「優しい」って、日常でよく使う言葉ですよね。でも、英語で言おうとすると、「kind…? nice…? あれ、どっちだっけ?」と迷ってしまった経験はありませんか?
実は、日本語の「優しい」が持つ豊かなニュアンスは、英語では様々な単語で表現されます。それらを使い分けることで、あなたの気持ちはもっと正確に、もっと深く相手に伝わるようになります。
この記事では、英語の「優しい」を表現する様々な単語のニュアンスと使い方を、豊富な例文と共に徹底解説します。
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それでは、奥深い「優しい」の英語表現の世界を一緒に見ていきましょう。
まずは基本の4つ!これだけは押さえたい「優しい」
英語の「優しい」を使い分ける第一歩として、まずは最も基本的で重要な4つの単語をマスターしましょう。これらをしっかり区別できるだけで、あなたの英語は格段に自然になります。
1. kind:親切な「行動」に対する優しさ
kind
は「優しい」を表す最も代表的な単語です。特に、誰かがしてくれた親切な「行動」に焦点を当てて使われます。困っている人を助けたり、何かを手伝ってくれたり、具体的な行いに対して感謝を伝える時にぴったりです。その人の心根からの善意が行動に表れた、というニュアンスが含まれます。
- It was very kind of you to help me with my heavy bags.重い荷物を持つのを手伝ってくれて、本当に優しさを感じました。
- Thank you for your kind words. I feel much better now.優しいお言葉をありがとうございます。おかげでずっと気分が良くなりました。
- He is a kind person who always thinks of others.彼はいつも他人のことを考えている優しい人です。(彼の行動が親切であることを示唆します)
- My grandmother was the kindest person I’ve ever known.私の祖母は、私が今まで知る中で最も優しい人でした。
kindness
(親切)という名詞の形でもよく使われます。
- Thank you for your kindness.ご親切に感謝します。
2. nice:人柄や雰囲気の「感じの良さ」
nice
も「優しい」と訳されますが、こちらは具体的な行動よりも、その人の持つ全体的な雰囲気や「人当たりの良さ」を指します。話していて心地良い、感じが良い、という印象を伝える時に便利な言葉です。kind
が内面からの「善意」を指すのに対し、nice
は外面的な「好印象」という側面が強いです。
- My new boss seems really nice. I’m looking forward to working with her.新しい上司はとても感じの良い人のようです。一緒に働くのが楽しみです。
- She was nice to me at the party.パーティーで彼女は私に優しくしてくれました。(親切に接してくれた、というニュアンス)
- He’s a nice guy, but I don’t think we have much in common.彼はいい人だけど、私たちに共通点はあまりないと思う。
nice
は非常に便利で幅広く使えるため、英語学習者は多用しがちです。しかし、「いい人」という漠然とした意味合いなので、使いすぎると表現が平坦になることも。人の性格だけでなく、「素敵な天気(a nice day)」や「素敵なドレス(a nice dress)」のように物にも使えることからも、その「全般的な良さ」というニュアンスが分かります。
kind vs. nice の違いは?
- kind: 具体的な「親切な行動」や「心からの善意」に焦点が当たります。
- nice: その人の「人柄」や「雰囲気」の良さ、全般的な好印象を表します。
ドアを開けてくれた親切な「行動」は kind
。その行動をしてくれた人の「人柄」が nice
、と考えると分かりやすいかもしれません。
3. gentle:物腰が柔らかく「穏やかな」優しさ
gentle
は、力や態度が「穏やかで柔らかい」様子を表す優しさです。「乱暴(rough)」の対極にある言葉で、物理的な接触や声のトーン、性格が荒々しくないことを示します。赤ちゃんや動物など、弱い存在にそっと触れる時や、物静かで落ち着いた人柄を表現する時に使います。
- Be gentle with the puppy, she’s still very small.子犬には優しくしてあげてね、まだとても小さいから。
- He has a gentle voice that makes me feel calm.彼の優しい声は私を落ち着かせてくれます。
- The doctor was very gentle when he examined my arm.お医者さんは私の腕を診察する時、とても優しく触れてくれました。
- A gentle breeze was blowing.優しいそよ風が吹いていた。(穏やかな風)
4. thoughtful:相手を深く思う「気配り」の優しさ
thoughtful
は「考え(thought)」で「満たされている(ful)」という成り立ちの通り、相手の状況や気持ちを深く考えて行動する「思慮深い」優しさを表します。相手が言わなくてもニーズを察して先回りしてくれるような、心のこもった気配りに対して使います。ただ親切なだけでなく、その裏にある「私のことを考えてくれたんだ」という気持ちが伝わる、深みのある褒め言葉です。
