「これは私のペンです」と言いたい時、”This is my pen.” なのか “This pen is mine.” なのか、迷った経験はありませんか?あるいは、”the cat’s toy” と “the leg of the chair” で、なぜ「〜の」の言い方が違うのか不思議に思ったことは?英語の「だれだれ“の”」という表現(所有格)は、似たような形が多く、多くの学習者がつまずきやすいポイントです。
しかし、ご安心ください。これらのルールには明確な違いがあり、一度その理屈を理解してしまえば、驚くほど簡単に使い分けることができます。
この記事では、そんな所有格の使い分けを、基本からじっくりと、そして豊富な例文と共に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、
- my vs. mine の違い
- アポストロフィS (‘s) の正しい使い方
- of の使い方
- ‘s と of の使い分け
これらのルールがスッキリ整理され、自信を持って使い分けられるようになっていますよ。
まずはYouTube動画で基本を簡単に理解したいという方は、こちらの動画をご覧ください。このブログでは、動画の内容をさらに深掘りして詳しく解説していきますので、より深く学びたい方はぜひじっくり読み進めてくださいね。
1. 「私の」「あなたの」を表す基本形:my vs. mine
まず、最もよく使う「私の」「あなたの」といった表現から見ていきましょう。これには大きく分けて2つのタイプがあります。文法的には少し難しい言葉ですが、「所有限定詞」と「所有代名詞」と呼ばれます。でも、難しく考える必要はありません。「名詞とセットで使うタイプ」と「単独で使えるタイプ」と覚えておけば大丈夫です。
「〜の」と名詞にくっつく形 (my, your, his, her, its, our, their)
こちらは「名詞とセットで使うタイプ」です。必ず後ろに「何のものか」を示す名詞が来ます。「私の 本」「あなたの 猫」のように、名詞を修飾する形容詞のような働きをします。これだけでは文が成立しないのが特徴です。
- This is my book.
- これは私の本です。
- That is your cat.
- あれはあなたの猫です。
- He sold his car.
- 彼は彼の車を売りました。
- I like her idea.
- 私は彼女の考えが好きです。
- We painted our house.
- 私たちは私たちの家を塗りました。
- Their dog is very friendly.
- 彼らの犬はとても人懐っこいです。
「〜のもの」と単独で使える形 (mine, yours, his, hers, ours, theirs)
こちらは「単独で使えるタイプ」です。それだけで「〜のもの」という意味を表し、後ろに名詞を置きません。”my book” や “your cat” といった「所有格 + 名詞」を丸ごと置き換えることができます。文の主語や目的語、補語として使うことができます。
- This book is mine. (my book の代わり)
- この本は私のものです。
- That cat is yours. (your cat の代わり)
- あの猫はあなたのものです。
- The brilliant idea was hers. (her idea の代わり)
- その素晴らしいアイデアは彼女のものでした。
- The house on the corner is theirs. (their house の代わり)
- 角の家は彼らのものです。
- Is this pen his? (his pen の代わり)
- このペンは彼のですか?
- That table is ours. (our table の代わり)
- あのテーブルは私たちのものです。
注意すべきポイント:アポストロフィはつけない!
“yours”, “hers”, “ours”, “theirs” には、アポストロフィ(’)は絶対につきません。これは非常によくある間違いなので、しっかり覚えておきましょう。”your’s” や “her’s” のような書き方は間違いです。
注意すべきポイント:its vs. it’s
この二つは見た目がそっくりで、発音も同じなため、非常に混同しやすい単語です。しかし、意味は全く異なります。ここを区別できるだけで、あなたの英語はぐっと正確になります。
- its (アポストロフィなし): 「それの」という意味の所有格。
- The cat likes its toy.
- その猫はそれの(自分自身の)おもちゃが好きです。
- The company announced its new policy.
- その会社はそれの(自社の)新しい方針を発表した。
- Don’t judge a book by its cover.
- 本をその表紙で判断してはいけない。(ことわざ)
- The cat likes its toy.
