英語の文型は日本人にとって非常に分かりにくい概念です。
今回は何故、英語では文型が重要なのかを説明するとともに、分かりにくい文型を分かりやすく説明いたします。
英語の文型とは何か
文型とは英語にすれば、sentence pattern(文のパターン)です。文型と言うよりも「文のパターン」の方が、分かりやすいんじゃないでしょうか。
では何故、英語では文のパターン、すなわち「文型」が重要なのか説明します。
英語と日本語の違い
皆さんは英語と日本語が、非常に異なる言語だとご存知でしょうか? その証拠に、アメリカの国務省の機関、Foreign Service Institute はアメリカ人の官僚や軍人に世界中の言語を教えている機関ですが、日本語がアメリカ人にとって世界で最も難しい言語と認定しました。
説明すると長くなるので、興味のある方は以下を御覧ください。
日本語と英語の違いはいろいろと挙げられるのですが、その中の大きな一つが文の作り方です。 日本語では「誰は」というのを、助詞が決めます。
例えば、「 人々は魚を食べます。」という文は、「魚を食べます、人々は。」と言っても文の意味は変わりません。
つまり、「人々」に「は」という助詞が付いている限り、文中のどの場所にあっても、主語(誰)だという目印になるのです。
ところが、英語は違います。
「People eat fish.(人々は魚を食べます。)」 の語順を変えると、「Fish eat people.(魚は人々を食べます。)」と、意味が全く変わってしまうのです。
これは何故かと言うと、英語には「最初に出てきた名前を表す単語が主語である」というルールがあるからです 。ちなみに名前は文法用語で「名詞」と呼びますので、「最初に出てきた名詞が主語である」というルールです。
つまり英語は、単語の語順で文の意味が決まるのです。 そしてその語順はいくつかのパターンがあり、その語順のパターンを文の型「文型」と言っているのです。
だから英語では文型が重要なのです。
英語の5つの文型(5文型)について
英語の文型(文のパターン)には大きく5つあり、 「基本5文型」と言われています。
まずその5つに共通してるのが、主語の次に必ず動詞が来るということです。 これは一般に SV と表します。S が主語、V が動詞です。英語では文型を考えるとき、S や V を使って表します。
第1文型(SV)
英語では、主語(S)と動詞(V)だけからなる文を第1文型と呼んでいます。
「S は V する」と解釈します。
例えば、
I run.(I は run する。⇒「私は走る。」)
修飾語(M)
実は英語には修飾語というものがあります。修飾語は M で表します。
通常、英文には修飾語が多く含まれており、文が長くなります。同時に、修飾語があると文の構造が分かりにくくなります。 修飾語は、いつ、どこで、どのように、どれくらい、などを表します。
例えば、以下の文です。
I run on Sunday.(私は日曜日に走ります。)
この on Sunday は、「誰が何する」を表すことに直接関係なく、ただの「補足説明」をしてるだけです。こういった補足説明は文の構造を表す文型を考える時には取り除いて考えます。
だから上の文は SV+M となるのですが、M は取り除いて考えるので、結局 SV となり、第1文型と考えます。
第2文型(SVC)
第2文型では「補語」という言葉が出てきます。 補語というのは「主語を補う語」という意味で、C で表します。補語は主語とイコール関係になる語のことで、式で書くと、S = C となります。名詞か形容詞が来ます。
例えば、以下の文です。
I am young.(I = young ⇒「私は若い。」)
be動詞がややこしいのですが、ここでは「イコール(左と右が等しい)」の意味だと解釈して下さい。この第2文型ですが、この文型を作れる動詞は決まっていて、代表が be動詞です。
be動詞の意味や使い方はここでは説明しませんが、興味がある方は以下をご参照下さい。
さっき説明した修飾語ですが、もちろん第2文型でも出てきます。
例えば、
I was young before.(私は以前、若かった。)
before(以前)というのが、「いつ」を表していますが、「いつ、どこで」は補足説明の修飾語なので、before を取り除いた、I was young で文型を考えます。
すると過去形になっているだけで、先程の I = young と同じ文型ですので、この文は第2文型と判断できるのです。
第3文型(SVO)
第3文型では、動詞の後に名詞(名前)を置きます。「目的語」と言い、略語で O です。これは日本語では「~を」に相当します。
SVO と書きますが、「S が V を O する」と解釈します。
例えば、
I like dogs.(I は dogs を like する ⇒ 私は犬が好きです。)
さっき出てきた文も第3文型です。
People eat fish.(人々は魚を食べます。)
Fish eat people.(魚は人々を食べます。)
Fish eat people.は意味がおかしくなるから、これは「人々は魚を食べます。」と解釈すべきという方がたまにいますが、絶対に無理です。英語は単語の語順、文型で文の意味が決まるので、語順のとおりに意味を解釈しなければならないのです。
英語の文型がわかると何が良いのか?
