「私の家は…」と言いたい時、”My house is…” と “My home is…” のどちらを使えばいいか、深く考えずに使っていませんか?
あるいは、海外の方に「マンションに住んでいます」と伝えたら、想像もしなかった反応が返ってきて、驚いてしまった…なんて経験をお持ちの方もいるかもしれません。
英語を学び直す大人にとって、このような日常的な単語の使い分けは、意外と大きな壁になります。しかし、この壁を乗り越えることで、あなたの英語はもっと自然で、生き生きとしたものに変わります。
この記事では、そんな英語学習者さんがつまずきやすい「家」にまつわる英語表現を、根本からスッキリ解決していきます。一つ一つの単語が持つ「心」を理解すれば、もう迷うことはありません。
まずは、こちらのYouTube動画で基本をサクッと5分で学び、この記事でさらに深く、そして広く知識を定着させていきましょう。動画と合わせて読むことで、理解が何倍にも深まることをお約束します。
なぜ私たちは “House” と “Home” で混乱するの?
この二つの単語の違いは、単なる単語の暗記では乗り越えられない、英語の微妙なニュアンスを理解する上でとても良い練習問題です。結論から言うと、この二つは冷たい「モノ」と温かい「ココロ」の違いで説明できます。”House” がコンクリートや木材でできた「物体」を指すのに対し、”Home” はそこに住む人々の感情や思い出が詰まった「場所」を指すのです。
“House” は物理的な「建物」そのもの
“House” は、目に見える物理的な「家」、つまり客観的な存在としての建物そのものを指します。
壁や屋根があり、ドアや窓がある、コンクリートや木でできた構造物としての家です。不動産情報に載っている「物件」と言い換えてもいいでしょう。
- 数えることができます: one house, two houses, a lot of houses.
- 物理的なアクションの対象になります: 買ったり (buy)、売ったり (sell)、建てたり (build)、色を塗ったり (paint)、修理したり (repair) できます。
- 外見や構造を説明する時に使います: 大きさ、デザイン、部屋の数、建築様式などを具体的に語る場面で活躍します。
例文で見てみよう
- They are building a new house across the street.日本語訳: 彼らは通りの向かいに新しい家を建てています。(「建物を建設している」という物理的な行為を表しています)
- My house has a blue roof and a small garden.日本語訳: 私の家は青い屋根で、小さな庭があります。(建物の「見た目」と付随する設備を客観的に説明しています)
- The real estate agent showed us three houses today.日本語訳: 不動産業者は今日、私たちに3軒の家を見せてくれました。(「商品」「物件」として扱われる家を指しています)
- A detached house (一戸建て) is more expensive than a townhouse (長屋式集合住宅) in this area.日本語訳: この地域では、一戸建てはタウンハウスより高価です。(住宅の種類を分類し、比較しています)
“Home” は心安らぐ「帰る場所」であり「家庭」
一方、”Home” は、もっと感情的で温かく、主観的な心の中にある「帰る場所」を指します。
家族が待っていたり、心から安心できたり、愛情や思い出が詰まっている場所、それが “home” です。物理的な建物の種類は一切問いません。たとえそれがアパートの一室でも、キャンピングカーでも、あるいは生まれ育った故郷の街全体でさえも、その人にとっての “home” になり得るのです。
- 抽象的な概念なので、基本的には数えません。
- 心の動きや感情を表す動詞と相性抜群です: 「作る(make)」「恋しく思う(miss)」「感じる(feel)」「帰る(go, come)」といった言葉と一緒に使われることが多いです。
- 「家庭」というニュアンスも強く含みます: “a happy home” と言えば「幸せな家庭」を意味し、建物のことだけを指しているわけではありません。
例文で見てみよう
