「仕事で英語の電話をかける必要があるけど、緊張して言葉が出てこない…」
そんな悩みを抱えていませんか?
メールやチャットが主流の現代でも、緊急の要件を伝えたり、複雑な問題を解決したり、お客様との信頼関係を築いたりと、電話が重要な役割を担う場面は数多くあります。
しかし、顔が見えない電話での英会話は、対面よりもずっとハードルが高く感じられますよね。特に、英語学習を始めたばかりの方や、久しぶりに英語に触れる方にとっては、大きな不安要素かもしれません。
この記事では、そんなあなたのための「英語の電話完全ガイド」をお届けします。
まずは、こちらの動画で電話対応の基本的な流れをサクッと掴んでみてください。
動画で基本の流れを理解したら、この記事でさらに一歩踏み込んでいきましょう。具体的なフレーズの使い分けや、ネイティブが使う自然な表現、さらには文化的な背景まで、あなたの「知りたい!」にしっかりお答えします。
この記事を読み終える頃には、英語の電話に対する苦手意識が自信に変わり、落ち着いて受話器を取れるようになっているはずです。
なぜ電話の英語は難しい?根本原因を探る
本題に入る前に、なぜ多くの人が電話での英会話を難しく感じるのか、その理由を深く掘り下げてみましょう。原因がわかれば、対策も立てやすくなります。
- 相手の表情やジェスチャーが見えない: 対面なら、相手が頷いたり、困った顔をしたりすることで、話が伝わっているか、いないかを察することができます。しかし、電話では声だけが頼り。これが最大の不安要素です。
- 音声が聞き取りにくいことがある: 電波状況や相手の話し方によっては、音声が不明瞭になることも。ただでさえ緊張しているのに、聞き取れないとパニックになってしまいます。
- 沈黙が気まずく感じる: 日本語の会話では「間」もコミュニケーションの一部ですが、英語の会話、特にビジネスシーンでは、長い沈黙は「話が止まってしまった」「理解されていないのでは?」という不安を相手に与えかねません。
- すぐに返事をしないといけないプレッシャーがある: 「えーっと」「あのー」と考えている時間も、対面より長く感じられます。即座に、的確な言葉で返さなければならないというプレッシャーが、頭を真っ白にさせてしまうのです。
これらの困難を乗り越えるために、決まったフレーズや会話の流れという「型」を知っておくことが、何よりも強力な武器になります。型さえ身につければ、心に余裕が生まれ、会話の内容に集中できるようになるのです。
Step 1: 最初の関門!プロフェッショナルな自己紹介
電話がつながって最初のひと言が、あなたの第一印象を決定づけます。ここでスムーズに自己紹介できるかどうかで、その後の会話の主導権を握れるかが決まると言っても過言ではありません。
基本のフレーズ: This is [名前] from [会社名].
ビジネスの電話で自分を名乗る時、最も一般的でプロフェッショナルな表現がこれです。覚えておけば、まず間違いありません。
- Hello, this is Hanako Tanaka from ABC Corporation.(もしもし、ABC商事の田中花子と申します。)
This is vs. I’m
学校では「私は〜です」を I'm
と習ったのに、なぜ電話では This is
なのでしょうか?
I'm
は、目の前にいる相手に対して自己紹介する時に使われるのが一般的です。一方、This is
は、電話のように相手に姿が見えない状況で「こちら(の声の主)は〜です」というニュアンスで使われます。これは、電話交換手がいた時代の名残とも言われ、電話特有の確立されたマナーとなっています。
This is vs. My name is
My name is
も間違いではありませんが、This is
に比べて少し堅苦しく、改まった響きがあります。「私の名前は〜と申します」と、自己紹介をより丁寧に行うニュアンスです。全くの初対面の相手や、特に敬意を払いたい相手に使うと良いでしょう。
- フォーマル:
My name is Hanako Tanaka from ABC Corporation.
- 一般的:
This is Hanako Tanaka from ABC Corporation.
日常的なビジネスシーンでは This is
を自信を持って使いましょう。
聞き返された時のために!名前のスペルを伝える準備
特に珍しい名前の場合、相手から名前のスペルを聞かれることがあります。慌てないように準備しておきましょう。
相手: Sorry, could you spell your name for me, please? (すみません、お名前のスペルを教えていただけますか?)