- it’s (アポストロフィあり): “it is” または “it has” の短縮形。
- It’s sunny today. (It is sunny today.)
- 今日は晴れです。
- It’s a beautiful day. (It is a beautiful day.)
- 美しい日です。
- It’s been a long time. (It has been a long time.)
- 久しぶりです。
- It’s sunny today. (It is sunny today.)
簡単な見分け方のヒント:
迷ったときは、”it’s” を “it is” や “it has” に置き換えてみましょう。それで文の意味が通じるなら “it’s” が正解です。意味が通じなければ “its” を使います。
例: “The cat likes (it is) toy.” → 意味が通じないので、正解は “its” です。
2. 人や動物の所有を示す:アポストロフィS (‘s) の世界
人の名前や動物などに「’s」をつけることで、「〜の」という意味を表すことができます。これは、生き物が何かを所有していることを示す、非常に一般的で便利な方法です。
基本ルール
- 単数名詞には「’s」をつける
- Tom’s bag (トムのカバン)
- my mother’s car (私の母の車)
- the cat’s toy (その猫のおもちゃ)
- a doctor’s advice (医者のアドバイス)
- sで終わらない複数名詞にも「’s」をつける不規則な複数形(men, women, children, peopleなど)は、単数形と同じように扱います。
- the children’s room (子供たちの部屋)
- women’s rights (女性の権利)
- men’s clothing (紳士服)
- the people’s choice (人々の選択)
- sで終わる複数名詞にはアポストロフィ(’)だけをつける”students” のように、単語の最後がすでに複数形の “s” で終わっている場合は、さらに “s” を重ねず、アポストロフィだけをつけます。発音も「スチューデンツ」のままで変わりません。
- the students’ desks (生徒たちの机)
- my parents’ house (私の両親の家)
- the dogs’ food (その犬たちのエサ)
sで終わる名前の場合は? (例: James)
Jamesのようにsで終わる名前の場合、「James’s」と「James’」のどちらの形も見られます。これはスタイルガイド(文章の書き方のルールブック)によって推奨が異なるため、ネイティブスピーカーの間でも意見が分かれる点です。しかし、英語学習者にとっては、「’s」をつけると覚えておくのが最もシンプルで間違いがありません。発音も「ジェームズィズ」となり、書き方と一致するため分かりやすいからです。
- This is James’s bike. (推奨)
- これはジェームズの自転車です。
- Chris’s new job sounds interesting. (推奨)
- クリスの新しい仕事は面白そうだ。
共同所有 vs. 個別所有
二人の名前が出てくる場合、「’s」のつけ方で意味が変わる面白いルールがあります。これは、所有関係を明確にするための重要なルールです。
- 最後の名前にだけ「’s」をつける → 2人で1つのものを共有
- John and Mary’s house
- ジョンとメアリーの(共有の)家
- Ben and Jerry’s ice cream
- ベンとジェリーの(共同ブランドの)アイスクリーム
- John and Mary’s house
- 両方の名前に「’s」をつける → それぞれが別のものを所有
- John’s and Mary’s houses
- ジョンの家とメアリーの家(それぞれが別の家を持っている)
- My mother’s and father’s cars are parked outside.
- 母の車と父の車が外に停めてある。(車は2台ある)
- John’s and Mary’s houses
3. モノや概念の所有を示す:of の使い方
一方で、所有する側が「生き物ではないモノ」や「目に見えない概念」の場合、「’s」の代わりに “of” を使うのが一般的です。これは、”of” が持つ「〜に属するもの」「〜の一部」というニュアンスから来ています。
「モノ」の所有・部分を示す
「イスの脚」や「本のタイトル」のように、「全体の中の一部」という関係を表すときによく使われます。モノは脚を積極的に「所有している」わけではなく、脚はイスを構成する「部品」である、と考えると分かりやすいでしょう。
- the leg of the chair (イスの脚)
- the color of the wall (壁の色)
- the roof of the house (家の屋根)
- the title of the book (本のタイトル)
- the screen of the computer (コンピュータの画面)
- the key of the piano (ピアノの鍵盤)
これらの表現で「the chair’s leg」のように「’s」を使うと、間違いではありませんが、少し不自然に聞こえることがあります。特に書き言葉では、”of” を使う方がよりフォーマルで好まれます。迷ったら “of” を使うのが安全です。
「概念」の所有を示す
「練習の重要性」のように、目に見えない抽象的な概念についても “of” が使われます。概念は何かを「所有する」というより、その性質や内容を表すためです。
- the importance of practice (練習の重要性)
- the beginning of the story (物語の始まり)
- the fear of the dark (暗闇への恐怖)
- the beauty of nature (自然の美しさ)
説明が長くなるときも “of” が便利
所有者を表す部分が長くなる場合も “of” を使うと、文がすっきりして分かりやすくなります。これは、英語が「長い修飾語は後ろに置く」という性質を持っているためです。
- The dog of the tall man I saw in the park yesterday.
