「駅の近くのカフェ」「会社の近くの郵便局」など、日常会話でよく使う「近く」という言葉。これを英語で言おうとした時、near? close to? それとも…?と迷ってしまった経験はありませんか。
実は、英語には「近い」を表す言葉がいくつかあり、それぞれ少しずつニュアンスや使い方が異なります。日本語の「近く」という便利な一言に慣れていると、この使い分けは少し難しく感じるかもしれません。
今回は、そんな英語学習者さんの悩みを解決するため、「近さ」を表す代表的な4つの言葉、near, close to, nearby, by の違いと使い分けを、豊富な例文と共に徹底的に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、それぞれの言葉が持つイメージがしっかり掴め、自信を持って使い分けられるようになっているはずです。
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それでは、さっそく各単語の詳しい世界を見ていきましょう。
1. near の世界 – 「遠くない」という客観的な距離感
nearは「近い」を表す最も一般的で、基本となる単語です。まずはこのnearの感覚を掴むことから始めましょう。
核となるイメージ
nearのイメージは「遠くない」という客観的な事実です。2つのものの距離が離れていないことをシンプルに示します。後で説明するby
のように「すぐ隣」である必要はなく、「歩いて数分の距離」くらいの範囲を指す、とても使いやすい言葉です。
使い方と例文
nearは主に「〜の近くに」という意味の前置詞として使われます。
- She lives near the school.
- 彼女は学校の近くに住んでいる。
- 解説:学校から遠くない場所に住んでいる、という事実を客観的に伝えています。
- I found a nice cafe near my office.
- 私は会社の近くに素敵なカフェを見つけました。
- 解説:職場から歩いて行けるような距離にあるカフェ、というイメージです。
日本人学習者が一番注意したいポイント
nearを使う上で最も大切なルールは、「nearの後にtoをつけない」ことです。
- 誤:My house is near to the station.
- 正:My house is near the station.
- 私の家は駅の近くです。
日本語の「〜に」という感覚からto
をつけたくなりますが、場所の近さを表す場合、nearは単独で使います。まずは「nearの後はすぐ場所!」と覚えておきましょう。
2. close to の世界 – 「心と体」の密接な距離感
close toも「近い」を表しますが、nearよりも「密接な」ニュアンスを持ちます。そして、この表現にしかない特別な使い方があるのが大きな特徴です。
核となるイメージ
物理的な距離を表す点ではnearと似ていますが、close toはより「すぐそば」「すぐ近く」という感覚が強まることがあります。しかし、close toが最も輝くのは、物理的な距離だけでなく「人間関係や感情的な近さ」を表す時です。
使い方と例文
close toは「形容詞 close + 前置詞 to」で一つのセットです。必ずto
が必要なことを忘れないでください。
物理的な近さ
- Our hotel is close to the beach.
- 私たちのホテルはビーチのすぐ近くです。
- 解説:near the beach とも言えますが、close to を使うと、よりビーチへの近さや密接さが強調されることがあります。
人間関係・感情の近さ(最重要ポイント!)
これがnearにはない、close toの独壇場です。「仲が良い」「親しい」と言いたい時は、迷わずclose toを使いましょう。
- I am very close to my sister.
- 私は姉(妹)ととても仲が良いです。
- 解説:物理的に近くに住んでいなくても、心の距離が近いことを表せます。この意味で
near
を使うことはできません。
- They have been close friends for over 20 years.
- 彼らは20年以上にわたる親友です。
- 解説:「親友」は
close friend
という決まった言い方があります。
時間や状態の近さ
「もうすぐ〜だ」「〜しそうだ」という状態を表す時にも使えます。
- It was close to midnight when I got home.
- 私が家に帰り着いたのは、真夜中近くだった。
- She was close to tears.
- 彼女は泣きそうだった。(涙がこぼれる寸前だった)
3. nearby の世界 – 「この辺り」という話し手中心の近さ
nearbyは、これまで見てきたnearやclose toとは少し視点が違う、とても便利な言葉です。
核となるイメージ
nearbyのイメージは「(今いる場所の)この辺りに」「すぐ近くに」です。nearが地図上のA地点とB地点の関係を示すような客観的な視点なのに対し、nearbyは「今いるここから見て近く」という話し手中心の主観的な視点になります。
使い方と例文
nearbyは「近くの〜」という形容詞、または「近くに」という副詞として使われます。
形容詞:「近くの〜」
名詞の前に置いて、その名詞を修飾します。
- Let’s have lunch at a nearby restaurant.