第1文型から第3文型までを簡単に説明しましたが、ここで少し休憩して、英語の文型を理解することのメリットを考えてみましょう。
次の文を見て下さい。2つの文の意味は分かりますか?
① I run in the shop.
② I run the shop.
違いは in があるかないかだけです。
in は名詞の「前に置く詞(ことば)」で、「前置詞(ぜんちし)」と呼びます。「~の中で」という意味です。「どこで」と言うのは「修飾語」と先ほど学びましたよね。だから in the shop で「その店の中で」と言う意味の修飾語になります。
だから①は、第1文型のSVで「私はその店の中で走ります。」という意味になります。
一方、②には in がありません。「きっと in を置き忘れただけで、①と同じ意味だろう」って思っていませんか? はい、違います。
これは名詞+動詞+名詞の語順だから、第3文型の SVO ですよね。
よって、I run the shop. で、「I は the shop を run する。」という意味になります。日本語で「私はその店を走らせる」、すなわち「私はその店を経営する」という意味になるのです。
前置詞があるかないかで意味が変わるって面白くありませんか? 逆に言えば、前置詞は要注意ってことですよね。
他にもあります。
I walk the dog.
I は the dog を walk する。
⇒「私はその犬を散歩させる。」(実は walk には「散歩させる」という意味がある)
I water the flower.
I は the flower を water する。
⇒ 「私はその花を水撒きする。」(実は water には「水をまく」という意味がある)
つまり、単語の並び方が分かれば文型(英語の文のパターン)が分かり、そうすれば「単語の意味をどうつなげれば良いか」が分かるのです。
ちなみに、英語のこのパターン、「名詞+動詞+名詞」(誰が何をどうする)の第3文型が、全ての英語の中で一番多い文型です。
第4文型(SVOO)
ここから文型は少し難しくなります。中学英語で出てくる難関の1つです。大学まで英語を学んでも第4文型を理解していない人は多いですね。
第4文型は、SVO1O2と書くのですが、目的語が2つになり非常に分かりにくいのです。
「S は O1 に O2 を V する」という意味になります。
例えば、
I buy the boy milk.
I は the boy に milk を buy する。⇒「私はその少年に牛乳を買う。」
いかがですか?文も意味はきちんと理解できましたか?
おそらく「私はその少年を買う、牛乳と???」というように混乱した方が多かったのではないかと思います。第4文型は第3文型と混乱しやすいのです。
だから第4文型は「誰に何を構文」と覚えて下さい。
動詞の後に名詞が2個並んだら、「誰に何を」なので、上の例文は「the boy に milk を」とすぐ解釈出来ます。
他にも例を出しましょう。
I give my son money.
私は my son に money をあげる。⇒「私は息子にお金をあげる。」
第4文型、いかがですか? なんとなく理解できましたか?
この第4文型は本当に分かりにくいのです。普通に英語の文型を勉強すると、直接目的語とか間接目的語とか出て混乱します。だから第4文型は「誰が何を構文」という形で覚えたほうが分かりやすいのです。
第4文型の特殊性
そもそもこの第4文型、英語の文型の中でも特殊なのです。
例えば、「私はその少年に牛乳を買う。」を英語で言うなら、
I buy milk for the boy.
と、言えてしまうのです。そしてこの方が、日本人にとっては非常に分かりやすいのです。何故なら先程学んだように、英語で一番多いのは第3文型だからです。
ただ問題があって、先程の「私は息子にお金をあげる。」は、
I give money to my son.
と、英作文する際に使う前置詞が to なのです。このように、to なのか for なのかで非常に迷うのです。
一応言っておくと、buy(買う)のように、一人で出来る動詞は for、give のように、誰かがいないと出来ない動詞は to というルールです。
でもネイティブを目の前に英語を話しているときに、to か for を瞬時に判断するのは難しいのです。だから慣れるまで少し大変ですが、第4文型を使うほうが、英語を話していて迷いが無く、楽です。
実際、私の生徒も、第4文型の授業では、第4文型を最初は非常に嫌がりますが、授業が終わることには第4文型をマスターしていて、次の授業からは第4文型ばかり使います。to か for か迷う必要がないから楽なのです。第4文型は初心者にこそマスターして欲しい文型です。
そしてもう一つ。ネイティブは第4文型が好きでよく使うのです。第3文型を使っても表現できるとき、可能なら第4文型を選びます。その方が語数が減って楽だからです。
苦手であれば使わなくても何とかなりますが、ネイティブは容赦なく使ってくるので、苦労します。そう考えると、今のうちに第4文型に慣れておいたほうが、スピーキングもリスニングも楽になります。
さて、この第4文型ですが、実は、現代英文法の体系から考えると、非常に不自然で、第3文型を使うほうが本当は自然なのです。フランス語も英語のように文型で考えられるのですが、フランス語には第4文型がありません。
第4文型は英語独特の文型で、昔の言い方が現在にも残ってしまったのです。だから第4文型が分かりにくいと思ったら、昔の英語の名残りで「特殊な文型」だと考えて下さい。
第5文型
いよいよ、最後の文型まで来ました。
この第5文型、中学英語と高校英語で全然違うのです。
初心者はまず中学英語レベルをマスターできれば良いので簡単です。
では、中学レベルの第5文型から行きましょう。
第5文型 中学英語編
第5文型は、SVOC となります。
これは、「O=C であると、S は V する」と理解します。
例えば、
I call my dog Pochi.