- 昨日私が公園で見かけた、あの背の高い男性の犬。
- これを「’s」で言うと、”The tall man I saw in the park yesterday’s dog.” となり、どこまでが所有者なのか分かりにくく、ごちゃごちゃした印象になります。
4. 【応用編】’s と of の使い分け:ネイティブ感覚に近づこう
基本は「生き物には’s、モノにはof」ですが、実はこのルールにはいくつかの例外があります。この例外を知ると、あなたの英語はさらに自然になります。
実は、これらの例外には共通点があります。それは「モノを、まるで生き物のように扱う」という考え方です。英語では、無生物であるモノや概念に、比喩的に人格や主体性を持たせることがよくあります。
1. 時間や期間、価値
「今日の天気」や「1週間の休暇」のように、時間や期間を、まるで出来事を「所有する」かのように表現します。これは非常に一般的で、日常会話でも頻繁に使われます。
- today’s weather (今日の天気)
- a week’s vacation (1週間の休暇)
- three years’ experience (3年間の経験)
- a moment’s hesitation (一瞬のためらい)
- a dollar’s worth of candy (1ドル分のキャンディー)
2. 組織・場所・国
会社や政府、国、都市なども、あたかも一つの人格を持った生き物のように、何かを決定したり所有したりするものとして扱われます。
- the company’s new product (その会社の新製品)
- the government’s decision (政府の決定)
- Japan’s economy (日本の経済)
- Tokyo’s subway system (東京の地下鉄網)
- the world’s future (世界の未来)
3. 擬人化された表現
詩的な表現や、生き生きとした描写をしたいとき、モノに命を吹き込んで表現することがあります。これを擬人化と呼びます。
- the sun’s rays (太陽の光線)
- nature’s beauty (自然の美しさ)
- the ocean’s power (海の力)
- at death’s door (死の淵に、瀕死の状態で)
まとめ:所有格の使い分けのポイント

最後に、今日のポイントを整理しましょう。このルールを意識するだけで、あなたの英語はより正確で自然になります。
- 「私の」には2種類ある
my
,your
などは「名詞とセットで使うタイプ」。mine
,yours
などは「単独で使えるタイプ」。アポストロフィは不要。its
(それの) とit's
(it is) の違いに注意!
- ‘s は主に「生き物」がオーナーの時に使う
- 人や動物が何かを所有していることを示します。
- 複数形のsの後にアポストロフィをつけるかどうかに注意しましょう。
- of は主に「モノや概念」がオーナーの時に使う
- 「全体の一部」という関係を表すときに便利です。
- 所有者の説明が長くなる時も文がすっきりします。
- 例外は「モノを生き物のように」扱うとき
- 時間、組織、国、価値などは、例外的に ‘s が使われることがあります。
英語のルールを学ぶには、少し時間と練習が必要です。最初から完璧にできなくても全く心配いりません。大切なのは、たくさんの英語に触れて「こういう時はこう言うんだな」という感覚を少しずつ養っていくことです。映画を見たり、本を読んだりする際に、ぜひ今回学んだ所有格の表現に注意を向けてみてください。
この記事が、あなたの英語学習の助けになれば嬉しいです。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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