「この内容で大丈夫ですか?」「お飲み物はいかがですか?」「転んだけど大丈夫?」
日本語の「大丈夫です」は、本当に便利な言葉ですよね。承諾、断り、心配への返事など、あらゆる場面で使えます。
しかし、この便利さが、英語を学ぶときには大きな壁になることがあります。「大丈夫です」をそのまま英語にしようとして、「あれ、なんて言えばいいんだろう?」と困った経験はありませんか?
実は、英語には日本語の「大丈夫です」に1対1で対応する万能なフレーズは存在しません。状況や伝えたい気持ちによって、表現を正しく使い分ける必要があるのです。
この記事では、英語学習を再開したばかりの初心者の方でも安心して学べるように、「大丈夫です」が持つ5つの状況に合わせて、具体的な英語フレーズを徹底解説します。
まずは基本を簡単に理解したいという方は、こちらのYouTube動画をご覧ください。さらに深く、自信を持って使いこなせるようになりたい方は、このままじっくりと記事を読み進めてくださいね。
この記事を読み終える頃には、あなたはもう「大丈夫です」の英語表現に迷うことはありません。場面に合ったフレーズが自然と口から出てくるようになっているはずです。
なぜ「大丈夫です」の使い分けが必要なの?
英語で自然なコミュニケーションをとるためには、単に単語を覚えるだけでなく、その言葉が持つ「ニュアンス」や「使われる場面」を理解することがとても大切です。
日本語の「大丈夫です」は、とても広い意味を持つ言葉です。
- 心配してくれた相手を「安心させる」とき
- 申し出を「丁寧に断る」とき
- 謝罪に対して「許しを示す」とき
これらをすべて同じ英語で表現しようとすると、意図が正しく伝わらなかったり、時には失礼な印象を与えてしまったりすることもあります。
例えば、レストランで「お水のおかわりはいかがですか?」と聞かれたときに、良かれと思って “I’m fine.” と答えてしまうと、店員さんは「(私は元気だから放っておいて)」という冷たいニュアンスに受け取ってしまうかもしれません。
このような誤解を避け、あなたの本当の気持ちを伝えるために、状況に合わせたフレーズを学んでいきましょう。
状況1. 心配されたときの「大丈夫です」
誰かがあなたのことを気遣って「大丈夫?」と声をかけてくれた。そんな時に、相手を安心させるための「大丈夫です」です。
基本のフレーズ: I’m okay. / I’m alright.
最も一般的で安全な表現がこの2つです。身体的にも、精神的にも「問題ないですよ」と伝えることができます。
- A: You look pale. Are you okay?(顔色が悪いですよ。大丈夫ですか?)
- B: I’m okay, thanks for asking.(大丈夫です、聞いてくれてありがとう。)
- A: Whoa, you almost fell! Are you alright?(うわっ、転びそうだったけど!大丈夫かい?)
- B: Yes, I’m alright. No problem.(ええ、大丈夫です。問題ありません。)
ポイントは、”thanks” や “thanks for asking”(聞いてくれてありがとう)のように、感謝の言葉を添えることです。これにより、相手の気遣いに対する感謝の気持ちが伝わり、より丁寧で温かい印象になります。
注意!「I’m fine.」の落とし穴
中学校で「元気です」は “I’m fine, thank you.” と習った記憶がある方も多いでしょう。しかし、現代の英会話、特にアメリカ英語では “I’m fine.” は注意が必要なフレーズです。
言い方や状況によっては、「本当は大丈夫じゃないけど、そのことについては話したくない」「放っておいてほしい」という、少し冷たく突き放したニュアンスで伝わることがあります。
もちろん、ネイティブスピーカーも “I’m fine.” を使いますが、それは声のトーンや表情など、高度な感情表現とセットの場合が多いです。英語学習初心者のうちは、誤解を避けるためにも、まずは “I’m okay.” や “I’m alright.” を使うことをお勧めします。
状況2. 申し出を丁寧に断るときの「大丈夫です」
何かを勧められたり、手伝いを申し出てくれたりしたときに、「お気持ちは嬉しいのですが、結構です」と丁寧に断る場面です。
断りの王道フレーズ: No, thank you.