S V O C
I は my dog = Pochi と call する。⇒ 「私は自分の犬をポチと呼ぶ。」
他には以下があります。
I named my cat Tama.
I は my cat = Tama と name した。⇒「私は自分の猫をタマと名付けた。」
中学英語では、call と name さえ覚えておけば大丈夫です。
分かりにくいのは、第2文型の時とは違い、C(補語)が主語ではなく、目的語とイコール関係になることです。
それに動詞の後に名詞が2個続くので、第4文型のSVOOと混同します。どう見分けるかと言うと、実は第4文型を取れる動詞と、第5文型を取れる動詞は決まっているので、すぐに慣れて間違えないのです。
第5文型 高校英語編
これは難しいので、分からなければ現段階でパスしても大丈夫です。高校英語は第5文型の種類が爆発的に増えます。
あまりにも多いので、一部だけ取り出して説明します。
これはSVOCなのですが、「S は O を C するように V する」と理解します。先程、「O=C であると、S は V する」と説明したので、違いますよね。
例えば、
I made my son walk.
I は my son を walk するように make した。
⇒「私は自分の息子を歩くように強制した(状況を作った)。」
この make は「使役動詞」という難しい名前が付いています。今は覚えなくても結構です。使役動詞以外にも、この文型を作れる動詞はいくつかあり、それぞれがまた別の文型に見えるので、第5文型A、第5文型B、第5文型C、・・・とでも言えるような状況になっています。
なので、これらを全て第5文型と言うのは問題があるのではないかという声も大きいのです。
文型(5文型)の問題点
英語は日本語とは全く異なり、語順が重要な言語で、文型で考えると意味が非常に分かりやすくなります。
だから昔は5文型が大人気で、大学入試でも「第何文型か答えよ」という問題がたくさん出ました。ところが、最近人気は下火です。
理由は、5文型の問題点が色々と出てきたからです。
最大の問題は、英語の文が5つの文型に収まりきらない、ということです。5つの文型に分けたは良いが、矛盾がたくさんありました。
例えば、
I am in Japan.(私は日本にいます。)
in Japan は「前置詞+名詞」なので修飾語です。だから in Japan を取り除いた、I am. がこの英文の骨格であり、主語+動詞で SV だから第1文型というのが5文型の考え方です。
でも、I am. は間違った英文なのです。これは強引に訳すと「私は存在する」という意味になりますが、「Be動詞の後ろにある場所を示す修飾語は省けない」という英語のルールが実はあるからなのです。
だからこの文は、第1文型の例外的な文型、と一般的には解釈します。ただ、この種類の文は普通に頻出するのです。更に言うと、第3文型にもこの「例外的な文型」があります。
I put the book on the desk.(私はその本をその机の上に置いた。)
on the desk は on が前に付いた名詞だから、修飾語で「机の上に」という意味です。しかし、この修飾語を取り除いて、I put the book とは言えないのです。何故なら英語には、put(置く) は「どこに」の部分が必ず必要というルールがあるからです。
また先程、第5文型には「O=C であると、S は V する」という意味と、「S は O を C するように V する」の2つがあると言いましたが、2つあって良いのでしょうか?
更に、第5文型A、第5文型B、第5文型C、・・・というようなバリエーションがあると言いましたが、それらを全て第5文型という名前で1つと考えて良いのでしょうか?