- I miss my home and my family.日本語訳: 我が家と家族が恋しいです。(建物そのものではなく、そこにいる人や思い出、温かい雰囲気を含めて恋しい、という感情です。”I miss my house.” とは普通言いません)
- There’s no place like home.日本語訳: 我が家に勝る場所はない。(有名な映画のセリフですね。どんな豪華な場所よりも、自分が心から安心できる居場所が一番、という意味です)
- Please make yourself at home.日本語訳: どうぞ、くつろいでくださいね。(「ここをあなた自身の家だと思って、心からリラックスしてください」という、最高のおもてなしの表現です)
- She left home when she was 18 to go to college.日本語訳: 彼女は大学に行くため、18歳で実家を出ました。(物理的な家だけでなく、「親元」というニュアンスです)
一目でわかる!”House” vs. “Home” まとめ
特徴 | House (ハウス) | Home (ホーム) |
イメージ | 物理的な「建物」、物件 | 感情的な「帰る場所」「家庭」 |
性質 | コンクリート、客観的、冷たい | 心、愛情、主観的、温かい |
焦点 | デザイン、大きさ、素材、構造 | 快適さ、家族、思い出、安心感 |
できること | 建てる、買う、売る、塗装する | 感じる、恋しく思う、作る、帰る |
この二つの違いは、英語が物事の「事実」と「感情」をいかに使い分けているかを示す良い例と言えるでしょう。
絶対に押さえておきたい文法ポイント
この二つの単語の使い分けには、避けて通れない重要な文法ルールがいくつかあります。ここをマスターすれば、あなたの英語は格段にネイティブらしくなります。
ポイント1: “go home” に “to” は絶対に要らない!
「家に帰る」は “go home” です。”go to home” という言い方は存在しません。
これは、”home” が「自分の家へ」という方向・目的地を示す副詞としての働きを持っているからです。”to home” と言うと、「~へ」という意味が二重になってしまうのです。
“here” (ここへ) や “there” (そこへ) と同じ仲間だと考えると非常に分かりやすいです。
- go here (ここへ行く)
- come here (ここへ来る)
- get there (そこへ着く)
- go home (家に帰る)
- come home (家に帰ってくる)
- get home (家に着く)
一方で、”house” はただの名詞なので、目的地として示す場合は必ず前置詞の “to” が必要です。
- I’m going to my friend’s house.日本語訳: 友達の家に行きます。
- × I’m going my friend’s house. (間違い)
ポイント2: 「家にいる」は “at home” が基本
「(私は)家にいます」と自分の状態を伝える時は “I’m at home.” と言うのが最も一般的で自然です。
では、”in the house” はどうでしょう?これも「家の中にいる」という意味ですが、より「建物の内部に」いることを物理的に強調したい時に使います。
- A: Is Kenji there? (ケンジさんはいますか?)
- B: Yes, he is at home. (はい、家にいますよ)(「外出しておらず、在宅している」という状態を伝えています)
- It’s raining, so the children are playing in the house.日本語訳: 雨が降っているので、子供たちは家の中で遊んでいます。(「外ではなく、建物の中で」という場所を明確に示しています)
【最重要注意点】
“She is in a home.” と言うと、全く違う、そして非常に深刻な意味になってしまいます。冠詞の “a” がつくと、「(彼女自身の家ではない)とある施設」という意味になり、「彼女は老人ホームなどの施設に入っています」と聞こえてしまうのです。これは大きな誤解を招く可能性があるので、必ず “at home” を使うようにしましょう。
日本語の「家(いえ)」と「うち」が混乱の原因?
