客観的。または「〜するにつれて」と、二つの状況が同時に進んでいくイメージ。映画のシーンが移り変わるような感覚です。
because:理由をはっきり、強く伝えたいときの主役
‘because’ は、理由を伝える表現の中で最も一般的で、直接的、そしてパワフルな言葉です。文の主役が「理由」そのものである場合、迷わず ‘because’ を使いましょう。
こんな時は ‘because’ を使おう
- 相手が知らない新しい理由を伝えるとき聞き手が「なぜ?」と思っていることに対して、その核心的な答えを示すときに使います。情報の受け手にとって、その理由が新しい発見である場合です。
- I moved to this town because the schools are excellent.私がこの街に引っ越してきたのは、学校が素晴らしいからです。(相手は引っ越しの理由を知らない)
- She was chosen for the team because she is a very fast runner.彼女がチームに選ばれたのは、とても足が速いからです。(選抜の決め手が足の速さだという新情報)
- We had to cancel the picnic because a thunderstorm was approaching.私たちはピクニックを中止しなければなりませんでした。なぜなら、雷雨が近づいていたからです。
- “Why…?”(なぜ?)の質問に直接答えるとき”Why…?” と聞かれたら、答えは ‘because’ で始めるのが最も自然で標準的な応答です。これは鉄則として覚えておきましょう。
- A: Why were you late for the meeting?なぜ会議に遅れたのですか?
- B: Because there was a terrible traffic jam.ひどい交通渋滞があったからです。
- A: Why do you want to learn English?なぜ英語を学びたいのですか?
- B: Because I want to travel the world.世界中を旅行したいからです。
- 理由を特に強調したいとき文の中で「他の何でもなく、これが理由なんだ!」と強く主張したいときに最適です。自分の感情や決断の根拠を、情熱を込めて伝える場面で力を発揮します。
- The project succeeded because everyone worked together as a team.プロジェクトが成功したのは、みんながチームとして協力したからです。(他の要因ではなく、チームワークこそが成功の理由だと強調)
- I chose this university because it has the best program for my major.私がこの大学を選んだのは、私の専攻にとって最高のプログラムがあるからです。(強い意志と明確な理由を示す)
ちょっと寄り道: ‘because of’ との違い
‘because’ とよく似た表現に ‘because of’ があります。この二つの違いは文法的なルールです。
- because の後には、主語(S) + 動詞(V) を含む文が来ます。
- because of の後には、名詞(または名詞句)が来ます。
- He was late because it rained heavily. (it=S, rained=V)彼が遅れたのは、雨がひどく降ったからです。
- He was late because of the heavy rain. (the heavy rain = 名詞句)彼が遅れたのは、ひどい雨のせいです。
意味はほぼ同じですが、文の構造が違うことを覚えておくと、表現の幅が広がります。
since:「ご存知の通り〜なので」という共通認識
‘since’ は、理由が聞き手にとっても既に明らかであったり、話の流れで当然のこととして分かっていたりする場合に使います。理由をことさらに強調するのではなく、それを前提として話を進めたいときに使う、知的で洗練された響きを持つ言葉です。
そのため、文の焦点は理由そのものではなく、「その結果どうなるか」という結論部分に置かれます。
こんな時は ‘since’ を使おう
- 相手も知っている(であろう)理由を述べるとき「(ご存知の通り)〜という状況なので、…しましょう」という流れで話を進めるときにピッタリです。相手への配慮が感じられる表現になります。
- Since you’ve already seen the movie, let’s choose another one.あなたはもうその映画を見たことがあるので、別のを選びましょう。(相手が見たことを知っている前提)
- Since tomorrow is a national holiday, most shops will be closed.明日は祝日なので、ほとんどのお店は閉まっているでしょう。(祝日であることは共通の認識)
- I think I’ll just have a salad, since I had a big lunch.お昼をたくさん食べたので、私はサラダだけにしておきます。(自分がたくさん食べたことは、相手も知っているか、少なくとも状況から推測できる)
- 文頭で背景を説明し、本題に繋げるとき’since’ は文頭で使われることが非常に多いのが特徴です。まず共通認識である理由を提示し、聞き手の意識を本題である結論部分へとスムーズに導きます。これは論理的な文章を組み立てる上で非常に有効なテクニックです。
