英語の「聞く」には “hear” と “listen” の2つの単語があります。どちらも日本語では「聞く」と訳せますが、実は使われる場面やニュアンスが全く違います。この違いが分からずに、「今、どっちの単語を使うのが正解なんだろう?」と会話中に迷ってしまったり、間違えて使ってしまったり…という経験は、英語を学ぶ多くの人が通る道です。
この記事では、そんなあなたの長年の悩みをスッキリ解決します。
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この記事を読み終わる頃には、あなたはもう “hear” と “listen” の使い分けに迷うことはなくなり、より正確で自然な英語を話せるようになっているはずです。
Hear vs. Listen:最大の違いは「意識」と「意図」
“hear” と “listen” を使い分ける最も大切なポイント、それは「意識して、意図を持って聞いているかどうか」です。違いは、本当にこれだけと言っても過言ではありません。
- Hear: 意識していないのに、自然と音が耳に入ってくる状態。「聞こえる」という感覚や能力。
- Listen: 意識的に、注意を向けて耳を傾ける行為。「聞く・聴く」という行動。
この根本的な違いを、それぞれの単語の世界を覗きながら、もう少し詳しく見ていきましょう。
Hear の世界:意図せず「聞こえる」
“Hear” は、あなたが特に意識していなくても、音が勝手に耳に飛び込んでくるような、受動的な状況で使います。努力や集中は必要ありません。ただそこにいて、聴力さえあれば「聞こえる」という、あなたに「起こる」出来事を表します。
例えるなら、目を開けていれば景色が自然と目に入ってくるのと同じです。耳も同じで、まるでセンサーのように周りの音を無意識に拾っています。それが “hear” の感覚です。
Hear を使う具体的な場面
- 突然、予期しない音がした時Suddenly, I heard a loud noise outside.突然、外で大きな物音が聞こえました。(物音を聞こうと思っていたわけではなく、勝手に耳に入ってきた状況です)Did you hear that? I think something fell in the kitchen.今の音、聞こえた?キッチンで何かが落ちたみたい。
- 相手の声が物理的に届いているか確認する時”Can you hear me?” “Yes, I can hear you clearly.”「私の声、聞こえますか?」「はい、はっきりと聞こえますよ」(オンライン会議などでよく使われるフレーズですね。声が耳に届いているか、という能力や事実を確認しています)Speak a little louder, please. I can’t hear you very well.もう少し大きな声で話してください。よく聞こえません。
- 周りの環境音がなんとなく耳に入ってくる時I can hear the rain outside.外で雨が降っているのが聞こえる。(雨の音に集中しているわけではなく、BGMのように聞こえてくる感じです)I can hear children playing in the park from my room.自分の部屋から、公園で子供たちが遊んでいるのが聞こえる。
- 噂やニュースを伝え聞く時”Hear” は、音だけでなく、情報やニュースを人づてに「聞く」という場面でも頻繁に使われます。情報が自分のところに「やってきた」というニュアンスです。I heard that a new cafe opened near the station.駅の近くに新しいカフェがオープンしたって聞いたよ。Have you heard the news about the election?選挙についてのニュースは聞きましたか?
このように “hear” は、「聞こえる」という状態や能力を表すことが多いので、”I am hearing” のように進行形で使われることはほとんどありません。”I can hear…” や “I heard…” の形が一般的だと覚えておきましょう。
Listen の世界:意識して「聞く・聴く」
一方で “listen” は、特定の音や話に意識的に注意を向け、集中する能動的な行為を表します。自分で「聞こう!」と思って耳を傾ける、これが “listen” の世界です。
そこには、内容を理解しようとしたり、楽しもうとしたり、あるいは指示に従おうとしたりする明確な「意図」が存在します。
Listen を使う具体的な場面
- 音楽やラジオなどを楽しむ時I love to listen to the radio while driving.私は運転中にラジオを聴くのが大好きです。(ラジオ番組の内容に耳を傾け、それを楽しんでいます)What kind of music do you usually listen to?普段はどんな音楽を聴きますか?
- 人の話や指示を注意して聞く時You should listen to your doctor’s advice carefully.あなたはお医者さんのアドバイスを注意深く聞くべきです。(ただ聞くだけでなく、アドバイスの内容を理解し、それに従うべきだという強いニュアンスが含まれます)Listen carefully to the instructions before you start the test.テストを始める前に、指示を注意深く聞きなさい。
- 相手に話を聞いてほしい時Are you listening to me? This is important.ねえ、私の話聞いてる?大事なことなんだよ。(ただ音が耳に入っているだけでなく、「私に意識を向けて、話を理解して」と働きかけている状況です)Nobody listens to me, even when I have a good idea.私が良いアイデアを出した時でさえ、誰も私の言うことを聞いてくれない。(ここでは「話の内容を真剣に受け止めてくれない」という嘆きが表現されています)
文法ルール:Listen には “to” を忘れずに!
