「ハックション!」
映画や海外ドラマで、登場人物がくしゃみをすると、周りの人がすかさず “Bless you!” と声をかけるシーン、おなじみですよね。でも、一体なぜ「祝福を」なんて、少し大げさにも聞こえる言葉をかけるのでしょうか?そして、そう言われたら、どんな顔をして、なんと返事をするのが正解なのでしょう?
このブログ記事では、そんな「今さら聞けない」素朴な疑問を、初心者の方にも分かりやすく、そして深く掘り下げて解説していきます。
動画で学びたい方は以下のYouTube動画をご覧ください。”Bless you” の基本的な意味や使い方を短時間で理解できます。
このブログでは、動画で触れられなかった歴史的背景や、世界各国の面白い「くしゃみ文化」、さらには実用的な英会話フレーズまで、内容をぐっと広げてご紹介します。
動画でサクッと基本を知りたい方へ:
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もっと深く、楽しく学びたい方へ:
このブログでは、動画で触れられなかった歴史的背景や、世界各国の面白い「くしゃみ文化」、さらには実用的な英会話フレーズまで、内容をぐっと広げてご紹介します。
この記事を読み終わる頃には、”Bless you” という一言に隠された豊かな物語を知り、英語の奥深さや文化の面白さに、きっと心を掴まれているはずです。
なぜくしゃみに “Bless you”?その意外な起源をたどる旅
この何気ない習慣には、実は何世紀にもわたる、少し不思議でスピリチュアルな歴史が隠されています。タイムマシンに乗って、その起源を探ってみましょう。
古代の信念 vs. 魂と悪霊
科学が発達していなかった遠い昔、くしゃみはただの生理現象ではなく、神秘的な意味を持つ出来事だと考えられていました。古代の多くの文化では、くしゃみをするとこんなことが起こると信じられていたのです。
- 魂が体から抜け出てしまう説:くしゃみの激しい勢いで、体から魂が一瞬だけ抜け出してしまうと考えられていました。
- 悪霊が体に入り込む説:魂が抜けた隙間や、口が開いた瞬間に、悪霊や悪いものが体に入り込む隙ができてしまうと恐れられていました。
「息」と「魂」や「生命」が強く結びつけて考えられていた時代、くしゃみは魂が失われかねない危険な瞬間だったのです。そのため、周りの人々は “God bless you”(神のご加護がありますように)と祈ることで、その人の魂を守り、悪霊を追い払おうとしました。これは、現代で言うお守りのような、切実な願いが込められた言葉でした。
ペストの大流行が広めた決死の祈り
“Bless you” の習慣がヨーロッパで広く定着した最も有名なきっかけは、6世紀のローマを襲ったペスト(黒死病)の大流行です。
当時、くしゃみはペストの恐ろしい初期症状の一つと見なされていました。そこで、時のローマ教皇グレゴリウス1世は、くしゃみをした人に向かって “God bless you” と祈ることを、信者たちに強く推奨したと言われています。
これは、死の病からその人を守ってほしいという、非常に切実な祈りでした。この教皇の呼びかけにより、この習慣はキリスト教社会全体に広まっていったのです。
現代の “Bless you” は「お大事に」?その意味合いの変化
魂や悪霊、ペストの流行といった深刻な背景から生まれた “Bless you” ですが、現代ではその意味合いが大きく変化しています。
宗教的な祈りから社会的なマナーへ
今では、”God bless you” とフルで言うことは少なくなり、”Bless you” と短縮されるのが一般的です。その言葉から宗教的な意味合いはほとんどなくなり、一種の社会的なマナー、あるいは礼儀作法として完全に定着しています。
多くの人にとっては、深刻な祈りというよりは、以下のような軽い気持ちで使われることがほとんどです。
- 「大丈夫?」という相手への気遣い
- 「お大事にね」という優しい声かけ
- 会話がくしゃみで中断したことに対する「気にしないで」という合図
もはや多くのネイティブスピーカーにとって、深く考えずにほとんど反射的に口から出る「決まり文句」になっていると言えるでしょう。
“Bless you” と言われたら?これで安心、スマートな返事の仕方
では、実際に誰かから “Bless you” と言われたら、どのように返すのが自然なのでしょうか。ポイントは、相手の気遣いに対して、シンプルに感謝を伝えることです。
定番はやっぱり “Thank you”
最も一般的で、どんな場面でも使える間違いのない返事は “Thank you” です。これが言えれば、まず問題ありません。
- A: “Achoo!”(ハックション!)
- B: “Bless you.”(お大事に)
- A: “Thank you.”(ありがとう)
これで、相手の気遣いに対して感謝を示し、丁寧なコミュニケーションが完結します。親しい友人や家族との間であれば、”Thanks.” と少しカジュアルに返しても全く問題ありません。
くしゃみをしてしまったことへの一言 “Excuse me”
“Thank you” の代わりに、あるいは “Thank you” と一緒に “Excuse me” と言うこともできます。これは、くしゃみという生理現象で周りを驚かせてしまったり、会話を遮ってしまったりしたことに対する「失礼しました」というニュアンスです。
特に、会議中や静かな場所で大きなくしゃみをしてしまった時に便利です。
- A: “Achoo! Oh, excuse me.”(ハックション!ああ、失礼しました)
- B: “Bless you.”(お大事に)
- A: “Thanks.”(どうも)
“Bless you” 以外の選択肢はある?