- Since everyone is here, let’s start the meeting.全員が揃ったので、会議を始めましょう。(全員がいるのは、その場にいる全員が見てわかる事実)
- Since the shop is closed, we’ll have to come back tomorrow.その店は閉まっているので、明日また来なければなりません。(店のシャッターが閉まっているのを見ながら話しているような状況)
because との違いを深掘り
“Since it’s raining, I’ll take an umbrella.”(雨が降っているから、傘を持っていきます)は、相手も雨が降っていることを知っている状況で言うのが自然です。
一方で、室内にいて外の様子を知らない相手に「傘を持っていったほうがいいよ」と伝えるなら、”You should take an umbrella because it’s raining.” と言うのが適切です。この場合、「雨が降っていること」は相手にとって新しい情報だからです。
このように、相手が理由を知っているか知らないかで、’because’ と ‘since’ を使い分けるのがポイントです。
as:よりフォーマルな場面や、状況が同時に進むとき
‘as’ は ‘since’ と似た働きをしますが、よりフォーマルで客観的な響きを持つのが特徴です。書き言葉や、少しかしこまったスピーチなどで使われることが多いです。
また、’as’ には「〜するにつれて」という、2つの出来事が同時に進行する様子を表すユニークな使い方もあり、これが ‘as’ の大きな特徴となっています。
こんな時は ‘as’ を使おう
- フォーマルな文脈で理由を述べるとき(書き言葉など)ビジネス文書やレポート、公的な通知などで、客観的な理由を淡々と述べるのに適しています。
- As the data clearly indicates, sales have increased significantly in the last quarter.データが明確に示すように、前四半期の売上は大幅に増加しました。
- The event was canceled as several keynote speakers were unable to attend due to health issues.何名かの基調講演者が健康上の理由で出席できなくなったため、そのイベントは中止となりました。
- As was agreed in the previous meeting, we will proceed with Plan B.前回の会議で合意された通り、我々はB案を進めます。
- 理由と結果が同時に起こるとき(〜するにつれて)「Aが起こるにつれて、Bも起こる」という、二つの物事が並行して変化・進行していく状況を描写するのに非常に便利です。
- As it got darker, the air became colder.暗くなるにつれて、空気は冷たくなっていった。
- He became more confident as he gained more experience in his field.その分野で経験を積むにつれて、彼はより自信を持つようになった。
- As the children grew older, they became more independent.子供たちは年を重ねるにつれて、より自立していった。
使用上の注意点:意味の曖昧さ
‘as’ は「〜のとき」「〜しながら」といった時間を示す意味でも非常によく使われます。そのため、文脈によっては理由なのか時間なのか、意味が曖昧になる可能性があります。
例えば、”She smiled as she read the letter.” は「彼女は手紙を読んだので微笑んだ」(理由)とも、「彼女は手紙を読みながら微笑んだ」(時間)とも解釈できます。
会話では、誤解を避けるために ‘because’ や ‘since’ を使う方が安全な場合が多いでしょう。
まとめ:使い分けのポイントをおさらい
最後に、3つの単語の使い分けをシンプルにまとめます。このポイントを頭に入れて、実際の会話や文章で意識してみてください。
- because: これが理由だ!と、相手が知らない新しい情報や、特に強調したい重要な理由を、情熱を込めて伝えたいときに。
- since: みんな知ってる通り〜なので、と、お互いが共有している事実や状況を前提として、その結果や結論に話の焦点を移したいときに。
- as: sinceよりフォーマルな場面や書き言葉で、客観的な理由を述べるときに。または「〜するにつれて」と、二つの物事が同時に変化していく様子を描写したいときに。
いかがでしたでしょうか。
最初は「少し面倒だな」と感じるかもしれませんが、この使い分けは、英語のコミュニケーションを豊かにするための素晴らしいスパイスです。
まずは「Why?と聞かれたらbecause」「相手も知ってそうなことはsince」という2つの大きなポイントを意識することから始めてみてください。それだけでも、あなたの英語は格段に自然で、洗練された印象に変わっていくはずです。
ぜひ、普段の英会話や学習の中で、楽しみながらこの「理由の使い分け」を試してみてくださいね。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
★ このブログの運営は、初心者専門英会話カーディム が行っています。★