あなた: Certainly. It’s T-A-N-A-K-A. (はい。T、A、N、A、K、Aです。)
さらにプロフェッショナルな印象を与えたいなら、フォネティックコード(A for Alpha, B for Bravoのような伝え方)を使うと、聞き間違いを確実に防げます。
It’s Tanaka. T as in Tango, A as in Alpha, N as in November…
Step 2: 相手を待たせない!用件をスマートに伝える技術
自己紹介が終わったら、間髪入れずに電話の目的を伝えましょう。忙しいビジネスパーソンにとって、時間は貴重です。「この電話は何の電話だろう?」と相手を不安にさせない配慮が、信頼関係の第一歩です。
用件を切り出す基本フレーズ
- I’m calling to… (〜するために電話しています。)
- I’m calling about… (〜についてお電話しました。)
- I’m calling regarding… (〜に関してご連絡いたしました。)
about
より少しフォーマル - The reason I’m calling is… (お電話いたしましたのは、〜という理由です。)
これらのフレーズの後に、具体的な目的を続けます。
目的別の例文(バリエーション追加)
アポイントを取りたい場合
- I’m calling to schedule a meeting.(会議の日程を決めたく、お電話いたしました。)
- I’d like to make an appointment with Mr. Smith to discuss the project.(プロジェクトの件で、スミスさんとのアポイントを取りたいのですが。)
以前のやり取りの続きの場合
- I’m calling to follow up on the email I sent yesterday.(昨日お送りしたメールの件で、ご連絡いたしました。)
- I’m calling about the invoice I received this morning.(今朝受け取った請求書の件でお電話しました。)
問い合わせ・情報収集の場合
- I’m calling to inquire about your new product.(新製品についてお伺いしたく、お電話しました。)
- I was hoping to get some more information about the upcoming seminar.(今度のセミナーについて、もう少し詳しい情報をいただければと思いまして。)
Step 3: 担当者へ繋いでもらう魔法のフレーズ
話したい相手が電話に出るとは限りません。受付担当者などに、特定の人物への取り次ぎをお願いする際の丁寧な表現をマスターしましょう。
基本のフレーズ: May I speak to…?
最も一般的で丁寧な聞き方です。これさえ覚えておけば、様々な場面で使えます。
- May I speak to Mr. Smith, please?(スミスさんをお願いできますでしょうか?)
May I speak to…? vs. Could you please put me through to…?
どちらも丁寧な表現ですが、ニュアンスに少し違いがあります。
- May I speak to…?(〜さんと話せますか?)話す許可を求める、最も標準的な表現。
- Could you please put me through to…?(〜さんに繋いでいただけますか?)「電話を転送する・繋ぐ」という行為をより具体的に依頼する表現。少しだけ丁寧さが増すイメージです。
どちらを使っても問題ありませんが、バリエーションとして知っておくと、より洗練された印象になります。
その他の便利な表現
- Is Mr. Smith available?(スミスさんはいらっしゃいますか?)
- Could you please connect me to the sales department?(営業部に繋いでいただけますか?)
- I’d like to speak to someone in charge of marketing.(マーケティングのご担当者様とお話ししたいのですが。)
Step 4: 相手が不在でも慌てない!好印象なメッセージの残し方
話したい相手が不在(会議中、外出中など)であることは日常茶飯事です。そんな時でも、慌てずにプロフェッショナルな対応を心がけることで、あなたの評価はむしろ上がります。
メッセージを残すまでの完璧な流れ
- まず、メッセージを残せるか確認する相手から He is in a meeting right now. Would you like to leave a message? (彼はただいま会議中です。伝言を承りましょうか?) と言われることも多いです。そうでない場合は、こちらから切り出しましょう。
- Could I leave a message?(伝言をお願いできますか?)
- Would it be possible to leave a message?(伝言を残すことは可能でしょうか?)
- 折り返しをお願いし、連絡先を正確に伝える電話番号は、ゆっくり、はっきりと伝えましょう。聞き間違いを防ぐため、繰り返すのも良い方法です。
- Please ask him to call me back.(彼に折り返しお電話いただくようお伝えください。)
- Could you please ask her to call me back at 090-1234-5678?(彼女に090-1234-5678まで折り返しお電話いただくようお伝えいただけますか?)
- 用件は「具体的」かつ「簡潔」に長々と話す必要はありませんが、「何の件で」電話したか、相手が折り返す前に少し準備できる程度の情報を残すのが親切です。
- Bad:
Please tell him to call me.
(用件が不明) - Good:
It's about the proposal we discussed.