そもそも、なぜ私たちは “house” と “home” でこれほど迷ってしまうのでしょうか。その大きな原因の一つが、私たちの母国語である日本語の特性にあります。
- 家(いえ): 比較的客観的で、物理的な建物を指すことが多いです。「立派な家(いえ)だね」という時は、建物の構造やデザインを評価しています。これは “house” のイメージに近いですね。
- 家(うち): 自分の所属する集団や、テリトリーの内側という主観的なニュアンスが強くなります。「うちの会社では」「うちの子が」のように、家族や自分の所属グループを指して使います。これは “home” の持つ「心安らぐ場所」「自分の居場所」という温かいイメージと重なります。
日本語では、この「いえ」と「うち」を文脈に応じて柔軟に使い分けていますが、英語では “house” と “home” という完全に別の単語で、その違いをはっきりと区別します。この根本的な違いを意識することが、二つの単語を自在に使い分けるための第一歩です。
衝撃の事実!日本の「マンション」は英語の “mansion” ではない
さて、もう一つの大きなテーマ、「マンション」に移りましょう。
もしあなたが日本で一般的な鉄筋コンクリートの集合住宅、つまり「マンション」に住んでいて、そのことを自己紹介で “I live in a mansion.” と言ったとしたら、相手はきっと目を丸くして、あなたが大富豪か何かだと勘違いするでしょう。
なぜなら、英語ネイティブが “mansion” という単語から想像するものは、日本のそれとは全くの別物だからです。
英語の “Mansion” は息をのむような「大邸宅・豪邸」
英語の “mansion” は、広大な敷地に建てられた、プールやテニスコート、多くの寝室を持つような、いわゆる「豪邸」や「お屋敷」を指します。ハリウッドスターや貴族が住んでいるような、壮麗な建物をイメージしてください。
ですから、”My mansion is on the 5th floor.” (私の豪邸は5階にあります) と言ってしまうと、「豪邸がどうして建物の一室なの?」と、相手を完全に混乱させてしまうのです。
日本の「マンション」は、夢を売るための「和製英語」
では、私たちが普段使っている「マンション」という言葉は一体何なのでしょうか?
これは、英語の単語を借りて日本独自の意味で使われるようになった「和製英語」の代表例です。
1960年代頃、日本の不動産業界が、それまでの木造の「アパート」よりも、耐火・防音性に優れた頑丈な鉄筋コンクリート造りの集合住宅を販売し始めました。その際に、既存のアパートとの差別化を図り、より高級で近代的なイメージを持たせるために、豪華な響きを持つ “mansion” という言葉をマーケティング戦略として採用したのが始まりと言われています。つまり、「あんな素敵な家に住みたい」という人々の憧れを掻き立てるためのキャッチコピーだったのです。
じゃあ、日本の「マンション」は、なんて言えばいいの?
海外の方に誤解なく、あなたの住まいについて伝えるには、以下の単語を使いましょう。これが世界標準です。
- apartment (アパートメント): 最も一般的で、特にアメリカ英語で広く使われます。賃貸・分譲を問わず使えます。
- flat (フラット): 主にイギリス英語で使われます。”apartment” と同じ意味です。
- condominium / condo (コンドミニアム / コンド): 「分譲マンション」を指す最も正確な単語です。もし購入した物件であれば、これを使うとより正確に伝わります。”condo” はその一般的な略語です。
建物全体を指す場合は apartment building (集合住宅の建物) や apartment complex (団地や複数の棟からなる集合住宅) と言います。
例文で見てみよう
- I live in an apartment in Tokyo.日本語訳: 私は東京のアパート(マンション)に住んでいます。
- My condo has a great view of the city.日本語訳: 私の(分譲)マンションは、街の景色がとても良いです。
- She lives in a modern apartment building with a gym.日本語訳: 彼女はジム付きの近代的なマンション(の建物)に住んでいます。
- In London, many people live in flats.日本語訳: ロンドンでは、多くの人々がフラット(マンション)に住んでいます。
まとめ:言葉の背景を理解して、もっと伝わる英語へ
今回は、「家」という私たちにとって最も身近なテーマにまつわる、重要で興味深い英語表現を深掘りしました。
- House は、客観的で物理的な「建物」。
- Home は、主観的で心安らぐ「帰る場所・家庭」。
- “go home” “get home” など、動きを表す動詞と使う時は “to” が不要。
- 日本の「マンション」は和製英語。正しくは apartment や condo。
- 英語の mansion は、私たちが想像もつかないような「大邸宅」。
単語を一つ一つ機械的に覚えるのではなく、その言葉が持つイメージや文化的背景、歴史まで知ることで、英語学習は一気に面白い「発見の旅」に変わります。
今日学んだことを、ぜひ明日からの英会話やメール、SNSでの発信などで意識して使ってみてください。たとえ間違えても大丈夫。その一つ一つの経験が、あなたの英語をより豊かで血の通ったものにしてくれるはずです。挑戦し続けることが、上達への唯一にして最高の鍵ですよ。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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