“hear” と “listen” の使い分けで、文法的に最も重要で、そして多くの人が間違えやすいルールがあります。それは、”listen” の後に「何を聞くのか」という対象を続ける場合、ほとんどの場合で前置詞の “to” が必要になる、ということです。
- listen to music (音楽を聴く)
- listen to the radio (ラジオを聴く)
- listen to me (私の話を聞く)
- listen to the teacher (先生の話を聞く)
これは非常によくある間違いで、”I listen music.” や “She never listens me.” のように “to” を忘れてしまいがちです。
なぜ “to” が必要なのでしょうか? “listen” は「耳を傾ける」という、意識をある方向へ向ける「行動」です。そのため、その意識が「どこに(誰に)向かっているのか」という方向性を示す “to” が必要になるのです。矢印(→)のようなイメージを持つと分かりやすいかもしれません。
一方で、”hear” は受動的に「聞こえる」だけなので、意識の方向性を示す必要がなく、後ろに “to” はつきません。
正解: I heard the news.
間違い: I heard to the news.
正解: Let’s listen to this song.
間違い: Let’s listen this song.
ただし、「聞いて!」「よく聞きなさい」のように、相手の注意を引くために命令形で使う場合は、”Listen!” や “Listen up!” のように “to” をつけずに単独で使うことができます。
日本人が特に注意したい「カタカナ英語」の罠
私たちは学校で “hear” と “listen” を習いましたが、それでも混乱してしまう大きな原因の一つに、日本語として定着してしまったカタカナ英語「ヒアリング」と「リスニング」の存在があります。この2つの言葉が、本来の英単語の意味とズレているため、私たちの頭をさらに悩ませるのです。
「ヒアリング」は英語の “hear” ではない
ビジネスシーンで「お客様からご要望をヒアリングする」「関係者へのヒアリングを行う」のように使われる「ヒアリング」。これは「相手から情報を聞き出す、調査する、意見を聴取する」という、非常に能動的な意味合いで使われていますよね。
しかし、英語の “hear” の本来の意味は、ここまで見てきたように「意図せず聞こえる」という受動的なものです。両者の意味は、ほぼ正反対です。
もし、「顧客からヒアリングする」のつもりで “I will hear the customer.” と言ってしまうと、「(ただ)お客さんの声が聞こえてくるだろう」という意味不明な文になってしまい、意図が全く伝わりません。
このような「聞き取り調査」をしたい場合は、”hear” ではなく、状況に応じて別の動詞を使うのが適切です。
We will interview our key clients to get feedback.
フィードバックを得るために、主要な顧客にインタビューします。
We should consult with the legal team about this issue.
この問題については、法務チームに相談すべきです。
「リスニング」は英語学習のイメージが強い
一方で「リスニング」は、「英語のリスニングテスト」や「リスニング力を鍛える」のように、主に英語学習の文脈で使われます。これは英語の “listen” が持つ「注意して聞く」という意味と近いですが、その用途が「勉強」という特定の領域に限定されがちです。
“listen” はもっと日常的で、幅広い場面で使われるごく普通の単語です。「音楽を聴く」のも「友達の相談に乗る」のも「ポッドキャストを聴く」のも、すべて “listen” を使うということを改めて意識しましょう。
まとめ:もう迷わないための最終チェック
最後に、”hear” と “listen” の違いをシンプルにまとめます。この表を頭に入れておけば、もう迷うことはありません。
Hear
- 意識:しない(無意識)
- 行為:受動的な出来事(自然に聞こえる)
- イメージ:音が耳に勝手に飛び込んでくる感覚
- キーワード:「聞こえる」
- 文法:後ろに to はつかない
Listen
- 意識:する(意図的)
- 行為:能動的な行動(注意して聞く)
- イメージ:特定の音源に耳と意識を傾ける
- キーワード:「聞く・聴く」
- 文法:聞く対象の前に to がつくことが多い (listen to…)
いかがでしたでしょうか。この2つの単語の根本的な違いは、あなたの「意識」と「意図」がどこにあるか、ただそれだけです。
ぜひ、今日からあなたの周りの「音」に少しだけ意識を向けてみてください。電車のアナウンス、カフェのBGM、同僚の話し声…。「あ、これは hear かな?」「こっちは listen だな」と、心の中で英語に置き換えるゲームをしてみるのがおすすめです。その小さな気づきの積み重ねが、あなたの英語力を確実に、そして大きく成長させてくれます。
焦らず、一歩一歩、楽しみながら学習を続けていきましょう。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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