最も標準的で、どんな相手にも失礼なく使えるのが “No, thank you.” です。フォーマルな場でもカジュアルな場でも使える、まさに「断りの王道」です。
- A: Would you like some more coffee?(コーヒーのおかわりはいかがですか?)
- B: No, thank you. I’m still good.(いいえ、結構です。まだ十分にありますので。)
絶対にやってはいけないのが、”thank you” をつけずに “No.” とだけ言うこと。これは非常にぶっきらぼうで、相手を不快にさせてしまう可能性が高いので、必ず “thank you” や “thanks” を添えましょう。
カジュアルな断り方: I’m good, thanks. / I’m okay, thanks.
より口語的で、特に北米でよく使われるのが “I’m good, thanks.” です。「私は満たされています(だからこれ以上は必要ありません)」というニュアンスが含まれています。
- A: Do you need a hand with that bag?(そのカバン、持ちましょうか?)
- B: I’m good, thanks!(大丈夫です、ありがとう!)
- A: We’re ordering pizza. Do you want some?(ピザを注文するけど、いる?)
- B: I’m okay, thanks. I just had lunch.(大丈夫、ありがとう。お昼ごはんを食べたばかりなんだ。)
この “I’m good.” vs. “No, thank you.” の違いは、前者が「自分の状態」を述べて間接的に断るのに対し、後者は「申し出そのもの」を直接的に断る点にあります。まずは “No, thank you.” をマスターし、慣れてきたら “I’m good.” も使ってみると良いでしょう。
状況3. 謝罪されたときの「大丈夫ですよ」
相手が「ごめんなさい」と謝ってきたときに、「気にしないでくださいね」と伝えるための「大丈夫です」。これは単に事実を伝えるだけでなく、相手を許し、安心させてあげるための、思いやりが込められた優しい一言です。ミスの度合いや相手との関係性によって、最適なフレーズを選べるようになりましょう。
日常の小さなミスには: It’s okay. / It’s alright. / No problem.
相手が少しぶつかってしまった、ペンを間違えて取ってしまった、といった日常のささいな出来事に対しては、これらのフレーズがぴったりです。どれも「大丈夫ですよ」という意味ですが、微妙なニュアンスの違いを知っておくと、より自然に使い分けられます。
- It’s okay. / It’s alright.これらは「(少しは何かあったかもしれないけど)許容範囲ですよ、問題ないですよ」というニュアンスです。”It’s alright.” の方が少しだけ丁寧な響きを持つことがありますが、ほとんど同じように使えます。
- A: Oops, sorry. I stepped on your foot.(おっと、ごめんなさい。足を踏んでしまいました。)
- B: It’s okay. Don’t worry.(大丈夫ですよ。ご心配なく。)
- A: I’m sorry for the noise. My kids are excited.(うるさくしてすみません。子どもたちがはしゃいでしまって。)
- B: It’s alright. I understand.(大丈夫ですよ。分かります。)
- No problem.これは「(私にとっては)何の問題もありませんでしたよ」と、迷惑や手間が全くかからなかったことを強調する表現です。相手を力強く安心させたいときに効果的です。
- A: Sorry I’m late. The traffic was terrible.(遅れてごめん。渋滞がひどくて。)
- B: No problem. I just got here myself.(大丈夫だよ。私も今着いたところだから。)
もっとカジュアルに: No worries. / No biggie.