- It was so thoughtful of you to bring me a hot coffee on such a cold day.こんな寒い日に温かいコーヒーを持ってきてくれるなんて、なんて気の利く優しさなの。
- Thank you for the thoughtful gift. It’s exactly what I wanted.心のこもった贈り物をありがとう。まさに私が欲しかったものです。
- He is a thoughtful person who always remembers his friends’ birthdays.彼はいつも友達の誕生日を覚えている、思いやりのある人です。
例えば、雨が降ってきた時に傘を差し出すのは kind
な行動です。でも、あなたが傘を持っていなくて困るだろうと予測して、前もって傘を準備してきてくれたとしたら、それは thoughtful
な優しさと言えるでしょう。
表現力アップ!もっと伝わる「優しい」のバリエーション
基本の4つに加えて、もう少しニュアンスの違う「優しい」も覚えておくと、表現の幅がぐっと広がります。
sweet:愛情のこもった親しみやすい優しさ
sweet
は、親しい間柄で使われる、愛情や親しみがこもった優しさを表します。家族や恋人、親しい友人からの親切な言葉や行動に対して使うと、温かい気持ちが伝わります。kind
と似ていますが、よりインフォーマルで感情的な響きがあります。
- How sweet of you to remember our anniversary!私たちの記念日を覚えていてくれるなんて、なんて優しいの!
- My daughter gave me a handmade card. She is so sweet.娘が手作りのカードをくれました。本当に優しい子です。
- It was sweet of him to cook dinner for me.彼が私のために夕食を作ってくれたのは、とても嬉しかった(優しかった)。
caring:継続的に支える「面倒見の良い」優しさ
caring
は、動詞の care
(世話をする、気にかける)から来ており、継続的に相手の幸せや健康を気遣い、支えるような優しさを指します。一時的な親切ではなく、長期的な視点での愛情や責任感を伴うことが多いです。親が子を思う気持ちや、看護師が患者を思うような、保護的で面倒見の良い優しさです。
- She is a very caring mother who always puts her children first.彼女はいつも子供を第一に考える、とても思いやりのある母親です。
- My colleagues were very caring when I was sick.私が病気の時、同僚たちはとても優しく気遣ってくれました。
- He has a caring nature and is always helping people in need.彼は面倒見の良い性格で、いつも困っている人を助けています。
considerate:他者を尊重する「配慮ある」優しさ
considerate
は、自分の行動が他人に与える影響をよく「考慮(consider)」し、相手を不快にさせないように振る舞う優しさを表します。特に、周りの人々の気持ちや状況を尊重する、配慮のある行動に対して使われます。thoughtful
が相手を喜ばせるために何かを「プラスする」優しさなら、considerate
は相手に迷惑をかけないように「マイナスを避ける」優しさ、と対比すると分かりやすいです。
- He was considerate enough to turn down the music when he saw I was studying.私が勉強しているのを見て、彼は音楽の音量を下げてくれる配慮を見せてくれました。
- Please be considerate of our neighbors and keep the noise down.ご近所への配慮をお願いします。騒音は控えてください。
- It was very considerate of you not to call me late at night.夜遅くに電話をかけてこないなんて、とても配慮がありますね。
まとめ:自信を持って「優しい」を伝えよう
今回は、日本語の「優しい」にあたる様々な英語表現を見てきました。最後にポイントを振り返ってみましょう。
- kind: 親切な「行動」に。
- nice: 感じの良い「人柄」に。
- gentle: 穏やかで「物腰の柔らかい」様子に。
- thoughtful: 相手を思う「気配り」に。
- sweet: 親しい間柄での「愛情のこもった」優しさに。
- caring: 継続的に支える「面倒見の良い」優しさに。
- considerate: 周囲を尊重する「配慮」に。
たくさんの単語が出てきて難しく感じたかもしれませんが、焦る必要はありません。まずは、一番使いやすい nice
を使っていて、「どうしてこの人はniceなんだろう?」と一度立ち止まって考えてみるのがおすすめです。
「重い荷物を持ってくれたからだ」と思えば kind
を、「私のために温かいお茶を淹れてくれたからだ」と感じたら thoughtful
を使ってみる。「夜遅くに物音を立てないように気をつけてくれたからだ」と気づけば considerate
を選んでみる。
そうやって少しずつ、その場に合った言葉を選べるようになると、あなたの英語はもっと生き生きとして、気持ちが伝わるものになります。楽しみながら、ぜひ試してみてくださいね。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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