(先日お話しした企画の件です。)
- Bad:
- 連絡が取りやすい時間帯を伝える(上級テクニック!)相手への配慮を示す、とても親切な一言です。これにより、電話のすれ違いを防ぐことができます。
- I’ll be in the office until 5 p.m. today.(本日は5時までオフィスにおります。)
- He can reach me anytime this afternoon.(今日の午後でしたらいつでも大丈夫です。)
留守番電話にメッセージを残す場合
留守番電話に切り替わった場合も、基本は同じです。以下の要素を簡潔に、はっきりと、落ち着いて話しましょう。
- 自分の名前と会社名
- 電話した日時
- 簡単な用件
- 折り返してほしい旨と、電話番号
例文:
- Hello, this is Hanako Tanaka from ABC Corporation, calling on Monday morning. I’m calling about the meeting next week. Could you please call me back when you have a moment? My number is 090-1234-5678. Again, the number is 090-1234-5678. Thank you.(もしもし、月曜の朝にお電話しております、ABC商事の田中花子です。来週の会議の件でお電話しました。お時間のある時に折り返しお電話いただけますでしょうか。番号は090-1234-5678です。繰り返します、090-1234-5678です。よろしくお願いいたします。)
Step 5: これで完璧!より自然に聞こえるためのヒント
最後に、あなたの電話英語をワンランクアップさせ、コミュニケーションをより円滑にするためのヒントをいくつかご紹介します。
聞き取れなかったら、勇気を出して聞き返す
分かったふりをするのが一番危険です。後で大きな誤解に繋がる可能性があります。聞き返すことは失礼にはあたりません。むしろ、正確に理解しようとする誠実な姿勢と受け取られます。
- I’m sorry, could you repeat that?(すみません、もう一度言っていただけますか?)
- Could you speak a little more slowly, please?(もう少しゆっくり話していただけますか?)
- I’m sorry, I couldn’t catch that. The connection is a bit weak.(すみません、聞き取れませんでした。少し電波が悪いようです。)
声のトーンと話すスピードを意識する
顔が見えない分、声の印象がすべてです。少しだけゆっくり、はっきりと話すことを心がけましょう。自信がなさそうに小声で話すのではなく、少し明るめのトーンを意識すると、相手に安心感と良い印象を与えられます。口角を少し上げて話すと、自然と声が明るくなりますよ。
「お世話になっております」は英語にない
日本語の便利な挨拶「お世話になっております」に直接対応する英語はありません。代わりに、状況に応じた言葉を使いましょう。
- 電話をかけてくれた相手に:
Thank you for calling.
- メールの返信をもらった後に:
Thank you for your email.
- 久しぶりに話す相手に:
It's great to hear from you. How have you been?
(ご連絡ありがとうございます。お元気でしたか?)
効果的な「相槌」で、聞いてる姿勢を示す
相手が話している時に黙っていると、「聞いてるのかな?」と不安にさせてしまいます。Uh-huh.
, I see.
, Right.
, Okay.
などの簡単な相槌を挟むことで、「ちゃんと聞いていますよ」というサインを送ることができます。
通話をスムーズに終えるための表現
用件が済んだら、プロフェッショナルに電話を切りましょう。
- Thank you very much for your help.(ご協力いただき、誠にありがとうございました。)
- I think that’s everything. Thank you for your time.(お伝えしたいことは以上です。お時間をいただきありがとうございました。)
- I look forward to hearing from you soon.(近いうちにご連絡いただけるのを楽しみにしております。)
- Have a great day.(良い一日を。)
間違いを恐れない
一番大切なのは、完璧な英語を話すことよりも、誠意を持って伝えようとすることです。多少の間違いは誰にでもあります。間違いを恐れずに、まずはこの記事で紹介したフレーズを使って、実際に電話をかけてみましょう。その一歩が、あなたの自信に繋がります。
まとめ

英語での電話対応は、いくつかの「型」と「丁寧な表現」を覚えるだけで、恐怖心は驚くほど薄れます。
- 自己紹介は
This is [名前] from [会社名].
- 用件は
I'm calling to...
で簡潔に - 取り次ぎは
May I speak to...?
- 不在時は
Could I leave a message?
- 聞き取れない時は
Could you repeat that?
- 最後は
Thank you for your time.
で締めくくる
これらの基本を押さえ、聞き取れない時は勇気を持って聞き返す。そして何より、自信を持って話すこと。
最初は誰でも緊張するものです。しかし、練習を重ねるうちに、必ずスムーズに話せるようになります。ぜひ、このガイドを「お守り」として、英語での電話に挑戦してみてください。あなたの成功を応援しています!

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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