「いってきます」「ただいま」「おかえり」…これらは私たちが毎日当たり前のように使っている挨拶ですよね。では、これを英語で言おうとすると、どんな言葉が思い浮かびますか?
実は、これらの日本語の挨拶にぴったり当てはまる英語の決まったフレーズは存在しないのです。
この記事の基本を解説したYouTube動画はこちらです。まずはこちらで概要を掴んでから、この記事を読んでいただくと、さらに理解が深まります。
動画で基本を掴んだ方も、もっと詳しく知りたいという方も、ぜひこの先を読み進めてみてください。なぜ直訳できないのかという文化的な背景から、状況に合わせた自然な英語表現まで、たくさんの例文を交えながら詳しく解説していきます。
なぜ「いってきます」や「ただいま」は英語に直訳できないの?
ぴったりな英語表現がないと聞いて、「どうして?」と不思議に思いますよね。その答えは、日本と英語圏の文化や習慣の違いにあります。
- 「いってきます」に込められた意味「いってきます」は、単に「出かける」という事実を伝えるだけではありません。「行って、そして(無事に)帰って来ます」という、帰還を前提とした一種の約束のようなニュアンスが含まれています。そこには、家に残る人への「心配しないでね」という配慮や思いやりが込められています。
- 「ただいま」に込められた意味同様に、「ただいま」も「今、帰りました」という事実報告だけではありません。「無事に帰ってきましたよ」という安堵の報告であり、それに対して「おかえり」と返すことで、お互いの無事を確認し合うという大切な役割があります。
このように、日本の挨拶は、人と人とのつながりや、集団の中での調和を大切にする文化から生まれています。家や職場を「帰るべき場所(=内)」と捉え、そこへの出入りを儀式のように確認し合う、日本独特のコミュニケーションなのです。
一方、英語圏の文化では、より個人を尊重し、情報を直接的に伝えるコミュニケーションが好まれる傾向にあります。もちろん、相手を気遣う気持ちがないわけではありません。しかし、その気持ちは定型化された挨拶よりも、具体的な言葉や行動で示されることが多いのです。
大切なのは、完璧な翻訳を探すことではありません。その状況で「何を伝えたいか」という気持ちに焦点を当て、それに合ったシンプルな英語表現を選ぶことです。
状況別「いってきます」の自然な英語フレーズ
それでは、具体的にどのような表現が使われるのか、状況別に見ていきましょう。
家族に対して家を出る時
家族に「いってきます」と伝える時は、カジュアルで温かい表現が中心です。
- Bye!(バイバイ!)一番シンプルでよく使われます。
- See you later!(また後でね!)これも非常に一般的で、「また会おうね」という親しみが伝わります。「いってきます」の「帰ってくる」というニュアンスに一番近いかもしれません。
- I’m leaving now.(もう行くね。)出発することを伝える、ストレートな表現です。
- I’m off!(行ってくるね!)こちらも「出かけるよ」という気軽なニュアンスでよく使われます。 “I’m off to school!” (学校に行ってくるね!) のように、行き先を付け加えることもできます。
職場から一時的に外出する時 (昼食・会議など)
オフィスで一時的に席を外す場合は、「不在になる」という情報を伝える実用的な表現がメインになります。
- I’m going out for lunch.(お昼に行ってきます。)
- I’ll be back in an hour.(1時間で戻ります。)戻る時間を具体的に伝えると、より丁寧です。
- I’m off to a meeting.(会議に行ってきます。)
会社を退社する時
一日の仕事を終えて帰る時の挨拶です。日本語の「お先に失礼します」は、残って働く人への配慮が強い独特な表現ですが、英語ではもう少しシンプルです。
- Bye everyone!(皆さん、さようなら!)
- See you tomorrow!(また明日!)
- Have a good evening!(良い夜を!)夕方以降であれば、これがとても自然な挨拶になります。
「いってらっしゃい」は英語でどう言う?
出かける人を見送る「いってらっしゃい」も、相手を気遣う気持ちが大切です。「安全に行って帰ってきてね」という願いを込めて、次のような言葉をかけます。
- Bye!(バイバイ!)
- Have a good day!(良い一日を!)最も一般的で、温かい気持ちが伝わる表現です。
- Take care!(気をつけてね!)相手の安全を気遣う気持ちが伝わります。
- Drive safe!(安全運転でね!)車で出かける相手にぴったりの一言です。
これらの表現は、組み合わせて使うこともよくあります。
例: “Bye, have a good day!” (じゃあね、良い一日を!)
状況別「ただいま」の自然な英語フレーズ
家に帰ってきた時
帰宅を知らせる「ただいま」に最も近いのがこの表現です。
- I’m home!(帰ったよ!)これが「ただいま」の最も一般的な英語表現です。家族がいるとわかっている時に使います。
- I’m back!(戻ったよ!)こちらもよく使われます。「home」よりも少し広い意味で「戻った」というニュアンスです。
- Hello! vs. Hi!(やあ!)家に入ってすぐに誰かに会った時は、シンプルにこう挨拶するだけでも「帰ってきた」ことが伝わります。
会社に戻ってきた時
外出先からオフィスに戻った時は、「業務に戻りました」という報告が中心になります。
- I’m back.(戻りました。)シンプルですが、これで十分伝わります。
- I’m back at my desk.(席に戻りました。)より具体的に伝える表現です。
状況別「おかえり」の自然な英語フレーズ
帰ってきた人を迎える「おかえり」。英語では意外なほどシンプルな言葉が使われます。
家族や同居人を迎える時
- Hi! vs. Hello!(やあ!/こんにちは!)実は、これが最も自然で一般的な「おかえり」の表現です。相手の帰宅に気づいたよ、という合図になります。
- Welcome home! vs. Welcome back!(おかえりなさい!)もちろん間違いではありませんが、少しだけフォーマルな響きがあります。毎日の挨拶というよりは、旅行や出張など、少し長い不在から帰ってきた相手に使うと、より気持ちが伝わります。
- Hey, you’re back!(お、帰ってきたね!)カジュアルで親しみのある、とても自然な表現です。
「おかえり」から会話を広げる一言
「おかえり」の挨拶の後に、ぜひ付け加えてほしい魔法の言葉があります。
- How was your day?(今日はどうだった?)
この一言を加えるだけで、相手への関心や「あなたのことを気にかけていましたよ」という気持ちが伝わり、会話がぐっと自然になります。 “Hi, how was your day?” (おかえり、今日はどうだった?) のように、挨拶とセットで使ってみましょう。
まとめ:大切なのは気持ちを伝えること
「いってきます」「ただいま」「おかえり」「いってらっしゃい」。
これらの日本語の挨拶は、私たちの生活と文化に深く根付いた、思いやりにあふれる美しい言葉です。
英語に置き換える時は、完璧な一つの正解を探すのではなく、その時々の状況と「伝えたい気持ち」に合わせて、シンプルで自然な言葉を選ぶことが大切です。
- 出かける時は、まず “Bye!” や “See you later!”
- 帰ってきたら、”I’m home!”
- 迎える時は、笑顔で “Hi!”
まずはここから始めてみませんか?
難しく考えすぎず、簡単なフレーズからどんどん使ってみることが、英語での自然なコミュニケーションへの第一歩です。あなたの英語学習の旅が、豊かなものになるよう応援しています。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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