実は、”Bless you” 以外にも使われる表現があります。特に有名なのが、次に紹介するドイツ語由来の言葉です。
“Gesundheit!” – 健康を願うドイツ語の言葉
“Gesundheit”(ゲズントハイト)は、もともと「健康」を意味するドイツ語です。英語圏、特にアメリカで広く使われています。
- A: “Achoo!”(ハックション!)
- B: “Gesundheit!”(お大事に!)
- A: “Thank you.”(ありがとう)
この言葉は、”Bless you” が持つ宗教的な響きを避けたい人や、単に違う表現を使ってみたいという人に好んで使われます。意味合いとしては「健康でありますように」という願いが込められており、”Bless you” と同じように「お大事に」というニュアンスで安心して使うことができます。
世界のくしゃみエチケット、お国柄が出て面白い!
英語圏では当たり前の “Bless you” ですが、世界に目を向けると、くしゃみへの反応は驚くほど多様です。その国の文化や価値観が垣間見えて、とても興味深いですよ。
日本の「沈黙」 vs. 英語圏の「声かけ」
まずは私たちの国、日本です。誰かがくしゃみをしても、特に何も言わないのが普通ですよね。立て続けに何度もくしゃみをしたり、明らかに体調が悪そうだったりしない限り、一つ一つのくしゃみに反応することは少ないでしょう。
これは、くしゃみをしたらほぼ必ず誰かが “Bless you” と言う英語圏の文化とは非常に対照的です。もし英語圏の人が日本に来て、くしゃみをしても誰にも何も言われなかったら、「冷たい人たちだな」と感じてしまうかもしれませんね。
世界の「お大事に」を覗いてみよう
- フランス: “À tes souhaits!” (ア・テ・スエ!)「あなたの願いが叶いますように」という意味。くしゃみを幸運のしるしと捉える古代の考え方が残っているようで、とてもロマンチックですね。
- スペイン: “Salud!” (サルー!)「健康」という意味。シンプルに相手の健康を気遣う言葉です。年配の方などは “Jesús!” (ヘスス!) と言うこともあり、これはキリスト教の影響で「イエス様があなたを守りますように」という意味合いです。
- ロシア: “Будь здоров!” (ブーチ ズダローフ!)男性に対して使われる「健康であれ!」という意味の力強い言葉です。(女性へは “Будь здорова!” – ブーチ ズダローヴァ!)
- イタリア: “Salute!” (サルーテ!)スペイン語の “Salud” と同じく、「健康」を意味します。陽気な響きがイタリアらしいですね。
- 中国:一般的に何も言いませんが、「くしゃみをすると、誰かが自分の噂をしている」という面白い言い伝えがあります。
- イスラム文化:非常に丁寧で宗教的なやり取りがあります。くしゃみをした人がまず「アルハムドゥリッラー(神に感謝します)」と言い、それを聞いた人が「ヤルハムクムッラー(神の慈悲がありますように)」と返します。
くしゃみにまつわる豆知識と面白いウワサ
最後に、くしゃみに関する面白いトリビアをいくつかご紹介します。話のタネにしてみてくださいね。
- くしゃみで心臓は止まらない!「くしゃみをすると一瞬心臓が止まる」という説を耳にしたことがあるかもしれませんが、これは科学的には正しくありません。くしゃみの前に息を吸い込むことで胸の内圧が変わり、血流が一時的に変化するため、心臓のリズムが少し乱れることはありますが、止まることはないのでご安心を。
- 太陽の光でくしゃみが出る?明るい光、特に太陽の光を見るとくしゃみが出てしまう「光くしゃみ反射」という現象があります。これは遺伝的なもので、珍しいことではありません。もしあなたがそうなら、それは立派な体質の一つです。
- くしゃみの速度は?くしゃみの飛沫は、時速160km以上にもなると言われています。新幹線並みのスピードですね!だからこそ、腕やハンカチで口を覆うエチケットが大切なのです。
まとめ:言葉の裏にある物語を楽しもう
いかがでしたか?
“Bless you” というたった一言に、古代の迷信からパンデミックの歴史、そして現代の社会的なマナーまで、何層もの意味が積み重なっていることがお分かりいただけたかと思います。
- 起源: 魂が抜けるのを防いだり、病から守ったりするための切実な祈りだった。
- 現代: 宗教色は薄れ、「大丈夫?」「お大事に」という気遣いのマナーになっている。
- 返事: “Thank you” と感謝を伝えるのが基本。
- 代替表現: ドイツ語由来の “Gesundheit!” もよく使われる。
- 文化差: くしゃみへの反応は世界中で様々。文化の違いを知ると面白い。
普段何気なく耳にする言葉の背景を知ると、言語学習はもっと奥深く、楽しいものになります。これからも、言葉の裏にある豊かな物語を楽しみながら、あなたのペースで英語の世界を探求していきましょう。

英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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