親しい友人や同僚との間では、よりリラックスした表現が好まれます。
- No worries.「心配ご無用!」といったニュアンスの、非常にフレンドリーな表現です。オーストラリアでよく使われることで知られていますが、今では世界中のネイティブスピーカーが日常的に使います。
- A: Sorry, I forgot to call you back.(ごめん、電話をかけ直すのを忘れてた。)
- B: No worries. We can talk now.(大丈夫、気にしないで。今話せるよ。)
- No biggie.これは “It’s no big deal.”(大したことじゃないよ)をさらに短くしたスラング表現です。本当に些細なことだと伝えたいときに使います。
- A: My bad, I brought the wrong file.(ごめん、違うファイル持ってきちゃった。)
- B: No biggie. We can download it.(平気だよ。ダウンロードすればいいし。)
相手を心から気遣う: Don’t worry about it.
相手が犯したミスを重く受け止め、本当に申し訳なさそうにしている。そんなとき、その罪悪感を和らげてあげたいときに使うのが、このとても温かい表現です。”No problem.” が「問題の有無」に焦点を当てているのに対し、”Don’t worry about it.” は「相手の感情」に寄り添い、「(あなたが)心を痛める必要はないですよ」と伝えるニュアンスが強く出ます。
- A: I feel so bad that I broke your favorite cup. I’ll buy you a new one.(あなたのお気に入りのカップを割ってしまって、本当に申し訳ないです。新しいのを買います。)
- B: Hey, don’t worry about it. It was just a cup. The important thing is you didn’t get hurt.(大丈夫、本当に気にしないで。ただのカップだから。大事なのは、君が怪我をしなかったことだよ。)
ただし、もし相手のミスが深刻で、こちらも「心配だ」と感じている場合にこのフレーズを使うと、不誠実に聞こえる可能性もあります。その場合は、「謝罪は受け止めます。一緒に解決策を考えましょう」という姿勢を示す別の表現を選ぶのが賢明です。
状況4. 問題がないことを伝える「大丈夫です」
「この計画で進めて大丈夫ですか?」「準備はOK?」など、物事が順調であることや、何かについて問題がないことを確認・報告する場面です。
シンプルに伝える: It’s fine. / Everything’s okay.
シンプルに「問題ないです」と伝えるときの基本表現です。
- A: Is this schedule okay with you?(このスケジュールで大丈夫ですか?)
- B: Yes, it’s fine.(はい、問題ありません。)
- A: How’s the project going?(プロジェクトの進捗はどうですか?)
- B: Everything’s okay so far.(今のところ、すべて順調です。)
ビジネスシーンで使える表現
ビジネスの文脈では、より明確でプロフェッショナルな表現が好まれます。
- There are no issues on my end.(こちら側では特に問題はありません。)
- Everything looks good.(確認しましたが、問題ないようです。)
状況5. 許可するときの「大丈夫ですよ」
「これを借りてもいいですか?」と聞かれたときに、「ええ、いいですよ」と許可を与えるときの「大丈夫です」。
基本の許可フレーズ: Sure. / Of course.
「もちろん」という意味で、快く許可する気持ちが伝わります。
- A: Can I use this pen?(このペン、使ってもいいですか?)
- B: Sure.(ええ、どうぞ。)
- A: May I ask a question?(質問してもよろしいでしょうか?)
- B: Of course.(もちろんです。)
行動を促す: Go ahead.
「どうぞ、やってください」と、相手の行動を積極的に促す表現です。
- A: Can I start the presentation now?(プレゼンテーションを始めてもよろしいですか?)
- B: Yes, go ahead.(はい、どうぞ。)
まとめ:自信を持って使い分けよう!
いかがでしたか?日本語では一言で済む「大丈夫です」が、英語ではこんなにも豊かな表現に分かれていることに驚かれたかもしれません。
最後に、今日のポイントをおさらいしましょう。
- 心配されたら → I’m okay, thanks.
- 丁寧に断るなら → No, thank you.
- 謝られたら → No problem. / It’s okay.
- 許可するなら → Sure. / Go ahead.
まずは、この基本のパターンから覚えて、少しずつ使ってみてください。大切なのは、完璧を目指すことよりも、伝えたい気持ちに合った言葉を選ぼうとすることです。
今回ご紹介したフレーズを参考に、あなたの英語コミュニケーションがもっと豊かで楽しいものになることを願っています。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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