- 近くのレストランで昼食にしましょう。
- 解説:
a near restaurant
とは通常言いません。「近くのレストラン」と言いたい時はa nearby restaurant
が自然な表現です。
- He was taken to a nearby hospital.
- 彼は近くの病院へ運ばれた。
副詞:「近くに」
文の最後などに置いて、「この辺りに」という意味を表します。
- Is there a convenience store nearby?
- この辺にコンビニはありますか?
- 解説:旅行先などで道を尋ねる時の定番フレーズです。まさに「この辺り」というnearbyのイメージにぴったりです。
- My grandparents live nearby.
- 私の祖父母は近くに住んでいます。
nearbyで注意すべきこと
nearbyは前置詞ではありません。したがって、nearby the station
のような使い方は間違いです。
- 誤:I live nearby the station.
- 正:I live near the station.
- 正:The station is nearby. (駅はこの近くです。)
4. by の世界 – 「すぐそば」という隣接感
最後に紹介するbyは、これまで見てきたどの言葉よりも近い、「すぐそば」という密接した距離を表します。
核となるイメージ
byのイメージは「隣接して」「すぐ横に」という強い近さです。視覚的にすぐ隣にあるような状況で使われます。next to
(真横に)と非常に似ていますが、byの方が少しだけ柔軟な「そば」感を持っています。
使い方と例文
byは「〜のそばに」という意味の前置詞として使われます。
- I was standing by the window.
- 私は窓のそばに立っていました。
- 解説:窓に寄りかかっていたり、すぐ横にいたりする情景が目に浮かびます。
- Meet me by the main entrance.
- 正面玄関のそばで会いましょう。
- 解説:待ち合わせ場所を具体的に「すぐそば」と指定する時に便利です。
- They have a beautiful house by the river.
- 彼らは川のほとりに美しい家を持っている。
- 解説:
near the river
(川の近く)よりも、もっと川に面しているような、密着したイメージが伝わります。
総まとめ:4つの「近い」を使いこなそう
最後に、それぞれの単語のポイントを表で整理し、明日から使える実践的なヒントをご紹介します。
機能別・早わかり比較表
単語 | 主な意味・イメージ | 品詞 | 例文 | ポイント |
near | 「遠くない」客観的な近さ | 前置詞, 副詞 | My house is near the park. | toは付けないのが基本ルール! |
close to | 「密接な」近さ、心の近さ | 形容詞+前置詞 | I’m close to my family. | 人間関係の「親しい」はこれ!toを忘れずに。 |
nearby | 「この辺り」話し手中心の近さ | 形容詞, 副詞 | Is there a post office nearby? | 前置詞ではないのでnearby the park はNG。 |
by | 「すぐそば」隣接した近さ | 前置詞 | She is standing by the door. | nearよりも断然近い、すぐ隣のイメージ。 |
明日から使える実践のヒント

- 人の「仲の良さ」を話す時は、迷わず close to を選ぶ。
- 「〜の近く」と場所を説明する基本は near。ただし to は付けない。
- 外出先で「この辺に〜ありますか?」と尋ねる時は Is there a … nearby? が大活躍。
- 「すぐ隣」「すぐそば」という臨場感を出したい時は by を使う。
いかがでしたでしょうか。最初は少し複雑に感じるかもしれませんが、それぞれの単語が持つ核となるイメージを掴むと、使い分けがぐっと楽になります。
一番の近道は、実際に使ってみることです。ぜひ今日から、ご自身の家の周りや職場の周りにあるものを、今回学んだ単語を使って英語で説明してみてください。
- My house is near a big park.
- There is a good bakery nearby.
- The bus stop is by the post office.
このように、身の回りの世界を英語で描写していくことで、単語の持つ「距離感」が自然と身体に染み込んでいきますよ。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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