切りが無いのでこの辺で止めておきますが、英語の全ての文を5つの文型に分けて考えるというのは、かなり無理があるのです。
5文型以外の文型
5文型には色々と問題があることが分かるにつれて、「5文型修正運動」とでもいうものが起きました。
どのようなものかと言うと、5つでは足りないから文型の数を増やそうというものです。7文型とか8文型とか13文型とか25文型とかあります(笑)
ちょっとだけ紹介しますね。
8文型
安藤貞雄先生が「英語教師の文法研究(1983)」の中で提案され、その後内容を再編集して「現代英文法講義(2005)」にも掲載されています。
買うなら内容がほぼ同じなので後者がお勧めですが、上級者向けなので、少なくともロイヤル英文法を読みこなすレベルに達してからでないと、全く刃が立ちませんのでご注意下さい。
1)SV
2)SVA
3)SVC
4)SVCA
5)SVO
6)SVOA
7)SVOO
8)SVOC
SVOC 以外に A が増えてますね。このAは「付加語」と言います。付加語とは、本来修飾語は無くても良いものですが、絶対に必要となる修飾語のことです。
先程の I am in Japan. が SVA、I put the book on the desk.が SVOA となります。5文型で例外扱いしたものを、ひとつの文型として独立させたものです。
ちなみに7文型は、8文型の④ SVCA がない組み合わせです。
13文型
有名な「総合英語 Forest」の裏表紙に載っていた文型です。現在は出版社を変え、「総合英語 Evergreen」という名前で出ています。総合英語 Forest は多くの高校で購入が必須となっていたからお持ちの方も多いのではないでしょうか。であれば、裏表紙をめくってみて下さい。(著作権の関係で画像を貼るのは断念します。)
見ると、「There is 構文」や受動態も1つの文型として扱われ、先程種類が多いと述べた第5文型も6種類追加されてますね。5文型にこれらを足して、全部で13文型です。
25文型
ホーンビーの「英語の型と正用法」に載っています。絶版ですが、私は持っています。(^^)
厳密には文型ではなく動詞型と言います。動詞の機能に着目したもので、更に細かく分類を重ねて全部で53種類あります。だから53文型ですね(笑)
文型の数を増やすべきか?
いや、切りが無いから止めるべきでしょう(笑)
本来、文型と言うのは、日本語と言語構造が異なる英語をより理解しようと使い始めた「概念」です。文型という概念の完成度を上げることに夢中になり、結果的に難易度が上がって生徒が英語学習に挫折するなら本末転倒です。5文型ですら、躓く生徒が多数いるのです。
故に、問題があるとは言え、うまく当てはまらないものは例外扱いにして、5文型という考え方を継続する方が、生徒の負担も少なく、学習効果も高いと思います。
英語の5文型の歴史
英語を勉強すると、必ず5文型って出てきます。これって当たり前だと思っていませんか? また、人によっては「海外では5文型なんて教えてないから、日本も教える必要は無い」て思ってる方もいることでしょう。
基本的に、日本でしか5文型は教えてないし、海外では5文型を知らない人ばかりです。そして日本でも、昔から教えていたわけでもありません。簡単に文型の歴史を振り返ります。
まず、イギリスの学者、アニオンズ(Onions)が「高等英文法―統語論」という英語の本を1904年に書きました。ここに文型の基になるなる考え方が記述されています。先程紹介した安藤貞雄先生が翻訳版を出しています。絶版ですが、私は持っています。(^^)
アニオンズの本を読んで刺激を受けた細江逸記先生が、内容を発展させて自書で5文型を紹介します。絶版ですが、私は持っています。(^^) ・・・そろそろくどいですね(笑)
この本を読んだ日本全国の英語の先生から称賛されて、5文型が日本で定着しました。先程述べたように、英語の構造は日本語とはかなり異なり、習得が大変だったからです。このようにして、文型は現在の日本の英語教育の中に入ってきたのです。
だから5文型というのは、言語構造の違いに困惑する日本人に英語の構造を手っ取り早く教えるために英語教育に導入されたのです。もし日本の英語教育から5文型を省くと、おそらくもっと英語の習得が困難になると思います。
ちなみ、一般に5文型のアイデアはアニオンズ(Onions)から始まったことになっていますが、その辺を詳しく調べた方がいらっしゃいます。
それによると、昔、イギリスで各言語の文法がバラバラで学生が習得に苦労していたので、各言語の文法を統一して学生の負担を減らそうとした動きがあり、その一環として出されたのが、アニオンズの本だったそうです。参考にリンクを張っておきます。
5文型の源流を辿る : C. T. Onions, An Advanced English Syntax(1904)を越えて(著者:宮脇正孝 )
英語の文型:結論
英語の文型(5文型)は確かに理解するのに苦労しますが、言語構造の全く異なる英語を日本人が理解するには、結局は便利な考え方です。なので、文型は習得したほうが英語の学習は楽になります。
英会話カーディム講師。元外資系エンジニアでMBA保持者。海外留学なしに国内で独学にて英語を習得。ラテン語や印欧語、英語史の知識を持ち、英文法を含めた英語体系に詳しい。英語オタクで出版された英和辞典や英文法書は絶版も含めて殆ど持っている。
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